近年、「営業活動を取り巻く環境」が大きく変わり、「営業DX(デジタルトランスフォーメーション)」の必要性が問われています。営業DX成功の鍵を握るのが「SFA(営業支援システム)」の活用です。SFAを駆使することで、営業プロセスにおける「有益なデータ活用」「ノウハウの蓄積」が可能になります。
一方で、各企業でSFA導入が進む中、「SFAを上手く運用できていない」「導入したいけど、どのように活用すれば良いか分からない」と悩みを抱える企業様も多いのではないでしょうか。本記事ではSFA導入にお悩みの方へ向けて、SFAの概要、CRM・MAとの違い、SFAの機能、SFA導入成功の秘訣を紹介します。SFAで営業DXを実現したい企業の担当者様はぜひご覧になってください。
目次
SFA(営業支援システム)とは
ここでは、SFA(営業支援システム)の概要と、なぜSFAを導入すべきなのかについて解説します。
SFAの意味と役割
SFAは”Sales Force Automation”の頭文字から成る略語で、日本語では「営業支援システム」と呼ばれます。営業プロセスを可視化し、「営業メンバーの行動」「商談の進捗状況」など情報として蓄積・管理することで、効率的に売上へ結び付けるためのツールです。
SFAは1990年代に米国で提唱され、日本では2000年代以降に通信インフラ整備と共に普及しました。SFAの市場は年々拡大傾向で、「営業DXを実現するツール」として注目を集めています。
なぜSFAが必要なのか
営業の業務は「顧客リスト作成」「テレアポ」「見込み顧客へ情報発信」「企画書・提案書・見積書の作成」「訪問商談」「既存顧客のフォロー」「クレーム対応」など、非常に多岐にわたります。また繰り返し業務や定型業務が数多くあり、「業務効率化の効果が大きい」ことが特徴です。
営業の業務を効率化できれば、営業担当者の工数確保につながります。確保した工数を「有望な見込み顧客へアプローチ」「既存顧客との関係強化」など、コア業務に集中することで売上向上が見込めます。
近年はコロナ禍の影響もあり、「対面での商談」が制限されるケースが増えました。そのため営業活動のオンライン化が進んでおり、「SFA活用ニーズ」がより高まっているのです。
SFAの4つの機能
営業活動を支援する「SFA」には、以下の4つの機能が備わっています。
1.顧客管理
顧客の「社名」「所在地」「連絡先」「担当者情報」や「問い合わせ・取引履歴」など、「顧客情報を一元管理」する機能。顧客情報を共有することで、営業担当者の重複セールス防止や、担当者変更時の引き継ぎ漏れを防ぎます。
2.案件管理・行動(プロセス)管理
各案件の進捗状況を可視化し、詳細情報を管理する「案件管理」機能、営業担当者の業務プロセスを可視化する「行動管理」機能。案件の詳細管理により、組織として「営業ノウハウを蓄積」できます。商談内容を分析することで「営業活動のボトルネック」を発見し、最適な営業アプローチ方法の検討に役立ちます。
また「テレアポ数」「訪問数」「商談回数」「成約率」など、担当者の行動と結果を数値化できるため、「人事評価の基準」にも利用可能です。
3.売上予測・予実管理
「営業担当者別」「部署別」「顧客別」「商品・サービス別」など、さまざまな基準から売上予測や実績を可視化する機能。売上予測と実績比較も容易なため、「目標達成度」の進捗管理を効率化できます。
4.集計・分析レポート
「商材別」「エリア別」など、さまざまな切り口の「集計・分析レポート出力」機能。営業会議での活用や、ビジネス戦略の検討などに役立ちます。近年は「AIによるデータ分析」機能を備えるSFAもあります。
SFAとCRM・MAの違い
SFAと同義に語られるツールとして、「CRM(Customer Relationship Management)」や「MA (Marketing Automation)」があります。ここではSFAとCRM、MAとの違いを解説します。
SFAとCRMの違い:CRMは顧客と良好な関係を保つツール
CRMは、日本では「顧客関係管理」「顧客関係性マネジメント」と呼ばれます。商談内容や問い合わせ履歴・購入履歴など、「顧客とのコミュニケーションをデータ化」し管理するツールです。CRMに蓄積したデータを分析することで、顧客の潜在ニーズを汲み取り「提案の最適化」が可能になります。CRMを利用することで顧客満足度の向上や信頼獲得につなげることができ、顧客との良好な関係構築に役立ちます。
なお、SFAとCRMは重複する機能も多く、近年は統合した製品も多数登場しているためツールの境界線は曖昧になりつつあります。
SFAとMAの違い:MAは効率的なマーケティングを実践するツール
MAは「マーケティングの自動化=マーケティング・オートメーション」を意味します。マーケティングプロセスを自動化・効率化し、「売上拡大」「収益性向上」につなげるツールです。MAはSFAと連携することで効果を最大にすることができます。
マーケティングの主目的は、「ターゲット層の選定」と「顧客になりそうな見込み客の育成(リードナーチャリング)・獲得」です。マーケティングは「顧客の検討期間が長いBtoB商材」で欠かせない取り組みで、本活動の助けとなるのがMAツールになります。
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SFAを導入する5つのメリット
SFAの導入により、企業は効率的な営業活動と顧客管理を実現できます。営業プロセスの自動化やリアルタイムなデータ分析により、売上拡大、営業生産性の向上、顧客満足度の向上などのメリットが得られます。ここではSFA導入で得られるメリットについて詳しく解説します。
【メリット1】受注に至るまでのプロセスが可視化でき案件状況が把握しやすい
SFAの導入により、営業プロセスが可視化され、受注までの案件状況が把握しやすくなります。営業担当者はリアルタイムな情報を得ることで、見込み顧客や商談の進捗状況を正確に把握できます。これにより、営業戦略の立案や優先順位の設定が容易になり、売上見込みや受注率の向上につながります。
【メリット2】営業活動情報が全員で共有でき顧客へのフォローも万全にできる
SFAでは営業活動情報が全員で共有されます。営業チーム内や他部署との情報共有がスムーズに行われ、顧客へのフォローアップが効率的に行えます。営業担当者が外出している間も情報が共有されるため、顧客とのコミュニケーションが途切れず、サービスの継続的な提供が可能となります。
【メリット3】営業の属人化が解消される
SFAの導入により、営業の属人化が解消されます。営業担当者個人の能力に依存しない業務遂行が可能となるということです。
従来は営業担当者によって顧客へのアプローチが異なっていたものが、共通のプロセスや手法が定義され、営業活動が組織的に進められます。そのため、人事異動や新人の育成などにおいてもスムーズな業務引継ぎができ、無駄のないチームの連携が実現します。
【メリット4】営業手法を共有でき社員教育を効率化、コスト削減できる
SFAでは営業手法や成功事例が共有されます。営業担当者同士が情報やノウハウを共有し合うことで、効果的な営業手法の普及や改善が促進されます。また、社員教育においてもSFAを活用することで、教育コンテンツの効率的な提供やトレーニングのカスタマイズと最適化が可能となり、社員教育の効果を高めることができます。
【メリット5】情報が一元管理でき入力や閲覧の手間が軽減される
SFAにより情報が一元管理されるため、営業担当者は重要な情報を簡単に入力し、参照することができます。従来はあちらこちらの部署に散在していた顧客情報がSFAを使うことで一か所に集約でき、専用ツールを利用するため入力や閲覧の手間も軽減され、営業活動に割ける時間や労力が増えます。また、情報の正確性や一貫性も向上し、顧客に対する的確な対応が可能となります。
SFA導入を失敗させないためのポイント
SFA導入を失敗させないためのポイントは以下の3つです。詳しく解説します。
・自社の課題を明らかにし、SFAを導入する目的を決める
・入力しやすいものを選ぶ|データの入力項目を増やしすぎない
・社内で「アドミニストレーター(管理者)」や「インフルエンサー」を育成する
自社の課題を明らかにし、SFAを導入する目的を決める
SFAを導入するときは、「何のためにSFAを使うのか」「それによって、どのような利益があるか」を明確にしましょう。その際、現場のメンバーにも目的や想定されることを共有して、SFAの導入に賛成してもらうことが大切です。
現場のメンバーに共有するときは、次のようなSFAを使うことで得られるメリットを説明すると理解が得られやすくなるでしょう。
・顧客情報を一元管理できる
・効率的で生産性の高い営業活動ができる
・ツールをカスタマイズできる
入力しやすいものを選ぶ|データの入力項目を増やしすぎない
SFAを導入したことによって、作業量が増えてしまうことがあります。これは、SFAで自由に入力項目を設定できることが原因です。より詳細な情報を取れるように、必要以上に細かい分類を行い、入力項目を増やしてしまうことで起こります。データの入力項目を増やしすぎると、現場で入力が行われずデータが蓄積されないという課題に直面することになります。
最初は最低限の入力で済むように設計し、データ分析にどうしても必要な項目が出てきたら、現場に納得してもらってから追加するようにしましょう。
社内で「アドミニストレーター(管理者)」や「インフルエンサー」を育成する
SFA運用定着のため、社内の相談窓口を務める「アドミニストレーター」と、活用促進の役割を担う「インフルエンサー」を育成します。アドミニストレーターやインフルエンサーにSFAの良さを実感してもらい、彼らの影響力を用いて波及効果を広げ、「社内にファンを増やすこと」が成功の近道です。
SFAに詳しいアドミニストレーターを育成することで、導入後の「トラブル相談窓口」や、操作方法が分からない時の「問い合わせ先」になり得ます。
SFAとCRMのどちらが向いている?ケースと選び方
SFAとCRMのどちらを導入すべきか迷った時、それぞれの特徴と自社のケースを考慮する必要があります。業種や目的によって選ぶべきツールは異なります。ここでは両者の特徴と適用範囲を比較します。
SFAを導入すべきケース
SFA(Sales Force Automation)は、営業活動の効率化や顧客情報の管理に特化しており、主に営業チームの業務改善に向いています。よって、営業プロセスや商談の進捗管理、受注業務の効率化などを重視する場合に適しています。また、企業が「直接、ユーザーに商品を販売する」場合、SFAは顧客ニーズや購買履歴を把握するのに役立ちます。
CRMを導入すべきケース
CRM(Customer Relationship Management)はその名前のとおり、顧客管理や顧客対応の最適化に重点を置いており、幅広い業種や企業に適しています。顧客との関係構築や顧客満足度の向上に重要な役割を果たすため、特にサービス業や小売業などの顧客との接点が多い業態では、CRMの導入により顧客のニーズ把握や顧客対応の一元化が可能となるでしょう。
SFAかCRMかを選ぶ際には、主に導入の「目的」を考慮しましょう。営業プロセスの改善や受注業務の効率化が優先ならばSFAを選びます。一方、顧客関係の最適化や顧客満足度の向上が重要ならばCRMを選びます。
なお、両者は連携して活用することも可能であり、実際にパッケージ販売されているケースもあります。企業のニーズや業種に応じて最適な組み合わせを検討することが重要です。
SFA導入の準備と導入の手順
SFAの導入には事前の準備が必要です。どのような準備項目があるのか、また手順について解説します。
SFA導入に必須の項目
- 予算:イニシャルコスト/ランニングコスト
- 部署間連携:営業部門とIT部門の連携
- 研修など
このうち、特に予算については、それなりに大きな金額になるので、検討と承認が必須になります。
SFA導入の手順
SFAを導入する具体的な手順について解説します。
【手順1】情報収集・ツールの選択
SFAを導入するにあたり、まずは情報収集が重要です。SFAツールの種類や提供会社、機能や価格などについて十分な調査を行い、自社のニーズに合ったツールを選びましょう。SFAツールのデモや資料、実際のユーザーレビューなどを活用して、ツールの使い勝手や適用範囲を評価しましょう。
【手順2】トライアルの実施
SFAツールをいくつか絞り込んだら、トライアルを実施することが重要です。実際にツールを使って営業活動を行い、機能や操作性、データ管理のしやすさなどを試してみましょう。トライアル期間中には、ユーザーフィードバックや改善点の洗い出しも行い、導入前の課題や改善点を明確にします。
【手順3】導入
トライアル期間で十分な評価ができたら、実際の導入に移ります。まずはSFAツールのカスタマイズや設定を行い、自社の業務フローに合わせた形で導入します。必要なデータの移行や設定の確認を丁寧に行い、トレーニングや教育を通じて社内のスタッフに対して適切な操作方法や利用方法を伝えます。
導入後は、実際に使っている社員からのフィードバックを積極的に収集し、改善点や課題を洗い出していきます。また、定期的な従業員へのトレーニングや運用の見直しを行い、SFAツールを最大限に活用するための継続的な取り組みを行いましょう。
なお、どうしても選ぶ際の判断に迷ってしまったり、導入後の運用が不安な場合は、導入支援サービスを行っているベンダーへ相談することも検討してみてください。
SFA導入を成功させるには?SFAを活用するための4つのポイント
SFAは「営業実務のインフラ」として運用定着することで、初めて効果を発揮します。SFA導入を成功させるには、以下3つのポイントを抑えましょう。
SFA活用の意味・目的を浸透させる仕組みをつくる
経営層から現場の営業メンバー全員に至るまで、「SFAとは何か」「SFAで業務がどのように変わるのか」「どのような利益をもたらすのか」の意味を、十分に浸透させることが必要です。
日々顧客の対応に追われる営業メンバーにとって、大きな変化や負担を伴う「ツール導入」は、面倒ごとと捉えられがち。SFA活用で営業プロセスを効率化し「売上の拡大・収益性向上を目指す」意義を、関係者全員で共有することが重要です。また以下の点も導入時に周知させておきましょう。
・入力を必ずするよう徹底する
情報共有することで営業担当者個人の成績アップではなく、チーム単位、ひいては企業単位で売上をアップさせ、成長することが目的だと話し合いましょう。
・SFAを使うことで評価される仕組みをつくる
「単純に入力作業だけが増えた」「前のほうが自分で好きなようにできてよかった」と捉えられないよう、SFAを利用している営業担当者に評価が与えられる仕組みを作りましょう。使うことで評価され給与にも反映される(逆に使えなければ評価がダウンする)となれば、誰しも覚えようとするでしょう。
一度使えるようになり、作業手順を覚えてしまえば、前よりも情報が取り出しやすく管理しやすいことに気づけるはずです。
KPI設定と測定を行う
「営業活動の見える化」の指標となる「KPI設定」を行います。KPIとは「目標達成度合い」を評価する指標で、営業の場合「訪問件数」「成約率」「営業案件数」「顧客単価」などが指標です。
KPI設定により、営業担当者の実施すべき行動が明確になります。設定したKPIを達成するには「進捗確認を正確に行うこと」が重要で、目標に対する達成率・達成見込みの進捗を、SFAを使い確認します。
スモールスタートで始める
営業プロセスを改革するSFAは、「個人依存からの脱却」「生産性・効率性の向上」「マネジメントの効率化」などのメリットをもたらします。一方で、企業に大きな変革をもたらす分、全社で一気に活用するのは難易度が高いです。中には急なIT化やチームによる課題達成化、慣れない入力作業に馴染めず、これまでの自分のやり方で続けたいと頑なになる営業担当者もいます。
そこで、小単位のチームでスモールスタートし「効果測定しながら徐々に導入範囲を広げる」ことで、社内への普及がスムーズに進みます。
SFA導入ならSalesforceがおすすめ
SFAを導入しようと考えているなら、Salesforceがおすすめです。「Sales Cloud」、「Service Cloud」、「Marketing Cloud」、「Salesforce Platform」など様々なサービスがありますが、どのサービスも、それぞれ顧客管理や営業支援をスムーズにするために活用できます。代表的なサービスの一部について概要を次の表にまとめました。
サービス名 | 一言概要 | 概要 |
---|---|---|
Sales Cloud | 営業活動に重きを置いたCRM・SFA | 顧客管理、案件管理、見込み客管理、売上予測、レポートとダッシュボードなど、新規顧客を発掘し、見込み客を育成し、案件の早期受注を図るためのさまざまな機能が用意されているCRM・SFAです。 |
Service Cloud | カスタマーサポートに重きを置いたCRM | クラウドベースのカスタマーサポート&顧客管理CRMシステムです。顧客の活動を一元的に把握し、フィールドサービス、チャット、CTI、LINE、SNSなどのツールと連携し活用することで、チャネルを超えたカスタマーサービスの効率化を実現します。 |
Marketing Cloud Account Engagement (旧 Pardot) | マーケティングとセールスを1つのプラットフォームに統合し、BtoBマーケティングに適したMAツール | マーケティングで重要なリードの獲得・育成・選定までの工程を効率化させ、成約までの確度を高めて営業部門に提供できるMAツールです。 |
Salesforce Platform | CRMのリーチおよび機能を拡張するアプリ開発プラットフォーム | Salesforce Platformでは、クラウドプラットフォーム上でアプリケーションの構築、実行、管理、最適化をおこなうことができます。 |
営業管理を目的とするなら、Salesforceの製品群の一つであるSales Cloudの導入がおすすめです。月額費用を次の表にまとめたので参考にしてください。会社の規模やビジネスモデルに応じてカスタマイズをしたいとお考えなら、Enterpriseプランがおすすめです。
プラン | 月額費用 | ターゲット |
---|---|---|
Essentials | 3,000円 | 10ユーザまでの中堅・中小企業向けお試しプラン |
Professional | 9,000円 | あらゆる規模のチームに対応できる標準のプラン |
Enterprise | 18,000円 | 自社の用途によって自由にカスタマイズできるプラン |
Unlimited | 36,000円 | 全プランの機能を備えサポート無制限で受けられるプラン |
まとめ:SFA活用による「営業DX」の実現
この記事では、SFAについて解説しました。SFAを上手く活用できれば、自社の「営業DX」を推進し、新たな価値をもたらします。最大限の効果を発揮するには、最適な運用環境を整え、計画的に展開することが重要です。
本文中でも紹介したように、専門知識が必要となるシーンも多く、SFA活用はハードルが高い面が少なからずあります。そのため、導入支援やカスタマイズなど経験豊富なベンダーのサポートが欠かせません。導入を検討する際は、自社のIT人材の体制やベンダーのサポート体制にも注意しましょう。
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