製造業の改善ネタ・事例20選!便利なフレームワークとは?
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数ある業界の中でも、製造業は日々の改善が特に重要視されます。製造現場では、深刻化する人手不足への対応や、競合に負けない生産スピードと品質の確保のための業務効率化が常に求められています。

その中でも特に重要なのが「小さな改善」です。

一見すると地味で目立たない取り組みに思えるかもしれませんが、「探す時間が5分短縮された」「1つの工程を1人で完結できるようになった」といったミクロな工夫の積み重ねが、作業時間の大幅な短縮や不良率の改善の結果につながります。5Sや3Mに代表される「カイゼン」のカルチャーは、日本のものづくりにおける代表的な文化と言えます。

本記事では、そうした“小さな改善”を実現するための改善ネタ・アイデア集と、実際に現場で行われた改善事例を豊富にご紹介します。

目次

  1. 工場改善のネタ・アイデア24選
  2. 実際に効果が出た改善事例11選
  3. 改善提案を成功に導くための3つの工夫
  4. 製造業改善に役立つフレームワーク・用語
  5. 改善のネタは“気づき”の中にある
  6. DXにより安全性・効率化・生産性を大幅に向上できる

工場改善のネタ・アイデア24選

現場の小さな違和感や日々の不便の中には、改善のヒントが数多く隠れています。ここでは、製造業の現場でよく使われている“小さな改善ネタ”を、5つのカテゴリで計24個ご紹介します。どれも実践しやすく、提案書やチーム内のブレストにも活用できるものばかりです。

動線・作業導線を見直すアイデア

通路に色分けラインを引いて動線を整理する

歩行者と台車の動線を明確に分けることで、移動時の接触や混雑を回避できます。簡単なテープ貼りだけでも視認性が向上し、安全性と効率が両立できます。

資材棚の位置を見直して移動距離を短縮する

頻繁に使う備品を作業台の近くに移動させるだけで、1日に数十回ある往復が削減されます。無駄な移動を省くだけでも作業効率に大きく影響します。

台車の定位置を見直して作業の回り道を解消する

通路の邪魔になっている台車や道具を整理・再配置することで、スムーズな移動が可能になります。視界も開けて職場の印象も改善します。

回収ボックスを作業エリアに近づけて歩数を減らす

不良品や廃材の回収ボックスを近くに置くだけで、余分な移動が不要になります。わずかな距離でも1日の蓄積で大きな時間短縮につながります。

在庫・物品管理を効率化する工夫

工具に「定位置表示テープ」を貼って探す手間を省く

使用後の戻し場所を明確にすることで、探す手間と戻し忘れを防止します。新人でも迷わずに整理整頓が実現できます。

部品箱や棚にラベルを貼って視認性を高める

文字だけでなく、アイコンや写真を使ったラベル表示にすることで、誰でも一目で内容が分かるようになります。間違い防止にも効果的です。

2ビン方式で在庫切れを未然に防ぐ

補充用の部品を別に確保しておくことで、在庫切れによる生産停止を防げます。シンプルかつ効果的な在庫管理の基本手法です。

頻度別に物品の配置場所を見直す(ゴールデンゾーン化)

よく使うものを腰〜胸の高さに配置し、使用頻度の低いものは上段や下段に。身体の負担軽減と作業スピード向上に寄与します。

スプレー缶の保管棚に傾斜をつける

保管棚に傾斜をつけ、前面から取り出し、後面から補充することで常に古いものから使用できるようになり、在庫量も確認しやすくなります。

設備・工具まわりの使いやすさを高める工夫

工具に色分けラベルを貼って用途を区別する

種類の多い工具を色でグループ分けすることで、取り違えや探す手間を減らせます。色は直感的に伝わるので教育コストも削減できます。

作業用の手元灯を設置して視認性をアップ

暗がりでの作業ミスや見落としを防ぐために、LED照明の設置が効果的です。小さな投資で大きな作業効率改善が期待できます。

点検箇所に番号ラベルを貼って抜け漏れを防止する

定期点検の際に番号順に確認できるようにすると、誰でも正しく作業ができるようになります。教育の均質化にもつながります。

小型ファンを導入して作業環境を快適に保つ

夏場の作業負担を軽減し、熱中症や集中力低下を防ぎます。暑さ対策は品質維持の観点でも重要です。

人間工学に基づいた作業台・椅子の導入

作業台の高さを作業者の身長や作業内容に合わせて昇降できるタイプに変更したことで、腰の負担軽減に繋がり、作業効率も向上することができます。

5S活動から生まれた改善ネタ

棚のビフォー・アフター写真を掲示して整頓状態を見える化する

整理整頓の成功事例を写真で共有することで、チーム内の意識が向上します。視覚的に変化がわかるため、5S活動が浸透しやすくなります。

清掃用具の保管場所を固定し、定位置管理を徹底する

ほうきやモップがバラバラに置かれている状況を解消することで、見た目の美しさと作業効率が同時に向上します。

曜日別の清掃当番表を常設して“やり忘れ”を防止

誰がいつどこを清掃するかを明記することで、責任の所在が明確になり、清掃レベルの安定につながります。

不要物を一時保管する「捨てる前エリア」を設置する

すぐに捨てる決断ができない物を一時的に保管するスペースを設けることで、誤廃棄のリスクを減らし、整理の継続性も保てます。

安全性・ヒューマンエラー・ポカヨケ防止のための工夫

作業手順をチェックリスト化して現場に貼り出す

作業の抜け漏れや思い込みによるミスを防止するために、手順の「見える化」が有効です。教育コストの削減にも効果的です。

指差呼称の実施タイミングを現場に掲示する

作業中の確認行動をルール化・視覚化することで、習慣化と再現性の高い安全行動が可能になります。

危険区域にチェーンや床マークで境界を設ける

作業エリアと危険エリアを物理的・視覚的に区分することで、不注意による接近や接触事故を防げます。

部品ごとの専用投入口の設置

組立工程において、形状が類似しており間違いやすい部品それぞれに専用の投入口を設けた治具を使用。異なる部品を投入しても入らない構造のため、組みつけの誤りを防止できます。

床の滑りやすい場所に注意表示を加える

油や水分による転倒事故を未然に防ぐには、滑りやすい箇所を“気づける状態”にすることが重要です。簡易な貼り紙や注意表示でも効果はあります。

階段に金網を設置することで転倒を防止

切削水で濡れて滑りやすい階段などに滑り止めとして金網を設置。靴底についた切削水が網目に落ちて滑りにくくすることができます。

このような“小さな改善”の積み重ねこそが、生産性の底上げや安全性の向上につながります。ここで紹介したアイデアのうち、1つでも「自社でも使えそう」と思えるものがあれば、ぜひ次の改善提案に活かしてみてください。

関連記事:ポカヨケとは?メリットや具体的な手法、導入する際の課題と対策を解説

実際に効果が出た改善事例11選

製造業の現場では、日々の業務改善が生産性や品質向上に直結します。以下に、実際に効果を上げた改善の事例を11件ご紹介します。

イマオコーポレーション|部品の集荷・返却ミスを防止する工夫

部品の集荷・返却時に誤った箱に返却してしまう問題が発生していました。そこで、部品の集荷・返却場所を明確にすることで、ミスを防止。作業効率が向上しました。

参考:イマオコーポレーション 改善活動記

枚岡合金工具株式会社|5S活動で不良品率を30%削減

工具の紛失や作業スペースの乱雑さによる効率低下が課題でした。5S活動を導入し、工具の定位置管理や作業スペースの整理整頓を徹底。結果、不良品率を30%削減することに成功しました。

参考:5S活動と3S活動の手引き

ロイヤル株式会社|動画マニュアル導入で教育の効率化を実現

繁忙期に1日50名以上の新人を受け入れるため、教育負担が大きいという課題がありました。動画マニュアルを導入することで、新人全員に一貫した内容の提供が可能となり、教育時間短縮と教育担当者の負担軽減を実現しました。

参考:1日最大50名勤務するアルバイトの入場教育を動画マニュアルに置き換え、教育工数をほぼ0に削減!

株式会社フジワラテクノアート|発注業務の電子化で月400時間の工数を削減

従来の発注作業では、設計部門が図面を作成し、発注書を印刷してFAXで送る手順を取っていました。ITシステムの導入により、これらの作業をパソコン上で完結できるようにし、月400時間もの工数削減に成功しました。

参考:システム導入の目的を明確にし、部門横断で業務を改革

理化工業株式会社|RPAによる業務の自動化・無人化を達成

現場での情報記録を紙で行い、パソコンに入力し直す二度手間が課題でした。iPadを活用した電子入力システムとRPAツールを導入し、夜間に自動稼働させることで、事務作業に必要な人手を削減しました。

参考:作業情報のデジタル化を推進し、柔軟で迅速な熱処理・塗装加工を実現【理化工業株式会社】(大阪府八尾市)

株式会社長沼あいす|成型・包装工程の自動化で生産性217%向上

成型機の追加導入と袋詰・包装工程の自動化を進めることで、生産性の大幅な向上に成功しました。通常の時期で144%、繁忙期には217%の生産性向上を達成しました。

参考:食品製造業の生産性向上事例集

トヨタ自動車株式会社|異常対応と生産進捗を「見える化」

アンドンによる「見える化」を実現し、生産ライン上の異常や呼び出しをリアルタイムで表示。異常が発生した際には関係者に即座に通知し、迅速な処置を求める仕組みを構築しました。

参考:トヨタ生産方式の2つの柱

オムロン草津工場|5S活動と動線見直しによる工程短縮

5S活動の徹底と作業動線の見直しを行い、工程の短縮と作業効率の向上を実現しました。これにより、生産性が向上し、品質の安定にも寄与しました。

参考:オムロン 企業サイト

有限会社千葉恵製菓|IT導入補助金で新たな販路を獲得

2020年度のIT導入補助金を活用し、自社の専用ECサイトを構築した有限会社千葉恵製菓。岩手県で和菓子と洋菓子を製造する同社では、スーパーやコンビニ、お土産店での販売が売り上げの大部分を占めていました。しかし、コロナ禍により観光需要が冷え込む中で窮地に追い込まれます。

そこで、ターゲットに応じた複数のECサイトを構築し、東北以外の地方への販売に挑戦しました。結果、中部地方や四国地方などこれまでは手の届かなかった場所からも注文が入るようになったそうです。運営に関わる社員のモチベーション向上につながるなど、副次的な効果も生まれています。

参考:日持ちのする和洋菓子を開発し、ECサイト販売で売り上げ拡大 東北六県での店舗販売から全国注文対応へ【有限会社千葉恵製菓】(岩手県西磐井郡平泉町)

株式会社ダイセル|地理的制限を超えた近未来の製造現場

株式会社ダイセルは1919年創業。100年以上の歴史を誇る製造業者です。メディカル・ヘルスケア製品の提供から自動車用のエンジニアリングプラスチックの製造まで、幅広く手がけています。

同社の特徴は、遠隔地にある二つの工場(兵庫県の網干工場と広島県の大竹工場)を隣接施設のように一体化して稼働させている点です。ガス・石炭を主な燃料とする網干工場と石炭・タイヤチップを用いる大竹工場では、同一製品の製造に関しても必要とされるエネルギーコストが異なります。そこで、オンラインで両工場の生産計画や運転状況を一括監視し、その時々に応じて最適な稼働指示を出すことで生産コストを最小限に抑制。全体のエネルギー効率向上という大きな改善に成功しています。

参考:ダイセルレポート2024

株式会社土屋合成|24時間365日停まらない工場

24時間365日稼働し続ける工場を実現したのが、株式会社土屋合成です。文具や雑貨から家電の製造までを手がける同社では、自社開発のITシステムの活用により、昨今の人手不足の流れの中でも安定した製造を続けています。

同工場では、倉庫への材料の入出庫は場所・残量ともに自動管理され、製品の取り出しや加工といった繰り返し作業はロボットが担います。生産状況はすべてオンラインで把握でき、工場外からリアルタイムで確認することも可能です。このような取り組みは、長時間労働や休日・深夜労働をなくすなど、社員の働き方の改善にも役立っています。

参考:24時間・365日ノンストップの生産現場を実現し、新たな取り組みや業務改善に人員を投入――土屋合成のデジタル技術活用による作業自動化

改善提案を成功に導くための3つの工夫

アイデアや事例を集めることも大切ですが、それ以上に重要なのが「どのように提案を通し、現場で定着させるか」という運用の部分です。せっかくの改善提案も、実行されずに終わってしまえば意味がありません。

ここでは、現場で実際に改善提案が採用・実行され、成果につながるための3つの重要なポイントをご紹介します。

完璧を目指さずまずは試すことが成功の近道

改善提案をする際、「もっと良い案があるかもしれない」「根本から変えなければ」と考えすぎて、提案自体をためらってしまうケースがあります。しかし、現場で本当に求められているのは「今できることを、小さく試す行動力」です。

例えば「備品の位置を5m移動してみた」「マークを貼っただけ」でも、実際にやってみれば予想以上の効果が得られることもあります。完璧な提案よりも、“まず動く姿勢”が改善文化の第一歩です。

小さな改善こそ“数”が価値になる

1つ1つの提案は些細に見えても、それが5件、10件と積み重なることで、生産性の向上や品質の安定、安全性の強化など、現場に大きなインパクトを与えることがあります。

改善活動に力を入れている企業では、1人あたり年数十件〜数百件の提案が出ることも珍しくありません。小さなことでも、積極的に「見える化」して共有・称賛していくことで、チーム全体の改善意識も自然と高まっていきます。

改善は“チームの文化”として根づかせる

改善活動を継続的に進めるには、個人任せではなく、チーム全体で改善に取り組む文化を醸成することが重要です。

たとえば、朝礼で「改善提案ひとこと発表」を取り入れたり、月次で改善提案表彰を行ったり、職場内で“気づき”を拾い上げる仕組みを作ることが有効です。また従業員に改善案を提示する方法も自主的であることが重要です。自ら問題に気づき、改善を実行し、成果が出るサイクルを構築することが望ましいです。

例えば、改善案ボックスの設置やオンラインでの提案システムなどは従業員への強制ではなく自主性に期待できます。また文化をして根付かせるためには、上長が迅速にフィードバックし、実行された改善に対しては、成果の“見える化”と感謝をセットで伝えることで、次の改善提案につながります。

補助金や助成金も有効に活用する

ITツールの導入を検討するのであれば、補助金や助成金の活用も視野に入れましょう。国は民間企業のDXを推進しており、必要なシステムや設備の導入に際して、金銭的な支援を積極的に行っています。

ここでは、特に製造業の業務改善で活用しやすい補助金・助成金の一例をご紹介します。これらの支援策を上手に活用することで、金銭的な負担を抑えながらスムーズに業務改善を進めることが可能です。

IT導入補助金(サービス等生産性向上IT導入支援事業)

IT導入補助金は、中小企業や小規模事業者などが、自社の課題やニーズに合ったITツールを導入する際に活用できる補助金です。ソフトウェアの購入費やクラウドサービスの利用料、セキュリティサービスの導入費用などが幅広く支援の対象となります。

補助率は、申請する類型によって異なりますが、基本的には1/2以内から3/4以内が一般的です。うまく活用すれば、ITツールの導入コストを大幅に削減できるため、導入をご検討の際はぜひチェックしてください。

参考:IT導入補助金制度概要

ものづくり補助金(ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金)

ものづくり補助金は、中小企業・小規模事業者が、革新的な製品開発やサービス創造、または生産プロセスの改善に必要な設備投資などを行う際に利用できる補助金です。試作品の開発費用や、生産性向上を目的とした新しい設備の導入などが支援対象となることが多いです。

補助率は、申請枠や事業類型によって異なりますが、一般的には2/3といった高めの補助率が設定されていることが多いです。数千万円規模の支援を受けられるケースもあり、大規模な設備投資を検討されている製造業者の皆様にとっては、非常に魅力的な選択肢となるでしょう。

参考:ものづくり補助金とは

事業再構築補助金

事業再構築補助金は、ポストコロナ・ウィズコロナ時代の経済社会の変化に対応するため、中小企業などが思い切った事業再構築を行うことを支援する補助金です。製造業であれば、新しい製品分野への進出や、デジタル技術を活用した事業モデルへの転換などが対象になり得ます。

この補助金は、比較的大規模な投資を伴う事業再構築を支援するものなので、補助上限額も大きいのが特徴です。ただし、事業計画の策定や審査のハードルは高めですので、事前にしっかりと準備する必要があります。

参考:中小企業庁担当者に聞く「事業再構築補助金のポイント」

※補助金・助成金の最新情報について
これらの補助金や助成金は、国の政策や予算によって内容や募集期間が毎年変動することがございます。申請をご検討の際は、必ず最新の公募要領をご確認ください。経済産業省や中小企業庁のウェブサイトで、最新の情報が公開されております。

製造業改善に役立つフレームワーク・用語

改善提案を考える際には、日々の業務からヒントを見つけるだけでなく、フレームワークを活用して視点を整理することも重要です。

ここでは、製造業でよく使われる代表的な考え方や用語を4つご紹介します。改善提案の切り口を増やすためにも、ぜひ活用してみてください。

5S活動|改善の第一歩は“整理整頓”から

5Sとは?

5S活動とは、「整理(Seiri)」「整頓(Seiton)」「清掃(Seisou)」「清潔(Seiketsu)」「しつけ(Shitsuke)」の5つを実行することで、職場環境を整え、生産性や安全性を高める取り組みです。

  • 整理:不要な機械や資材を排除し、必要なものだけを残すこと
  • 整頓:工具や書類の置き場を決め、誰でもすぐ取り出せる状態にすること
  • 清掃:汚れやゴミを除去しながら、設備の異常も点検すること
  • 清潔:整理・整頓・清掃の状態を維持すること
  • しつけ:これらをルール化し、職場全体に定着させること

改善にどう活きる?

5S活動は「どこにムダがあるか」「どこが使いづらいか」といった改善の“気づき”を得るための土台となります。特に初めて改善活動に取り組む現場では、最初の一歩として5Sを徹底するだけでも、多くの改善点が見つかることがあります。

関連記事:5Sとは?業務効率化への一歩を踏み出すアイデアを解説

QCD|優先順位を整理する“改善判断の軸”

QCDとは?

QCDは、製品やサービスの提供における「品質(Quality)」「コスト(Cost)」「納期(Delivery)」の3つの要素を示すフレームワークです。

最近では安全(Safety)や環境(Environment)を加えて「QCDS」や「QCDE」と表記する場合もあります。

改善にどう活きる?

改善提案を考える際には、どの要素に最も課題があるかをQCDで整理すると、アイデアの焦点が絞られやすくなります。

例えば「納期が遅れがち」なら作業効率化を、「コストが高い」なら無駄な材料や工数を見直すなど、論理的に改善の優先順位をつけることが可能です。

関連記事:製造業におけるQCDとは? 優先順位や改善方法などについても解説

ヒヤリハットとハインリッヒの法則|安全改善の出発点

ヒヤリハットとは?

「ヒヤリ」「ハッ」としたが、事故には至らなかった出来事のことを指します。たとえば「工具に足を引っかけそうになった」など、未然に防げたが潜在的に危険な場面を指す現場用語です。

ハインリッヒの法則とは?

1件の重大事故の背景には29件の軽微な事故と、300件のヒヤリハットがあるという経験則で、「1:29:300の法則」とも呼ばれています。

改善にどう活きる?

ヒヤリハットの段階で現場から声を拾い、改善に活かすことで、重大事故を未然に防ぐことが可能です。安全性を高める改善提案の種は、ヒヤリハットの記録の中にこそ眠っています。

4M(6M)|原因分析と改善案出しの切り口

4Mとは?

製造現場の改善や品質管理で使われる「人(Man)」「機械(Machine)」「材料(Material)」「方法(Method)」の4要素です。

さらに「計測(Measurement)」「管理(Management)」を加えて6Mとする場合もあります。

  • 人(Man) 作業者の技量やモチベーション、配置の適正
  • 機械(Machine) 使用する機器や工具の状態、適合性
  • 材料(Material) 原材料の品質、仕入れ先の安定性
  • 方法(Method) 作業手順や作業方法の標準化の度合い
  • 計測(Measurement) 測定器や検査精度の適切さ
  • 管理(Management) 生産計画や在庫、納期、工程管理の仕組み

改善にどう活きる?

「なぜ不良が起きたのか」「なぜこの工程にムダがあるのか」といった分析を4M(6M)の視点で行うことで、見落としがちな原因にもアプローチできます。

チェックリスト形式で1つずつ確認していくことで、改善ポイントを構造的に洗い出せます。

現場の改善は「直感」や「勘」に頼るだけでなく、こうしたフレームワークを活用することで、より論理的かつ実行可能な提案につながります。改善アイデアに詰まったときは、これらの視点からネタのヒントを探してみてください。

関連記事:4Mとは?4M分析と製造業の品質管理に関わる各要素を解説

改善のネタは“気づき”の中にある

製造業の現場において、小さな改善の積み重ねは、生産性の向上・品質の安定・安全性の強化といった多くの成果につながります。今回ご紹介したような「すぐに使えるネタ」「他社の実例」からもわかるように、改善とは特別なことではなく、日々の仕事の中に眠っている“気づき”を拾い上げることから始まります。

「探す時間が多いな」「ここに置けば便利そうだ」「あの工程、もっと楽にならないか」そのような現場での素朴な違和感こそが、立派な改善の種です。そして、その種を見逃さず、形にしていく文化こそが、企業の持続的な成長を支える土壌になります。

改善提案に完璧な正解はありません。まずは1つの気づきから、1つの提案をしてみることが、現場を変える第一歩です。

DXにより安全性・効率化・生産性を大幅に向上できる

製造業で人手不足と生産性向上の解決策としてDXが叫ばれて久しいですが、昨今では具体的な解決策とその効果も如実にあらわれています。

AI画像検査の精度は飛躍的に高くなっていますし、IoTによる余地保全やARグラスによる人材教育など課題に応じてさまざまな技術が現場に導入されています。

DX時代においても、従業員による小さな改善の積み重ねは必要です。デジタルツールの導入の目的は多岐にわたりますが、改善カルチャーとデジタルを融合させることが日本の強みを活かしたトランスフォーメーションとなるでしょう。

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