ポストコンサル転職の事情は?メリットや注意点を含めてわかりやすく解説
(画像= tadamichi/stock.adobe.com)

ポストコンサルという言葉をきいたことがあるでしょうか。ポストコンサルとは、コンサルティングファームでのキャリアを経験した人材を指します。近年は転職が一般的となりつつありますが、コンサル業界では転職を始めとしたキャリアの転向は一般的であり、それには転職をはじめ起業や独立なども含まれます。

本記事では、ポストコンサルのキャリアに興味がある方、コンサル業界からの転職事情を知りたい方に向けて、ポストコンサル転職のメリット、注意点などについて解説します。今後のキャリアを考える上で、役立つ内容となっていますので、ぜひ最後までお読みください。

目次

  1. ポストコンサル転職とは 
  2. ポストコンサル転職の選択肢となるキャリア 
  3. ポストコンサルに期待される能力 
  4. ポストコンサル転職の3つのメリット
  5. ポストコンサル転職で注意すべき3つのポイント
  6. ポストコンサルのキャリアは恵まれている

ポストコンサル転職とは 

ポストコンサル転職とはどのようなものなのでしょうか。ここでは、基本的な意味と動向について解説します。

ポストコンサル転職とは

ポストコンサル転職とは、一般的にコンサル業界出身者が同業他社や事業会社の業界内外のポジションを目指して行う転職活動を指します。

また、フリーのコンサルタントとして独立する、起業するといったケースもありますので、これらも含めてポストコンサルのキャリアと考えることができるでしょう。

ポストコンサル転職の大きな特徴は同業のコンサルティングファームへの転職に限らず、事業会社への転職も有力な選択肢となることです。事業会社とは自社が主体のビジネスを行う会社を指し、コンサルティングファームとの対義語として使われます。

また、コンサルティングファームにおける平均勤続年数は全体の中では短い傾向にあります。コンサル業界では、転職が一般的であるためポストコンサル転職というジャンルができたといえるでしょう。

ポストコンサルの動向

コロナ禍を経て、官民を問わずDXの必要性が社会的に認知されるようになってきたことから、DXの知見を備えた人材のニーズが高まっています。

2022年には実際、政府が主導でDXを推進できる人材の定義を備えた「デジタルスキル標準」を公表しました。業界や業種を問わず企業の人材育成や個人の自己研鑽の観点でDXの知見が求められているといえるでしょう。

このような状況下で戦略系のコンサルティングファームや事業会社は今後ニーズが高めることが予想されるDXの領域を中心に、SIerやIT系コンサルティングファームからの採用を増やしています。

また、DXの領域に限らず国内のビジネスコンサルティング市場の拡大が予想されていること、正社員転職率も上昇傾向にあることから、引き続きポストコンサル転職の事例は増えていくものと予想されます。

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ポストコンサル転職の選択肢となるキャリア 

ここでは、ポストコンサル転職におけるキャリアの選択肢について解説します。

コンサルティングファームへの転職

先述の通り、コンサルティングファームにはステップアップのための転職が当たり前とされる文化があります。

さらに、近年はDX人材へのニーズが高まっていることから、IT系、総合系といったコンサルティングファームからさらに別の同業他社に転職するケースも増えています。また、IT系に限らずM&Aや事業企画などの分野においても積極的な採用姿勢が見られます。

また、コンサル業界では業務が多忙になることが多く、求職者はもちろんのこと面接する側のスケジュール調整にも苦慮することがあります。しかし、コロナ禍を経て採用のオンライン化が加速したことで、面接をリモートで行うことが増えました。

そのため、多忙なコンサル業界の人たちが効率的に転職活動を行える環境が整ったこともポストコンサル転職が広がりつつある理由といえるでしょう。

事業会社への転職

ポストコンサルのキャリアとしては、事業会社への転職も主要な選択肢です。従来は新卒一括採用が基本であった日本企業も近年は中途採用を増やしつつあります。例えば、NTT東日本は2021年に中途採用を2023年度の中途採用を2020年度比で5倍にすると発表しました。また、採用市場全体においても、IT業界を始めとして、ほぼ全業界で求人が増加傾向にあります。事業の多角化やDXを目指す企業が増える中で、即戦力確保の手段として中途採用のニーズが高まっているといえるでしょう。

採用市場におけるニーズの拡大に加え、一般的にコンサル経験者には高い課題解決力、コミュニケーション能力が備わっていると考えられており、事業会社からも即戦力としてみなされる傾向があります。

例えば、事業会社と近い分野でのプロジェクトに参画した経験のある人材であれば、業務の知見やノウハウに加え、事業会社が持っていないコンサルならではの視点を持っていることがあるでしょう。このような人材を育成するには長い時間を要するため、ポストコンサル人材を迎えることは合理的な選択肢です。

また、製造業・ものづくり企業への転職も有力な選択肢となるでしょう。社会的にDXや業務変革のニーズが高まる中で、製造業も同様に大きな変革を求められています。特に労働集約型の生産方式をとってきた企業にとっては、昨今の物価上昇や人手不足の中でデジタル技術を活用した自動化や生産性向上が生き残るための手段となっているのです。そのような状況下で、DXや業務変革を率いた経験があるポストコンサル人材に対して、即戦力としてのニーズが高まっています。ポストコンサルのキャリアとして、製造業でビジネスを展開する事業会社への転職も検討してみるとよいでしょう。

起業・独立

転職と比較して事例としては少なくなるものの、起業や独立するという選択肢もあります。一つはフリーのコンサルタントとして独立するケース、もう一つは新たに会社を立ち上げて起業するケースです。

フリーのコンサルタントとして独立する場合は、コンサル時代の専門分野や人脈を生かして既存のプロジェクトに参画するケースが多いです。独立した場合、自分の判断で参画するプロジェクトが決められる、働き方に裁量が持てるといったメリットがあります。一方で、仕事が見つからなければ収入が断たれる、社会保険などの負担が増えるといったリスクがあるため注意が必要です。

ポストコンサルのキャリアとして起業を選択するケースもあります。特に戦略系のコンサルティングファームでは経営層に向けた提案やプレゼンを行うため、経営者としての感覚を備えた状態で起業することができるでしょう。限られた範囲でのデータとなりますが、STARTUPDBによると、著名な外資系コンサルティングファームであるマッキンゼー出身の起業家は2010~2018年の間で19人に上るとされています。このことから、起業もポストコンサルの一つの選択肢として認知されているといえるでしょう。

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ポストコンサルに期待される能力 

ここでは、ポストコンサル人材に求められる能力について解説します。

汎用的な課題解決力

コンサルティングファーム出身者は、入社試験の時点でケース面接などを通して論理的思考力が試されています。そのため、コンサル業界に入った時点で、ある程度の論理的思考力については担保されているといえるでしょう。

また、入社後の業務においても次々に現れる答えのない課題に対して粘り強く思考を重ね、相手を納得させるアウトプットを出す経験を積んでいます。そのため、業界や専門分野の差はあれども、他社でも通用するポータブルスキルとして課題解決力が備わっていると考えられ、そのことが転職時に評価されることが多いです。

さらに、限られた時間、少ない人数といった逆境にあっても、妥協せずに課題に対する解を追求しようとする姿勢が身についていることも評価の対象になるでしょう。

折衝・調整におけるコミュニケーション能力

コンサル業界では、部署ではなくプロジェクトの単位で業務を進めることが一般的です。プロジェクトの遂行においては、多数の関係者との利害調整や合意を経ることが不可欠といえます。数多くのプロジェクトを経験してきたコンサルタントであれば、優れた対人折衝能力を持っているといえるでしょう。

また、プロジェクト内部での調整や管理を行う役割であるPMO(プロジェクト・マネジメント・オフィス)には外部からコンサルを入れるケースがあります。PMOはプロジェクト内部の利害関係を調整し、プロジェクトメンバーを正しい方向に動かすことが役目です。コンサル経験者の中でも特にPMOの経験した人材は他社とのコミュニケーションに優れているといえるでしょう。

さらに、マネージャーなどプロジェクトを統括する立場になるとプロジェクト内部にとどまらず、コストや契約条件などについてクライアントと交渉する場面も増えます。マネージャーに相当する経歴を持ったコンサル経験者には、対外的なコミュニケーションも期待することができます。

特定領域や業務への知見

コンサル業界では得意とする領域によって、戦略系、IT系、会計系などの住みわけがなされています。

例えば戦略系のコンサルタントであれば、企業の経営やマーケティングに関する戦略を立案することが多いため、経営者の視点に立った提案ができることが強みといえるでしょう。また、IT系のコンサルタントであれば、AIやサイバーセキュリティといったIT分野の知見に基づいた業務改善を得意分野としていることが多いです。

このように、分野は多岐に渡るもののコンサル経験者であれば何らかの得意分野を有しています。ポストコンサルのキャリアにおいても、自らの専門性と親和性の高い分野であれば他社からも即戦力として期待されるでしょう。

ポストコンサル転職の3つのメリット

ここでは、ポストコンサル転職の大穂表的なメリットについて解説します。

キャリアの選択肢が多い

ポストコンサル転職の大きなメリットはキャリアの選択肢が多いことです。コンサル業界を経験した人材は先述の通り、論理的思考力や課題解決力に優れていると認識されていることから、転職市場でも評価される傾向にあります。

また、基礎的な能力に加えて何らかの専門的なスキルを有しているため、同じ業界や専門分野であれば同業他社のコンサル企業以外に事業会社も転職先の候補になります。

キャリアの選択肢が多いということは、自分の望む人生を歩める可能性が高いといえるでしょう。実際、コンサル業界での経験を生かして自分の目標を達成したいと考える人は多く、コンサル業界を経て独立や起業に至るケースもあります。

中長期でのキャリア形成が図れる

コンサル業界では数ヶ月から1年の期間で区切られたプロジェクトに沿って仕事が進むことが多いです。部署という単位に囚われず幅広い経験ができる側面がある一方で、会社都合でプロジェクトを出入りすることもあり、一つの仕事に長い期間集中できないというデメリットもあります。

それに対して、部署単位で仕事を進める事業会社では、業務に取り組む時間軸がコンサル業界より長い傾向にあります。そのため、ポストコンサルのキャリアとして事業会社へ転職すると、プロジェクトの配属や期間に左右されず長い視点でのキャリア形成を目指せるというメリットがあります。

ただし、転職先に選ぶ企業によっては望むキャリア形成につながらないため、選考を受ける際には事前によく調べておきましょう。

ワークライフバランスを重視した働き方を目指せる

ポストコンサル転職によって実現しうるメリットの一つに、ワークライフバランスの実現が挙げられます。コンサル業界では、クライアントから高い報酬が支払われていることから、求められる成果品質が高くなる傾向にあります。また、プロジェクトの納期が厳しく設定されることが多いため、納期間際には深夜残業や休日出勤などのハードワークを求められることもあるでしょう。

一部のコンサルティングファームでは改善が進みつつあるものの、コンサル業界が激務というイメージを持つ人が多いのが実情です。実際、激務に疲れ果てたポストコンサル人材がワークライフバランスの実現を求めて転職を決断するケースもあります。

大手の事業会社に転職する場合は、比較的福利厚生や勤怠管理が適切に行われていることからワークライフバランスを実現しやすいといえるでしょう。ただし、企業ごとに個別事情があるため事前の確認が必要です。

ポストコンサル転職で注意すべき3つのポイント

ここでは、ポストコンサル転職で注意すべきポイントについて解説します。

転職後に年収が下がるケースがある

一般的に年収が高いとされるコンサル業界ですが、ポストコンサルのキャリアを考える際には年収が下がる可能性があることに注意が必要です。

パソナキャリアの調査によると外資系コンサルタントの年収は20代で600万円~2,000万円とされており、一般的な企業よりも年収水準が高いことがわかります。特に、マッキンゼーやボストンコンサルティングなど外資系でかつ戦略系のコンサルティングファームでは新卒時点ですでに平均年収以上の水準に到達するといわれています。

そのため、外資系コンサル企業から日系の同業他社や事業会社への転職を選ぶ場合は、転職後に年収が下がるケースがあるでしょう。

また、ポストコンサルに限らず、転職後に年収が下がる場合は住民税や社会保険料の支払いに注意が必要です。住民税や社会保険料は前年度の所得に基づいて計算されるため、転職前後で年収差がある場合は、これらの支払いに備えておく必要があります。

企業文化の違いを受け入れる

ポストコンサルの転職においては、選択肢に恵まれている一方で、企業文化が大きく異なる会社に出会う可能性が高くなります。そのため、転職後に入社した企業の文化に適応しながら成果を出すことが求められます。

例えば、コンサル業界ではプロジェクト単位で仕事を進めることが一般的ですが、事業会社に転職した場合は部署単位での業務に慣れる必要があるでしょう。また、同じコンサル業界でも外資系では成果主義が根付いている一方で、日系では年功序列の文化が残っていることもあります。

入社後のミスマッチを生まないためには、選考時に仕事の進め方や組織風土に関する質問をするなど、事前の情報収集を心がけましょう。

コンサル出身者への期待値が大きい

ポストコンサルのキャリアを考える上ではコンサル経験者への期待値の高さにも注意が必要です。コンサル経験者はこれまでの経験や能力を高く評価されることが多い一方で、本人へのプレッシャーや期待に届かなかった際の周囲の失望などにつながります。

特に、事業会社やベンチャー企業への転職において戦略系コンサルティングファームの経験者は、過度な期待をかけられ、好待遇で迎えられる傾向にあります。一方で、転職先で即戦力としてのパフォーマンスを発揮できない場合、「期待外れの人材」という烙印を押されてしまい、早期にキャリアアップの機会が絶たれてしまうリスクもあります。

ポストコンサルのキャリアを考える際には、自身の得手不得手を正しく把握し、選考では過度に背伸びをしない形で適度に自己PRを行うことが重要です。

ポストコンサルのキャリアは恵まれている

ポストコンサル人材には、課題解決力や論理的思考力に加えて、解の無い問題に対しても根気強く考え抜く姿勢が備わっていることが期待できます。そのため、即戦力とみなされることが多く、ポストコンサルキャリアの選択肢は恵まれているといえるでしょう。

年収の変化、企業文化の違いなど注意すべき点はありますが、メリットも大きいためこの機会にポストコンサルのキャリアについて考えてみてはいかがでしょうか。

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