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新型コロナウイルスや円安などの影響で、サプライチェーンの停滞が増えています。サプライチェーンは企業活動を支えているため、どのような業界でも見直しが欠かせません。どのようにマネジメントをすべきなのか、概要と合わせて確認していきましょう。
サプライチェーンとは製品の生産・流通プロセスのこと
サプライチェーンとは、製品がユーザーに届くまでのプロセス全体のことです。日本語では「供給連鎖」と訳されており、大まかには以下のステップに分けられます。
サプライチェーンの流れ | 概要や例 |
---|---|
1.調達 | 原材料や部品を仕入先から調達する。 |
2.製造 | 工場などで製品を製造する。 |
3.流通 | 航空機やトラックなどによる製品の流通。 |
4.販売 | 店舗や自社サイトなどで製品を販売する。 |
5.消費 | ユーザーによる消費。 |
上記のほか、業種によっては在庫管理や製品設計、開発などがサプライチェーンに含まれることもあります。
なぜサプライチェーンを見直す必要があるのか?
サプライチェーンを見直すことは、企業活動で重要な「モノ・お金・情報」の流れをスムーズ化することにつながります。
サプライチェーン全体は鎖のようにつながっており、調達から消費にかけては製造したモノ(製品やサービス)が流れます。その代わりに、企業はユーザーからお金や情報(利用履歴や口コミなど)を受け取るため、この連鎖が不安定になると企業活動は停滞してしまいます。
バリューチェーンやエンジニアリングチェーンとの違いは?
サプライチェーンと混同されやすい用語に、「バリューチェーン」や「エンジニアリングチェーン」があります。いずれも企業活動の流れを表す用語ですが、それぞれ以下のように意味が異なります。
用語 | 意味 | プロセスの流れ |
---|---|---|
サプライチェーン | ユーザーに製品が供給されるまでの流れ。 | 1.調達 2.製造 3.流通 4.販売 5.消費 |
バリューチェーン | 「製品価値」に着目して、企業の生産プロセスをつなげたもの。 | 1.マーケティング 2.製品開発 3.生産 4.販売 5.顧客フォロー |
エンジニアリングチェーン | 設計部門のプロセスをつなげたもの。 | 1.企画構想 2.製品設計 3.工程・設備設計 4.生産準備 5.アフターサービス |
バリューチェーンは「価値の連鎖」を表したものであり、工程がひとつ進むにつれて製品価値が上昇していきます。一方で、エンジニアリングチェーンは「設計情報の連鎖」をまとめたものです。
企業活動では、サプライチェーンとエンジニアリングチェーンを通してバリューチェーンが形成されるため、根本的な経営改善をする場合はサプライチェーンの見直しが欠かせません。
サプライチェーンマネジメント(SCM)の必要性が高まっている理由
さまざまなリスクが顕在化した影響で、近年では「サプライチェーンマネジメント(SCM)」の必要性が高まっています。サプライチェーンマネジメントとは、製品供給までの各プロセスを区切るのではなく、サプライチェーン全体として管理または連結する取り組みです。
なぜ現代ではサプライチェーンマネジメントが求められるのか、ここからはその理由を見ていきましょう。
サプライチェーンのリスク(不安定要素)が増加傾向にある
近年では、日本においてもサプライチェーンのリスクが増加傾向にあります。
例えば、2022年から本格化したウクライナ紛争の影響で、世界では深刻な半導体不足が起こりました。プラスチックやゴム、鉄鋼製品などの供給もひっ迫しており、世界中の企業がサプライチェーン停滞の影響を受けています。
国内企業についても、2019年以降に深刻化したサプライチェーンのリスクは少なくありません。
○2019年以降に深刻化したサプライチェーンのリスク
疫病リスク:新型コロナウイルスの世界的な蔓延。
自然災害リスク:台風による洪水や地震など。
為替変動リスク:約32年ぶりの水準を記録した円安。
政治リスク:経済対立や政治的対立など。
上記のほか、気候変動やエネルギー高騰、産業構造の変化などもサプライチェーンを脅かすリスクです。調達から消費までを含めると、サプライチェーンには多くの不安定要素があるため、世の中の動向を把握した上でのマネジメントが求められます。
原材料の高騰によってコストが増加した
さまざまな原材料の高騰も、サプライチェーンマネジメントが注目されている要因です。2022年10月には、同年最高となる6,699品目が値上げされた影響で、多くの企業が対応に追われました。
価格改定による対応もありますが、商品・サービスへの価格転嫁は需要減につながります。需要を減らすことなく利益を確保するには、サプライチェーン全体のコストを見直さなければなりません。
サプライチェーンマネジメントには、調達コストや製造コスト、流通コストを削減させる効果があります。ただし、強引な交渉によって取引先との関係が悪化するケースもあるので、コスト削減の方法は慎重に考える必要があるでしょう。
業界内でのポジションや競争力を維持するため
これまで順調に経営できていたとしても、その状態が続くとは限りません。消費トレンドは日々変化するため、現状のままでいると競争力を失ってしまう恐れがあります。
特に近年はDX(※)に取り組んでいる企業が増えており、AIなどの活用事例も多く見られます。その範囲は徐々に広がっているので、業種・業態に関係なくサプライチェーンマネジメントの必要性が高まっていくでしょう。
(※)「デジタルトランスフォーメーション」の略語。デジタル技術やデータを活用して、現代に合ったビジネスモデルや企業文化、組織などへの変革を目指すこと。
サプライチェーンマネジメントの事例から見る成功のポイント
サプライチェーンマネジメントを成功させるには、調達から消費までのプロセスを多角的に見直し、場合によっては他企業との協働も必要になります。ここからは経済産業省の「サプライチェーン イノベーション大賞」から、経営者が参考にしたい事例をまとめました。
成果を上げている企業がどのように取り組んでいるのか、成功のポイントを押さえていきましょう。
【事例1】製造・配送・販売の見直しで食品ロスを削減/セブン-イレブン・ジャパン
大手コンビニチェーンでお馴染みの『株式会社 セブン-イレブン・ジャパン』は、持続可能なサプライチェーンを目指して食品ロスに取り組んでいます。具体的には「製造・配送・販売」に分けてサプライチェーンを改善し、消費期限の延長や在庫の削減を実現しました。
○セブン-イレブン・ジャパンの取り組み例
・日本デリカフーズ協同組合への加盟で、衛生管理レベルを向上
・工場の発注締め時間を変更し、食品残渣を削減
・対象商品へのポイント付与による在庫削減
上記の施策によって同社は生産性アップや労働時間削減にも成功しており、従業員にも良い効果が表れています。ポイント付与によってユーザーを活用している点も、参考になるマネジメントでしょう。
このような成果を出すには、ひとつの工程ではなくサプライチェーン全体を多角的に見直す必要があります。
【事例2】CO2排出削減を目指した食品物流の改善/キユーピー
大手食品メーカーの『キユーピー株式会社』は、SDGsを意識したサプライチェーンマネジメントに取り組んでいます。重点課題としてCO2排出削減を設定し、食品物流を以下のように改善しました。
○キユーピー株式会社の取り組み例
・異業種3社で製品を共同輸送
・冷凍品を扱う伊藤ハム社と鉄道コンテナを共有
・繁忙期を避けて翌々日の配送を実施
上記のほか、製造プロセスでは検品効率化や賞味期限の延長、販売プロセスでは古い商慣習の見直しなども行っています。中でも異業種3社による共同輸送については、開発・導入コストをかけることなくCO2排出削減を実現しました。
この事例のように、自社が取り組むべき課題や目標を明確にしておくと、サプライチェーンマネジメントの方向性が分かりやすくなるでしょう。
【事例3】3社共同でのサプライチェーン改善/スギ薬局、ライオン、PALTAC
『株式会社スギ薬局』『ライオン株式会社』『株式会社PALTAC』は、企業の枠を超えた共同でのサプライチェーンマネジメントに取り組んでいます。3社は過剰在庫を抱えていた製品を分析し、売上を最大化しながら在庫量の適正化を図れるような施策を進めました。
○3社による取り組み例
・オリジナル販促ツールの導入による売上アップ
・情報共有システムの活用による在庫の適正化
・日別POSデータから売上を予測し、返品量を削減
将来的には施策のさらなる拡大を目指しており、2022年度には5社以上の参加が見込まれています。サプライチェーン全体を最適化するには、この事例のように他企業との協働も必要になってくるでしょう。
サプライチェーンマネジメントの注意点と対策
サプライチェーンマネジメントは必ず成功するものではなく、プロジェクト次第では失敗に終わることもあります。仮に失敗すると、初期コストを長期間回収できなくなったり、機会損失が生じたりするため、戦略は慎重に立てなければなりません。
ここからは、戦略を立てる段階で意識したい注意点とその対策を見ていきましょう。
導入コストや開発コストがかかる
サプライチェーンマネジメントはコスト削減につながりますが、プロジェクトに取り組む段階では設備などの導入コストが生じます。新たにシステムを開発する場合は、人件費を含めた開発コストもかかるでしょう。
施策を進めた結果、発生したコストが削減分を上回るようではメリットとは言えません。そのため、計画を立てる段階で「発生するコスト」「削減できるコスト」を明確にしておく必要があります。
発生するコストの例 | 削減できるコストの例 |
---|---|
・導入コスト ・開発コスト ・人件費 など | ・調達コスト ・生産コスト ・物流コスト ・人件費 ・人材採用コスト ・水道光熱費 など |
少しでも早くコストを回収したい場合は、キューピー株式会社の事例のように開発・導入コストがかからない施策を考えてみましょう。
施策によっては新たな人材が必要になる
IT化やDXを通して施策に取り組む場合は、デジタル技術に詳しい人材が必要です。例えば、独立行政法人の情報処理推進機構(IPA)は、DXに対応する人材として以下の7職種を挙げています。
○DXに対応する人材
1.プロダクトマネージャー(施策を推し進めるリーダー)
2.ビジネスデザイナー(企画や立案)
3.テックリード(システムの設計や実装)
4.データサイエンティスト(データ分析や解析)
5.先端技術エンジニア(先進的なデジタル技術の実装など)
6.UI/UXデザイナー(ユーザー向けのシステムデザイン)
7.エンジニア/プログラマ(システム実装やインフラ構築など)
上記の通り、特にDXではさまざまな人材が必要になりますが、日本のデジタル人材は供給不足の状態にあります。優れた技術者がスムーズに見つかるとは限らないため、人材確保は早めに取り組むことが重要です。
また、IT化やDXでは、システムを使う側のITリテラシーも求められるので、全社的な人材教育にも力を入れましょう。
サプライチェーンを可視化しないと機会損失につながる
サプライチェーンマネジメントの戦略策定では、サプライチェーンの可視化が欠かせません。大雑把に施策を考えると、各プロセスにさまざまな不安定要素が残ってしまうため、深刻なトラブルを招くリスクが高まります。
○不安定要素によるトラブルの例
・仕入先の供給がストップし、自社の開発や製造に遅れが出る
・取引先の戦略が変更され、納品物の大量廃棄を余儀なくされる
・消費者ニーズの予測を誤り、過剰在庫が生じる
・明確な目標数値がない影響で、リアルタイムでの経営判断ができなくなる
・法令やコンプライアンス違反によって売上が減少する
サプライチェーンの可視化では、ステークホルダーも含めた製品供給までの流れを整理し、複雑化している部分や不安定要素を特定することが重要です。また、売上やコストへの影響を事前に予測しておくと、細かい経営判断をしながらプロジェクトを柔軟に調整できるでしょう。
サプライチェーンマネジメントの近年の傾向は?注目されるリスクと施策
サプライチェーンマネジメントを成功させるには、時代の変化に合わせて計画を立てることが重要です。近年注目されている点としては、新型コロナウイルスによる影響や、ロジスティクス分野への取り組みが挙げられます。
それぞれサプライチェーンとどのように関わっているのか、以下で詳しく見ていきましょう。
新型コロナウイルスの影響で、サプライチェーンリスクへの備えが顕著に
2019年末から猛威を振るった新型コロナウイルスによって、国内企業のサプライチェーンは大きく停滞しました。外出制限や渡航制限を要因とする人材不足をはじめ、消費につながる需要面にもさまざまな影響が出ています。
○新型コロナウイルスによるサプライチェーンへの影響例
・対面サービスの需要が減少した
・トラック運転手などの不足により、海外を含む物流が停滞した
・貨物便料金の値上がりによるコスト増 など
巣ごもり需要によって売上が伸びた業界もありますが、経済全体としては需給のバランスが崩れたことで、多くの業界にサプライチェーン障害をもたらしました。近年ではこのようなリスクへの対策として、生産拠点の分散や他企業との関係構築、運転資金の積み増しなどに取り組む企業が増えています。
サプライチェーンを支えるロジスティクスの見直しが注目される
ロジスティクスとは、物流に関わるプロセスを「調達・生産・販売・回収」などに区切り、それぞれの工程で需給バランスの最適化を図ることです。ロジスティクスは環境保全や安全性向上にもつながるため、SDGsとの関連が深い施策としても注目されています。
多くの企業にとって物流はサプライチェーンを支えるものなので、輸送や保管、流通などのプロセスを改善すると、モノ・お金・情報の流れをスムーズにできます。細かい部分で言えば、加工や包装、検品、仕分け、情報管理にも改善の余地があるでしょう。
ただし、ロジスティクスはあくまで物流分野なので、サプライチェーンマネジメントではそれ以外のプロセスも見直す必要があります。
サプライチェーンを見直して自社の課題を洗い出そう
さまざまなリスクが顕在化した影響で、近年ではサプライチェーンマネジメントに取り組む企業が増えています。物流以外の業界にもその波は広がっているため、施策を進めない企業は時代に取り残されるかもしれません。
競争力や企業価値の向上にもつながるので、成長を目指す企業はサプライチェーンを細かく見直し、自社の課題を洗い出してみましょう。
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