IoTの必須アイテム「センサー」の種類と活用方法
(画像=Imaging L/stock.adobe.com)

これまでのコラムでは、IoTの活用事例や実際の製品を紹介してきました。その中でIoTを活用するということは、モノから得られたデータを活用することだとお気づきになったでしょうか。

モノからデータを取得するには、センサーの存在が不可欠です。

今回のコラムでは、IoTで利用される多様なセンサーの種類と、センサーで得られたデータをスマートフォンなど日常生活で使うモノから製造業の現場まで、どのように活用されているかを解説していきます。

目次

  1. IoTセンサーとは
  2. IoTセンサーの役割と機能
  3. IoTセンサーの種類② : 設備機器に設置されたセンサー
  4. IoTセンサーの選定方法
  5. IoTセンサーの活用事例
  6. IoTを活用するためには?

IoTセンサーとは

IoT(Internet of Things)とは「モノのインターネット」を意味し、あらゆるモノ(センサー機器、駆動装置、住宅・建物、車、家電製品など)がインターネットを通じてサーバーやクラウドサービスに接続され、相互に情報交換する仕組みです。IoTセンサーは、センサー(さまざまな物理現象を検知し、電気信号に変換する機器)をネットワークに接続することで、機械の稼働状態や人の動作、明るさ、温度、湿度、圧力、速度、位置などの情報をリアルタイムで感知・収集してデータ化し、さまざまなことに活用することができます。例えば、蓄積した加工品の検査データを利用して、不良品を排除するなど品質の向上に貢献します。

IoTセンサーの役割と機能

IoTセンサーの種類

「モノの状態」を把握するためには、ネットワークに接続できるIoTセンサーが必須です。IoTセンサーを利用して、さまざまなモノの状態をリアルタイムに収集することで、その場の状況を確認して対処したり、新たなサービスの提供をしたりできます。例えば、天気や気温、日射量の情報を元に自動で植物に散水したりできるようになります。また、製造現場において設備状況を把握するためには、各生産設備にIoTセンサーを取り付けてデータで収集した稼働状況を分析すれば、設備が正常に機能しているかどうかの判断が可能です。これは予知保全や予兆保全の実現にもつながり、結果として安全性の確保にも貢献します。

IoTセンサーの種類① :スマートフォンの内蔵センサー

個人デバイスとしてセンサーを普及させたものといえばスマートフォンです。スマートフォンには数多くのセンサーが内蔵され、さまざまなデータを取得しています。

GPSセンサー

GPS(Global Positioning System)センサーは、複数の人工衛星との距離から地上にあるスマートフォンの現在位置を特定します。このセンサーは元々、軍用をはじめ、航空機や船舶、測量などに使われてきましたが、現代では地図アプリに代表されるように、カーナビ、電車・バス乗り換え、ジョギング、見守りなど、さまざまなアプリに搭載されています。

加速度センサー

速度の変化、つまり加速度を測定するセンサーです。動きだけでなく重力加速度(地球の重力により物体にかかる力)を利用して縦向きか横向きかを判断することも可能なので、スマートフォンの向きに応じて画面表示を切り替えることができます。他に、歩数計やカメラの手振れ補正などにも活用されています。

ジャイロセンサー

スマートフォンの角度変化(回転する動き)を測定するセンサーです。加速度センサーでは反応しないスマートフォンの回転を測定でき、ARアプリなどで画面の傾きに応じてキャラクターの描画位置を判定し、正しく描画するために使われます。スマホやデジカメのほか、人工衛星やロケット、飛行機などの姿勢制御にも必要不可欠なセンサーです。

照度センサー

光の明るさを検知するセンサーです。スマートフォンを使用する場所や時間によって画面の明るさを切り替えるのに使用されます。例えば明るいところで使用する際は画面の明るさを抑え、電池の消費電力を節約することができます。

近接センサー

接近するものを検知するセンサーで、検出対象に接触することなく検出することを目的としているセンサーの総称です。「顔が近づいていれば通話中」などの判定をしてモードを切り替えるのに使われます。

指紋センサー

指紋を読み取るセンサーです。指紋表面の模様を読み取るものと、表皮のすぐ下にある静脈の模様を読み取るものとがあります。スマートフォンでは、前者のものが使われ、ロック解除や決済時に本人の認証として利用されます。

このように、スマートフォンは多くのセンサーを内蔵しているだけではなく、OS、CPU、メモリ、ストレージ、通信機能なども搭載されているため、単体でデータの取得から保存、処理、さらに通信まで実行することが可能です。

無料eBook

  • 製造業DXの教科書
    図版と事例でわかる|製造業DXの教科書

    世界市場での競争の激化や労働人口の減少などが進む今、日本の製造業においてDX(デジタル・トランスフォーメーション)の推進は不可欠です。 このeBookでは、製造業のDXの全体像について詳しく解説します。 DXに必要な技術を製造プロセスごとに紹介するほか、具体的な活用事例、製造業DXの今後の展望まで幅広く理解できる内容になっています。


IoTセンサーの種類② : 設備機器に設置されたセンサー

続いて、工場などの現場の設備機器やロボットに設置されたセンサーとそれらから得られるデータについてご紹介します。

カウンター、振動センサー、電流センサー

モーターなど回転するもののデータを取得するためのセンサーです。カウンターで回転数を計測したり、振動センサーで振動を検知したり、電流センサーで電流値を測ることにより回転数を分析し、AIを活用して故障を予測することができます。

音センサー、振動センサー、集音マイク

機器の音や振動のデータを収集するためのセンサーです。マイクロホンと同じ原理となっており、音センサーは音を電気信号に変える仕組みです。音に反応して動作させたい機器類があるときなどに使用します。集音マイクで音を拾ったり、振動センサーで振動を検知し、通常稼働時の周波数と比べることにより、AIを活用して異常を探知することができます。

電流クランプ、電力計

機器の電流や電圧のデータを取得するためのセンサーです。電流クランプでの電流値のモニタリングや、電力計での分電盤の電力監視を行い、通常稼働時の値と比べることにより(正常な教師データを学習させることにより)異常を検知することができます。

温度計、湿度計、磁界センサー

設備内の気温や湿度、電磁ノイズのデータを取得するためのセンサーです。温度計や湿度計で気温や湿度を計測することで適切な温度と湿度を保てるだけでなく、磁界センサーで電磁ノイズの発生源を特定してシールドを施すことで、機器の精度維持に貢献することができます。

流量センサー

液体や気体の単位時間当たり流量を測るセンサーで、電磁石が付いており、コイル内に電気を流すと計測管の中に磁界が発生。その中を液体が通る時に発生する起電力の大きさを測定するという原理です。貯水タンクのポンプに流量計を付けて流量を観測すると、ポンプの故障や目詰まりにいち早く気づくことができ、的確に保守・点検を行うことが可能です。

距離センサー

ある対象物から他の対象物までの距離を計測できるセンサーで、計測から得られるさまざまな変化を把握するために使われます。距離センサーの原理は、対象物にレーザー光線を発射して反射してくる光を感知し、その時間差や位相差を計算式に当てはめて距離を計測するというもの。計測方式には、位相差方式、TOF(Time of Flight)方式、三角測量方式などがあり、用途に適した方式が採用されます。建築・土木の測量、工場のFA(Factory Automation)、位置制御、タンク内の液量測定など産業界のあらゆる分野で活躍しています。

環境センサー

温度・湿度・気圧・紫外線・二酸化炭素など、環境に影響を与えるものをデータ化するセンサーです。環境センサーは何をデータ化するかによって単体で活用され、目的別にセンサーの種類は異なります。温度センサーは冷蔵庫などの家電にも使われ、紫外線センサーは紫外線硬化樹脂の製造や、空気清浄機などにも利用されています。二酸化炭素センサーは二酸化炭素濃度計等に搭載され、地球環境を気にかける人の増加で、工業用以外に一般用としても需要の高まりが顕著です。

IoTセンサーの選定方法

IoTの必須アイテム「センサー」の種類と活用方法
(画像=YouraPechkin/stock.adobe.com)

IoTでデータを活用するためには、適切なセンサーを選ばなければなりません。センサー選定の際には以下の項目を検討するとよいでしょう。

目的

センサー設置の目的、つまり何のデータを取得したいのかを明確にしてそれに合ったセンサーを選ぶ必要があります。例えば設備の稼働状態を把握したいのであれば、振動センサーや電流計などを使用しますし、空間の環境を把握したいのであれば温湿度センサー、二酸化炭素濃度センサー、騒音センサー、光センサーなどを使用します。

価格と仕様

センサーの価格やサイズはもちろんのこと、測定の精度や周波数、消費電力や電源供給方法などをメーカーが公開しているカタログを見て検討する必要があります。例えば、バッテリーや電池式で稼働するものであれば、消費電力が低いものや低省費電力の通信規格を採用しているものを選定する必要があります。

設置場所

センサーをどこに置くかだけではなく、温度や湿度、外部からの衝撃や振動等、センサーの測定結果に影響を及ぼす可能性のある外的要因を考慮しながら検討する必要があります。

購入のしやすさ

センサーの変更はシステム全体の変更に繋がるため、入手しやすいものを選ぶことが重要です。試作段階だからといって値段重視で選定してしまうと、その後生産が終了していたり、仕様が変更されてしまったりと同じものの入手が困難になる可能性があるので、市場に大量に流通しているものであるか、そうでない場合はメーカーに供給体制を確認しておく必要があります。

IoTセンサーの活用事例

様々なセンサーを紹介してきましたが、そこから得られるデータはどのようなものなのでしょうか。

センサーのデータは、センサーが感知した刺激やインプットを信号に変換して出力したものです。これまで紹介していないセンサーに関して、具体例を述べていきます。

IC温度センサー

IC(Integrated Circuit)温度センサーは、種々のサーミスタ(温度変化に対して電気抵抗の変化の大きい抵抗体)や基準電圧源、アンプなどを集積させた素子(電気回路などの構成要素として全体の機能に重要な役割を担う単位部品)のこと。

一般的に、温度に応じて出力される電圧は上昇しますが、温度と電圧の関係式を用いて、測定したい対象物の電圧から温度を算出することが可能です。具体的な活用事例としては、エアコンなどの家電、パソコンなどの精密機器、病院における薬品保管棚の温度管理、飲食店での食材管理などがあります。

光センサー

光センサーは、光の強弱や断続を測定し電気信号に変換するセンサーです。可視光線や不可視光線(赤外線・紫外線)をさまざまな用途に活用しています。光センサーの種類としては、赤外線センサー・紫外線センサー・フォトダイオード・フォトトランジスタなどがあり、これらは日常の多様な分野に幅広く使用されています。身近なところでは、エアコンやデレビのリモコンやLED照明、現金自動預け払い機(ATM)のカード検知・紙幣検知・内部機構検知などで光センサーが活用されています。

湿度センサー

建物や空間の湿度を計測し、機械など物質の管理に対して使用されます。電子式の湿度センサーには主に抵抗式と容量式の2種類があり、どちらも感湿材料を電極で挟んだ構造となっています。それぞれ構造や応答速度に違いがあるため、用途に適したほうを選択しなければなりません。使用例としては、エアコンや冷蔵庫、電子レンジといった日用製品から、医療現場、航空宇宙の分野など、多岐にわたる分野で活用されています。

カメラ

デジタルカメラには画像をキャプチャーするCMOSイメージセンサー(Complementary Metal Oxide Semiconductor)が内蔵されています。CMOSセンサーは光を感知して電気信号に変換します。得られたデータを画像処理エンジンで処理することでファインダーと液晶モニターに映し出される画像が作られます。単に画像として出力するだけでなく、得られたデータに更なる処理を加えることで高精度な顔認識や動体検知に利用することも可能になります。

このように、センサーから得られたデータを活用するにはデータの適切な処理が必要とされています。IoTシステムにおいて、データは継続的に取得され、蓄積されています。膨大な量のデータを処理し、モニタリングすることで今まで見えなかった状況の変化などがリアルタイムに見えてきます。データを分析して異変や異常を事前に検知し、対応することができるようになるのがセンサーデータ活用の最大のメリットです。

また、センサーと聞くと工場の設備についているものという印象を受けるかもしれませんが、データを収集できるものは全てセンサーであり、例えばカメラやマイクを用いて店内の状況をデジタルデータとして収集して活用する、というのもIoTの活用例の一つです。

IoTを活用するためには?

IoTを活用したいけどどこに何のセンサーを設置すればよいかわからない、センサーから得られたデータは蓄積されているけどどのように扱えばよいかわからない、目的を達成するためにはどのようなセンサーをつければよいかわからない、などの悩みは多く存在します。

IoTを活用することで生産性や業務効率の向上が実現できるは理解している方は多いですが、導入ハードルが高かったり、導入後の運用体制を検討すると踏み切れないというのが現状でしょう。まずは自社の課題や導入後の目的を明確にして、製造業で実績がある信頼できるパートナーを見つけることが重要となります。

【こんな記事も読まれています】
【会員限定動画】サプライウェブで実現するマスカスタマイゼーション時代の企業戦略
製造業における購買・調達業務とは?課題の解決方法も紹介
ビジネスや技術のトレンドに反応しながら進化を続けるCRMの事例を紹介