光センサとは? その仕組みと特徴、活用事例を含めて詳しく解説
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目次

  1. 光センサとは:光を測定して電気信号に変換するセンサ
  2. 光センサの種類と仕組み
  3. 光センサの5つの特徴
  4. 光センサの応用事例
  5. まとめ

光センサとは:光を測定して電気信号に変換するセンサ

ひとくちにセンサといっても圧力センサや角度センサなどさまざまな物理現象を計測するものがあります。なかでも光センサは、光の強弱を計測して電気信号に変換するセンサの総称です。光センサが扱う対象は、人の目に見える可視光線だけではなく赤外線や紫外線といった不可視光線も含まれます。

光センサの活用事例は多岐にわたり、スマートフォンや空気清浄機といった身近な機器から産業用機器、医療機器などの幅広い分野にまで及びます。光センサの構成要素は、主に「投光素子」と「受光素子」の2つです。

投光素子から発した光やその反射光を受光素子で受け取ることで、物体の検知を行うことができます。近年は、IoTの活用が広がっているため、センサに要求される精度や即時性などの水準が高まっており、光センサについても引き続き新たな製品の開発が続けられていくでしょう。

光センサを活用している分野

近年は、あらゆる分野でIT化が進み、機器に求められる精度やスペック、省エネ性能の水準が高まっているため、光センサによって機器制御するケースが増加傾向です。そのため光センサを活用している分野は、製造業や医療などの多岐にわたり、今後も活用事例が増えていく可能性が高いでしょう。ここでは、光センサを活用している主な分野について解説します。

No.分野具体例
1産業機械の動作制御、工場照明の制御、機械の温度検知、製造業における品質検査 など
2医療血中酸素の濃度測定、血液の色検知、血圧の測定 など
3家電機器の動作検知、照明の制御、テレビモニタの輝度調整、ロボット掃除機の障害物検知 など
4事務プリンタをはじめとしたOA機器の制御(用紙の供給、用紙サイズの検知) など
5自動車製造ラインに配置された機器の制御、自動運転システムにおける周囲の環境認識 など
6環境計測有害なガスの検知、温度の検知、日照時間の検知 など

光センサの種類と仕組み

光センサには、主に透過型、反射型などの種類があります。ここでは、光センサの代表的な種類とそれぞれの仕組みについて解説します。

透過型

透過型は、投光部から検知対象の物体に光を照射して、物体によって遮られた光を受光部で受けることで検知を行う方式です。透過型では、投光部から照射光を直接受光部で受け、光が反射によって分散しにくいため、検出可能な距離の融通が利きやすくなります。また空気中のほこりや粉塵の影響を受けにくいことも大きなメリットです。

光センサの種類と仕組み

一方、投光部と受光部を対面で配置する必要があるため、透過型の光センサを配置する際には一定のスペースが必要となります。

反射型

光センサには、透過型の他に検知対象の物体に照射した光の反射によって計測を行う反射型という分類があります。反射型はさらに4種類の方式に分類されますので、ここではそれぞれの特徴について解説しましょう。

・拡散反射型
拡散反射型は、反射型のなかでも比較的多く採用されている方式です。拡散反射型では、投光部と受光部が一体化しており検知対象の物体から反射された光によって計測を行います。投光部と受光部が一つになっているため、狭いスペースでも設置可能で光を反射する物体であれば透明でも検知可能です。

しかし透過型と比較して「検出可能な距離が短い」「周辺環境の影響を受けやすい」というデメリットもあります。

・距離設定型
距離設定型の光センサも拡散反射型と同じく投光部と受光部が一体化しています。投光部から検知対象の物体に光を照射し、その反射光が受光部に入る角度によって距離を測定する仕組みです。距離設定型では、検知対象の物体のみに光を照射するため、背景に影響されず計測できます。一方、検出可能距離を長くするとその分だけセンサも大型になる点には注意しましょう。

・回帰反射型
回帰反射型の光センサでは、センサに対向する位置に反射板を設置し、反射板から戻る光を検知対象の物体が遮ることで計測を行います。回帰反射型は、投光部と反射板のみを配置すればよいため、「省スペース」「長い距離でも計測可能」などが特徴です。一方、遮られた反射光を検知するため、透明な物体は検知できません。

・限定反射型
限定反射型の光センサも距離設定型と同じく投光部と受光部が一体化した構成です。一方、投光部と受光部が異なった角度で配置されており、検出できる範囲が限られています。そのため一定範囲内にある対象物に絞って細かな差異を検知したい場合などに最適です。

光センサの5つの特徴

ここでは、光センサの数ある特徴のうち代表的な5つの特徴について解説します。

1.あらゆる物体を検出

光センサは、検知対象となる物体の反射光や透過した光の強度を検出するため、物体の材質や材料に関係なく検知することが可能です。金属、木材といった固体をはじめ、水などの液体についても検知対象にできます。また空気中のほこりや粉塵といった微細な物質も高い精度で検出できることも大きな強みです。

2.非接触

光センサは、光を照射して物体検知するため、非接触での計測が可能です。接触が必要なセンサであれば使用に伴う摩耗や劣化に注意が必要ですが、光センサであれば接触による劣化などの心配は少ないといえるでしょう。また検知対象の物体をセンサの接触によって損傷させてしまうリスクも下げることができます。

3.短い応答時間

光センサでは、光の照射によって物体の検知を行うことから検知に要する時間も他のセンサに比べて短い傾向です。また光センサの内部は、電子部品で構成されているため、検知した光を電気信号に変換するまでのスピードも速く即時性の高い応答が可能になります。

4.高い分解能

分解能とは、センサにおける感度を意味します。センサが測定できる細かさの限界とも言い換えることが可能です。光センサはほこりなどの微小な物体の検出や高い精度での位置計測が可能なことから、他のセンサに比べて分解能が高いといえるでしょう。

5.色の判別が可能

色は、光の波長によって異なります。そのため光の照射によって計測を行う光センサは、色の判別も可能です。赤、青、緑それぞれの光の量から受光比率を計測するカラーセンサも光センサの一種です。

光センサの応用事例

光センサは、広い分野で活用されており、光センサの技術を応用した事例は多岐にわたります。ここでは、産業や家電をはじめとした分野における光センサの応用事例を紹介します。

産業機器分野の事例

・透過型フォトインタラプタ
透過型フォトインタラプタは、透過型センサとも呼ばれており、物体の存在を認識あるいは検知する用途で用いられます。フォトインタラプタは、光を照射する部分と光を受容する部分から成り立っており、検知対象の物体が遮る光の反射から物体を検知するものです。

フォトインタラプタは、透過型と反射型に大別され、透過型は検知対象の物体によって遮られた光の状態から、反射型は検知対象の物体が反射した光を受け入れることで検知します。透過型フォトインタラプタの大きな特徴は、発光部と受光部で検知対象を挟み込むような形で光を照射するため、非接触での検知が可能で使用に伴う劣化を最小限に抑えられることです。

・FAエンコーダ
FAエンコーダは、産業機械の分野で用いられる光学式エンコーダです。光学式エンコーダには、発光素子と受光素子の間に可動式スリットと固定式スリットが備わっています。発光素子から照射した光に対して、可動式スリットの移動による強弱を作ることで、受光素子にて電気信号の強弱に変換します。さらに、検知した電気信号の強弱を認識可能な信号として出力されることで、物体の動きを検知することが可能です。

・反射型エンコーダ
エンコーダは、発光素子と受光素子を向かい合わせに配置した「透過型」と、それらを同一平面上に置いた「反射型」に大別されます。反射型エンコーダは、小型かつ薄型にしやすいため、コンパクトに扱えることが大きな特徴です。一方、反射型エンコーダを扱うメーカーが限られていることには注意しましょう。

家電機器分野の事例

・ほこりセンサ
近年は、室内のほこりを検知して自動的に動作する空気清浄機が普及しています。これらには、空中に漂うほこりを赤外線によって検知するほこりセンサが備わっています。ほこりセンサは、空中のほこりに赤外線を照射して、ほこりによって散乱した光を測定することでほこりを検知することが特徴です。

ほこりセンサでは、ほこりの検出有無によって出力が切り替わり、その出力時間によってほこりの検出量を計測しています。家庭用の空気清浄機がほこりセンサの身近な活用事例ですが、工場における粉塵の検出やオフィス環境のモニタとしても活用されています。

・赤外線測距センサ
赤外線測距センサは、赤外線を用いた非接触の距離測定センサです。具体的な活用事例としては、掃除用ロボットの段差検知、トイレの人感センサなどが挙げられます。赤外線測距センサの構成要素は、光源となるLEDと半導体位置検出素子(PSD)です。PSDは光が入ってきた位置を電圧に変換するものであり、LEDから照射された光をPSDが受けることで対象物との距離計測を行います。

この方法を用いると光の色や反射に影響されないため、周囲の環境に依存せずに距離の計測を行うことが可能です。

・照度センサ
照度センサは、検知した光の輝度に応じて出力を調整するセンサです。光の明るさを検知することから、人の目に近い仕組みを持っているといえるでしょう。また照度センサは、スマートフォンやタブレット端末におけるディスプレイの明るさ調整に使われているため、日常生活で身近に使われているセンサの一つです。

事務機器分野の事例

・ペーパーセンサ
ペーパーセンサは、事務用プリンタで主に使われる反射型の光センサで、プリンタ内部のトレイにおける用紙の有無、紙詰まりなどの検知に使われます。外部から入ってくる光に影響されにくく、安定した動作が可能であることが大きな特徴です。

・フォトインタラプタ
プリンタのトナー残量検知や異物検知には、透過型のフォトインタラプタが用いられます。先述の産業機械におけるフォトインタラプタと同じ原理で動作します。

・サーモパイル温度センサ
サーモパイル温度センサは、非接触で温度変化を感知するセンサで、赤外線によって温度情報を認識します。プリンタで紙の送り出しに使われる定着部ローラーは、摩擦によって高温になりやすいことから、サーモパイル温度センサが取り付けられています。

自動車分野の事例

・2chフォトインタラプタ
2chフォトインタラプタとは、光センサの受光部に光を電気信号に変換する2chフォトトランジスタを搭載したもので、検知対象の移動方向を把握することが可能です。車載エアコンの風量を検知するなどの用途で用いられます。

・オートライト+日射センサ
自動車に搭載されるオートライトと日射センサは、車外の日光を検知してライトの点灯を制御します。これらの仕組みによって、日没時のライトの消し忘れを防ぎドライバーが事故に遭うリスクを下げることが可能です。

・紫外線量モニタ
紫外線量モニタは、車外から降り注ぐ紫外線量を検知してカーナビのディスプレイの明るさを調整するなどしてドライバーを支援します。

まとめ

光センサは、さまざまな物質を高い精度で高速に検知可能です。そのため製造業や家電、医療といった広い分野で活用されています。また近年は、IoTなどの技術革新に伴いセンサに求められる水準が高まっているため、光センサの活用事例も増えていくでしょう。今後も光センサの新製品は、次々に開発されていくと予想されるため、自社のニーズに適したものを検討してみてはいかがでしょうか。

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