フルノは、2023年12月13〜15日に東京ビックサイトで開催された「第8回 JAPAN BUILD TOKYO – 建築の先端技術展 – 」に出展し、当社ブース内で3日間にわたり「建設DXセミナー」を開催しました。建設DX Journalでは、セミナーのダイジェストを紹介します。
今回は、LANケーブルを減らせるメッシュWi-Fiがテーマです。セミナーでは、PicoCELA株式会社 セールス&プロダクトマーケティング部 プロダクトマーケティングマネージャー 加藤 智成氏が、建設DXに向けた同社ソリューションの最新事例について紹介しました。

強みはLANケーブル配線の最小化を中継技術で

弊社が提供するPicoCELA(ピコセラ)ソリューションは現在、かなりの建設会社様にも導入していただいており、今この瞬間も5000台くらいのアクセスポイントがどこかの建設現場でWi-Fi空間を作っています。今回は、PicoCELAソリューションが選ばれる理由や、どのような現場で使われているのかについてお話しします。
弊社はLANケーブルの配線を減らすことに着目しています。Wi-Fiを引くためのアクセスポイントという機械は皆様のご自宅やオフィスにもあると思いますが、必ずLANケーブルが挿さっています。この模式図で、LANケーブルは赤線で示されています。従来は、図の左側のようにすべてのアクセスポイントにLANケーブルが配線されています。これに対し、図の右側が弊社製品で、こちらでもLANケーブルが1本は挿さっているのですが、残りは全て、多段中継の技術によってWi-Fiを引いています。

建設DXに向けた最新事例

したがって、この技術を用いれば、電源があればWi-Fi空間をどんどん広げていくことができます。建設中の現場は、電源があったとしても、LANケーブルを配線するのは難しいと思います。しかしこのような現場で配線をしなくてもよく、建設現場の工程の進捗に応じてWi-Fi空間を作れるようなソリューションが我々の強みです。我々がPicoCELA方式と称している無線多段中継技術は独自の、九州大学以来ずっと研究開発している技術が入っています。
一般的なメッシュ方式による通信は3回の中継がだいたいの限度となりますが、弊社製品は10回ほど中継しても大丈夫です。追従性にも優れており、一般的な他社製品の場合、1台の通信が止まってしまうとネットワーク全てが停止してしまうのですが、弊社製品は仮に1台が止まったとしても、止まった機器が存在しないものとして、すぐにネットワーク状況が変わっていきます。建設現場に関わっている方はご経験があるかもしれませんが、電源が止まってしまうなど何らかの事情で1台が止まってしまうことは多いと思います。しかしこのソリューションによって、建設現場のような厳しい環境でもずっと動き続けることができます。

スキー場やメガソーラー、ロックイベント会場のWi-Fi化からはじまった

建設会社さんに採用いただくきっかけになった事例はスキー場での活用でした。過去にも紹介しましたが、GALA湯沢スキー場(新潟県)の広大な敷地のすべてを網羅しました。スキー場の照明灯から電源を取れましたので、ここに弊社アクセスポイントをポンポンと置いていくと、Wi-Fi空間を作れました。広大な敷地のためWi-Fi空間を最大で11回中継して構築しました。
現場無線LANの最前線!メッシュWi-Fiの有用性とは? | 建設DX Journal | フルノ製品情報(furuno.com)
より広いメガソーラーの造成現場では、全部で10台の弊社アクセスポイントと、ウェブカメラを15台の組み合わせで構築し、現場での見回りを効率化することに成功しました。
また、4万人が参加した大規模なロックイベントでは、設置と撤去にかかる時間が課題でした。LANケーブル配線しないことで、作業効率は高まります。この事例を建設関係の方が見て、欲しいところにだけ効率的にネットワークを這わせられるのではないかということで、ご相談をいただくきっかけになりました。

建設DXに向けた最新事例

高層ビル建設現場の生産性向上に貢献

高層ビルの建築では、だいたい10階を超えると携帯電波が入りません。高層のマンションなどでインターネットが使えるのは、完成後に基地局が入るからですね。弊社では、たとえばエレベーターが止まる階ごとにスポットWi-Fi環境を作ることから始めました。その次のステップとしては、ネットワークを活用してカメラやIoT機器をぶら下げるほかに、作業員さんの健康管理や位置情報管理、ロボット施工にも活用して頂いています。

建設DXに向けた最新事例

Wi-Fiのアクセスポイントは、接続されているスマートフォンの情報を拾っているので、情報が溜まっていきます。弊社ではその情報を解析するためのクラウドサービスを提供しており、たとえば「今38階にいる人は誰だろう」とか「あのロボットはさっきまで動いていたけれど止まってしまっている。ロボットの作業はどこまで完了しているのか?」といったこともわかります。先に挙げたスポットWi-Fiおよび全域Wi-Fi、クラウドサービスの二本柱でWi-Fi空間を作ることによってできるDXを進めています。

(事例1)高層階から降りる作業員が減り、業務効率化を実現

大手ゼネコン様の高層建築現場で、全ての場所にWi-Fi空間を作る仕事を提供しました。最大で64階建てのビルの中にアクセスポイントを4台ずつ、計250台を取り付けました。ここで分かったのは、Wi-Fi環境があることで、高層階に登っていた作業員の方が地上に降りる回数が減ったそうです。理由はシンプルで、高層階にネットワークの環境が無いと、お昼休みなどの休憩時間にネットワークが欲しいということで、わざわざ下に降りているのです。そのためにエレベーターが混雑して結果として作業効率に影響を与え、最悪の場合は工期にも響きます。でもネットワーク環境があれば、上階にはトイレもあるし飲み物もあるということで、多くの作業員さんが高層階に残ったままだそうです。こう考えるとWi-Fiはコストではない、という議論がでてきていると聞いています。

(事例2)位置情報と基幹システムの連携による生産性向上

建設DXに向けた最新事例

Wi-Fiを通じて得られた現場の位置情報の使い方については、基幹システムとつなげた事例をご紹介します。大成建設様の基幹システムに、PicoCELAの機器で集めた位置情報を連携して、「見える化」しています。この基盤によって、現場の安全管理や生産性向上に役立てています。

(事例3)衛星通信とクラウドカメラによる遠隔臨場

建設DXに向けた最新事例

最近の事例として、ネットワークに衛星通信を使う方法をご紹介します。この事例は風力発電の建設現場ですが、クラウド録画型映像プラットフォーム事業を展開するセーフィー様と共同で取り組みました。私たちの技術は「面」を作るので、「点」になるものと非常に親和性がいいのです。携帯電話の電波が入らないような場所で、Starlinkの衛星通信とWi-Fi環境を引いて遠隔臨場を実現しました。
Starlinkの登場により、これまでネットワークの構築が難しかった沿岸部や山間部といった環境でDXの推進ができるようになりました。通信圏外がなくなり、現場の全域でWebアプリケーションを活用できるようになることで、業務の生産性向上が一層高まっていくことでしょう。

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