マシニングセンタとは?基本情報やメリット・デメリット、選び方のポイントを解説
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マシニングセンタを活用すれば、切削業務を自動化できます。近年ではAIやIoTの活用により、加工プログラムの自動作成や予知保全などが可能になりました。人手不足や省力化でお悩みの方は、効果的な解決策になるかもしれません。

本記事では、マシニングセンタの種類やメリット・デメリット、選び方のポイントなどについて解説します。

目次

  1. マシニングセンタとは?
  2. マシニングセンタの5つのメリット
  3. マシニングセンタの3つのデメリット
  4. マシニングセンタの種類4つ
  5. マシニングセンタの選び方のポイント3つ
  6. マシニングセンタの将来展望
  7. マシニングセンタの導入は省力化に役立つ

マシニングセンタとは?

マシニングセンタとは、金属などの材料を切削や研削するための工作機械です。具体的には以下のような作業ができます。

  • 中ぐり
  • フライス削り
  • 穴あけ
  • ねじ立て
  • リーマ仕上げ

従来、金属は主に汎用フライス盤を用いて手動で加工していましたが、デジタル技術の進歩により自動で加工できるようになりました。CADやCAMで作成したプログラムを入力すれば自動で加工してくれるため、加工時間の短縮や省力化に役立ちます。

最近では、X・Y・Zの直交3軸に加えて、B・Cの回転2軸が加わった5軸制御マシニングセンタが普及しています。材料を多面から加工できるため、複雑な加工にも対応できるようになっています。

フライス盤との違い

マシニングセンタとフライス盤の違いは、ATC(Automatic Tool Changer)の有無です。ATCは日本語に訳すと「自動工具交換装置」であり、文字通り自動で工具を交換する装置を指します。

マシニングセンタにはATCが付いているため、切削工具を自動で交換できます。一方、フライス盤にはATCが付いていないため、切削工具は手動で交換しなければなりません。これまで金属加工に用いられていたフライス盤が進化して、ATCが付いたものがマシニングセンタといえます。

旋盤との違い

マシニングセンタと旋盤の違いは、工具と材料のどちらを回転させるかにあります。マシニングセンタは、固定した材料に回転した工具を当てて切削します。一方、旋盤は回転した材料に固定した工具を当てて切削します。

このような作業特性から、マシニングセンタは角物の加工が得意であり、旋盤は丸物の加工が得意です。また、どちらも回転対象にできる「複合加工機」という機器もあります。

マシニングセンタの5つのメリット

マシニングセンタは自動で切削工具を動かすことができます。そのため、利用者は以下のようなメリットを享受できます。

  • さまざまな切削加工に対応している
  • 精度高く加工できる
  • 品質の安定化が図れる
  • 従業員が作業しなくてよくなる
  • 作業時間を短縮できる

さまざまな切削加工に対応している

マシニングセンタには異なる工具を取り付けられるため、さまざまな切削加工を行えます。多様な加工を引き受けている企業が導入しても、対応する加工項目を減らすことなく対応できるでしょう。対応できる加工項目が少ない企業は、逆に加工の幅を広げられるかもしれません。

それに加え、1台でさまざまな加工が行えるため、必要な機器数が少なくなります。機器数が低減できれば作業スペースが広がるため、従業員の
導線が確保しやすくなるでしょう。このように、マシニングセンタはさまざまな切削加工に対応しているため、場所を確保したり作業の幅を広げたりすることができます。

精度高く加工できる

マシニングセンタは、CADやCAMで作成した設計通りに動作するため、精度高く加工できます。加工の品質が従業員の技術力に左右されないため、従業員の技術力に課題を抱えている企業でも、精度高く加工できるようになります。

また、従業員の加工技術が不要になるため、属人化を防止したり技術継承したりする必要がなくなります。よってマシニングセンタは、品質に問題を抱えている企業や、新人を育成する余裕のない企業におすすめです。

品質の安定化が図れる

マシニングセンタは、プログラム通りに動作するため個体差が小さく、安定した品質で切削加工できます。手直しの手間も削減できるため、付加価値を生み出す業務に集中できるようになるでしょう。

また、マシニングセンタを活用すれば、品質が安定化することに加え、人手が不要になるため加工業務の労力を低減できます。浮いた労力を利用してプログラム作成に注力すれば、フロントローディングも実現できるでしょう。

関連記事:フロントローディングとは? 基本概念とメリットを解説

従業員が作業しなくてよくなる

マシニングセンタは加工を自動で行うため、従業員が切削作業をしなくてもよくなります。作業中の人手が必要なくなるため、人手不足に悩んでいる企業に向いています。

また、切削加工の自動化は、労力不足を解消できるだけでなく、人件費削減や労働環境の改善に役立ちます。従業員の労働環境の改善は優秀な人材の獲得につながり、浮いた人件費を利用すればさらなるデジタル化の推進につなげられるでしょう。

作業時間を短縮できる

マシニングセンタを利用すれば、材料の向きを変えたり工具を取り換えたりする手間が省けます。これにより、従業員が作業しなければならない時間が短くなります。その結果、人員をほかの業務に充てられるようになるため、業務の効率化が図れるでしょう。

作業時間の短縮は、就業時間や納期の短縮にも寄与します。特に、切削作業がボトルネック工程になっていた企業は、リードタイムの削減に役立てられるでしょう。

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マシニングセンタの3つのデメリット

マシニングセンタは切削作業を自動で行ってくれる優秀な機器ですが、以下のようなデメリットもあります。

  • 初期費用がかかる
  • ピン角は作れない
  • 加工プログラムを作らなければならない

初期費用がかかる

マシニングセンタを導入するには費用がかかりますが、種類によっては高額になることがあります。機器本体の価格の目安は以下の通りです。

立体・横型などの小型機種~1,000万円
立体・横型などの
一般的な機種
2,000~8000万円
門型などの大きな機種
5軸制御などの高性能な機種
1億円~

実際には、導入費用のほかにメンテナンスや消耗部品の交換などの維持費もかかります。マシニングセンタは自動化や省力化が図れる有効性の高い機器ですが、導入には多額の費用がかかるのです。

経済的にプラスになるかマイナスになるかは、企業の抱えている状況にもよります。初期費用だけでなく維持費も計算に入れ、自社に導入する価値があるかを確認してから購入するとよいでしょう。

ピン角は作れない

マシニングセンタは回転する工具で材料を切削するため、隅アールが付いてしまいます。隅アールとは、直角方向に刃物が動く際にできる丸みのことです。回転する特性上、隅の外側にピン角が作れないため、ピン角にはめる材料と組み合わせる場合は、対策を講じなければなりません。

隅アールに対処するには、ニガシを作ったり横から切削したりする必要があります。ただし、こうした対策はあるものの、ニガシや底面の丸みが許されない場合にはマシニングセンタは利用できません。

加工プログラムを作らなければならない

マシニングセンタに限らず、工作機械を自動で動かすには、機械が工具をどのように動かすかの手順を記した加工プログラムを作らなければなりません。一般的にマシニングセンタの加工プログラムは、CADやCAMを用いて作ります。

製造業であれば操作できる方が多いですが、CADやCAMを動かすには専門知識が必要です。社内に操作できる人材がいなければ、外注や雇用をする必要があります。導入する際には、CADやCAMを担当できる人材を確保するようにしましょう。

マシニングセンタの種類4つ

マシニングセンタの種類は、以下の4つに分けられます。マシニングセンタは1台でもさまざまな切削加工に対応していますが、特性や得意な作業は異なります。

  • 立型マシニングセンタ|少量多品種生産に最適
  • 横型マシニングセンタ|連続加工・大量生産に最適
  • 門型マシニングセンタ|大規模な加工に最適
  • 5軸制御マシニングセンタ|曲面加工に最適

立型マシニングセンタ|少量多品種生産に最適

立型マシニングセンタとは、切削工具が地面の垂直方向に固定されている機種です。テーブルはX・Y方向に動き、工具はZ方向に動きます。加工する材料をテーブルの上に置けるため、重いものや長いものでも精度高く加工できます。

ただし、削りくずが材料の上に溜まってしまうため、切削油の量を増やすなどの対策が必要です。削りくずを除去しなければならないため大量生産には向いていませんが、少量の加工で済む場合や上面のみの加工で済む場合には最適です。

横型マシニングセンタ|連続加工・大量生産に最適

横型マシニングセンタは、切削工具が地面の並行方向に固定されている機種です。加工面と切削道具を向かい合うように設置し、工具を横から当てることで切削します。横から切削するため削りくずが落ちやすく、除去する手間がかからないメリットがあります。また、テーブルを回転すれば側面の加工も行えるため、多面加工に向いています。

側面のみの加工であれば、搬入・加工・搬出の一連の作業を自動で行えます。側面の連続加工が多い企業に最適です。ただし、立型マシニングセンタに比べて広いスペースが必要だったり、コストが高かったりする傾向があります。

門型マシニングセンタ|大規模な加工に最適

門型マシニングセンタは、切削道具を支えるコラムが門の形をしている機種です。テーブルがX方向に動き、工具はY・Z方向に動きます。テーブルの可動範囲が広いため、幅が大きい材料も加工可能です。また、テーブルに置いて加工するため、重量の大きな材料も問題なく加工できます。

ただし幅が大きいため、設置するには広いスペースが必要です。重量の大きな材料の加工が多く、設置スペースに余裕がある企業に向いています。

5軸制御マシニングセンタ|曲面加工に最適

5軸制御マシニングセンタは、名前の通り5軸方向の動きが可能な機種です。基本的に、工具はX・Y・Zの3方向に動き、テーブルはB・Cの2方向に回転します。機種によって回転軸は多少異なりますが、いずれも5軸から材料を切削できるため、複雑な加工が可能です。

ただし、5軸を制御する必要があるため、立型や門型に比べて加工プログラムの構築が難しい傾向にあります。高い技術力を維持したい企業や、複雑な加工を多く取り扱う企業に向いています。

マシニングセンタの選び方のポイント3つ

先述の通り、マシニングセンタは機種によってできることや強みが異なります。自社に最適なマシニングセンタを選ぶには、どのようなポイントに注意すればよいのでしょうか。

  • 目的の加工ができるか
  • 必要な精度が出せるか
  • 予算内に収まるか

目的の加工ができるか

マシニングセンタで最大限、効率を高められるように、自社で取り扱う全ての加工が行えるかを確かめておきましょう。一つでも対応できない加工があれば、その業務に人手を割かなければなりません。マイナーな加工がある場合は、オーダーメイドできないかを確認してみてもよいでしょう。

また、機能の確認も重要です。曲面加工を実施したいのに、X・Y・Zの3軸しか制御できないマシニングセンタを導入していては、効率が落ちてしまいます。必要な機能が搭載されているかも忘れずに確認しましょう。

さらに、マシニングセンタを動かすには、CADやCAMで加工プログラムを作成しなければなりません。製造業ではCADやCAMを扱える人材が多くいますが、念のため加工プログラムを作成できる人材が社内にいるかを確かめておくとよいでしょう。

必要な精度が出せるか

性能や種類によって精度は異なります。マシニングセンタの導入によって精度が低くなれば、品質低下により顧客が求める加工ができなくなることもあります。

先述の4つの機種の中で高精度な加工ができるのは、横型と5軸制御マシニングセンタです。必要な精度を出せるかどうかを確認してから、導入するようにしましょう。

予算内に収まるか

マシニングセンタの本体価格は、精度や機種によって大きく異なります。必要な性能や精度が搭載された機器の価格が予算内に収まるかを確認し、導入の可否を考えましょう。

金属などの材料を加工する機会が少ない企業の場合、人手で作業したほうが、コストが低く収まる可能性もあります。企業が抱える課題によって選択すべき加工方法は異なるため、自社の状況に応じて導入を検討しましょう。

また、初期費用のほかにメンテナンスや消耗品の交換などの維持費がかかることも忘れないでください。長期的にかかる費用と投資できる予算を比べながら、最適な判断を行う必要があります。

マシニングセンタの将来展望

マシニングセンタとは?基本情報やメリット・デメリット、選び方のポイントを解説
(画像=Sawitree88/stock.adobe.com)

DXやIT化により、デジタル技術を活用した機器の導入が進んでいます。マシニングセンタもAIやIoTを活用することで、さらなる効率化を実現できると考えられています。マシニングセンタの導入を考えている企業は、ただ単に購入するのではなく、AIやIoTを併せて活用してみてはいかがでしょうか。

その方法として「スマート・マニュファクチャリング」があります。スマート・マニュファクチャリングとは、データやシステムを活用して製造体制を最適化することです。これを実践しながらマシニングセンタを導入すれば、全体最適化につながり、機器導入の効果を高められます。

関連記事:スマート・マニュファクチャリングとは?実現するための取り組みや技術を紹介

例えば、マシニングセンタの稼働状況や材料の加工進捗を一元管理できれば、工場の管理業務が効率化できます。その手段には、ERPやMESなどの導入が考えられます。また、稼働状況から工具の消耗を予測すれば、予知保全が可能です。IoT化を推進すれば、工場内のあらゆる状況を可視化できるため、データに基づいた対策を講じられるようになります。

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すでに、マシニングセンタ本体へのAI活用も始まっています。マシニングセンタの製造会社であるキタムラ機械は、加工プログラムの構築から切削加工までをAIが実施できる自動運転機能を開発し、材料加工の省力化や効率化を推進しています。

とはいえ、AIの活用には問題点もあります。AIは短期間で飛躍的に発展した技術のため、活用方法や事例が不足していたり、AIを活用できる人材の確保が難しかったりします。

しかし、AIやIoTを業務で有効活用するには、早い段階からの知見の蓄積が重要です。マシニングセンタの導入を検討している場合は、工場全体のデジタル化も視野に入れながら、全体最適化を図るにはどのような手段を取ればいいかを考えてみてはいかがでしょうか。

マシニングセンタの導入は省力化に役立つ

マシニングセンタを導入すれば、切削作業時に人手が必要なくなるため、省力化に役立ちます。しかし、自社に適した機種を導入しなければ人手で行う作業が生じ、効果を最大化できない可能性があります。

導入の際には、工場全体の効率化を図れるよう、AIやIoTの活用を視野に入れながらマシニングセンタを選定してみてはいかがでしょうか。

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