IoTエンジニアとは?必要なスキルや将来性を解説
(画像=ttonaorh/stock.adobe.com)

IoT(Internet of Things)とは「モノのインターネット」を意味し、遠隔での家電操作などを可能にします。この分野で中心的な役割を担うのがIoTエンジニアです。この記事では、IoTエンジニアの具体的な業務内容や必要とされるスキル、有利な資格、キャリアパスなどについて解説します。

目次

  1. IoTエンジニアとは
  2. IoTエンジニアに求められるスキルと知識
  3. IoTエンジニアが必要とされる3つの業種
  4. IoTエンジニアに有利な資格
  5. IoTエンジニアの市場と将来性
  6. IoTエンジニアの主なキャリアパス
  7. IoTエンジニアの需要はこれからも高まり続ける

IoTエンジニアとは

IoTエンジニアとは、電化製品や産業用機器など、あらゆるモノがインターネットでつながる世界を実現するためのシステムを企画・設計・開発・運用するITエンジニアを指します。

IoTシステムの構築と運用には、組み込み技術やハードウェアとソフトウェアの知識、ネットワークやセキュリティの知識など、多岐にわたるITスキルが必要です。そのため、他のエンジニアと協力しながら業務を進めます。企画や設計を担当する人もいれば、システムが稼働した後の運用や保守を担当する人もいます。

IoTエンジニアとして活躍するためには、全体的な工程を理解し、幅広いIT知識と技術を身につけることが求められます。

IoTの概念とその理解

IoTは「Internet of Things」の略で、日本語では「モノのインターネット」と訳されます。これは、従来インターネットにつながっていなかったモノ(センサーやアクチュエーターなどの機器、建築物、自動車、家電製品、電子機器など)がネットワーク経由でサーバーやクラウドサービスに接続され、情報を相互に交換するシステムを指します。

こうしたデバイスがインターネットに接続されると、これまで見過ごされていたデータがサーバーで処理、転換、分析、連携されるようになります。このIoT技術の活用により、かつて存在しなかった高い価値やサービスが生まれる可能性があります。各種センサーやデバイス、通信インフラ、クラウドサービスの能力向上とコストダウンが実現すれば、IoTの普及が加速し、私たちの生活により身近な存在となるでしょう。

IoTエンジニアの役割と仕事内容

IoTエンジニアはその名の通り、IoTに関連するシステムや技術を開発する仕事に携わります。具体的には、制御設計やネットワーク設計、Web系ソフトウェア開発などです。また、製品の企画を行うこともあり、業務内容は広範にわたります。モノをインターネットに連携させることで新たな価値を生み出すという、未来を創るための重要な役割を担っています。

このように、IoTエンジニアは未来を創造する重要な職業であるため、その需要は非常に高いですが、現状では人材が足りていません。IoT市場が急速に拡大する中、IoTエンジニアの人材育成が追いついていない状況です。

IoTエンジニアは広範な知識と高度な技術力を必要とするため、その育成には時間がかかるのです。こうした現状から、IoTエンジニアの持つ価値がいかに大きいかがわかります。

IoTエンジニアに求められるスキルと知識

IoTエンジニアとしてのキャリアを進めるためには、JavaScriptやPythonといったプログラミング言語の知識が必須です。特定のプログラミング言語における開発経験があれば、キャリアにおいてプラスの材料となります。

IoTの領域は非常に広範であるため、IT全般にわたる知識を総合的に保有することが要求されます。学び続け、新しい情報を取り入れる姿勢が重要です。

IoTエンジニアに求められる具体的なスキルと知識は以下の通りです。

IoTエンジニアに求めらるスキル

組み込み系に関するスキル

組み込み系とは、家電製品などに内蔵されたコンピュータを管理するためのシステムを指します。

デバイスにセンサーなどを取り付け、システムが適切に機能するように作業を進めるためには、ソフトウェアやプログラミングの知見だけでなく、デバイスや基板、センサーなどのハードウェアに関する広範な知識が必要です。

ネットワークセキュリティに関するスキル

IoTの領域ではインターネットの存在が極めて重要であるため、ネットワークに関する知識が必要不可欠です。Wi-Fiや5Gといった通信技術はもちろん、BluetoothやNFCのような無線系の能力も習得する必要があります。

アプリケーションに関するスキル

多くのIoTデバイスはスマートフォンやパソコンと接続され、利用者がこれらのデバイスを介して操作指令を伝える形が一般的です。

この操作を行う際はアプリケーションの使用が主流となってきているため、アプリケーション開発についての知見も得ておくべきでしょう。

コミュニケーションスキル

IoT製品の開発プロセスは、クライアントや関連部門との意見交換からスタートします。その場面では、顧客の要望を正確に把握し適切な機能を提案するためのコミュニケーションスキルが求められます。

開発チームに対する指示も多くなるため、複数の人々と同時に業務を進めることが多くなりますが、高いコミュニケーション能力を有することで、どのような人とでもスムーズに業務を進行できるでしょう。

無料eBook

  • 製造業DXの教科書
    図版と事例でわかる|製造業DXの教科書

    世界市場での競争の激化や労働人口の減少などが進む今、日本の製造業においてDX(デジタル・トランスフォーメーション)の推進は不可欠です。 このeBookでは、製造業のDXの全体像について詳しく解説します。 DXに必要な技術を製造プロセスごとに紹介するほか、具体的な活用事例、製造業DXの今後の展望まで幅広く理解できる内容になっています。


IoTエンジニアが必要とされる3つの業種

IoTエンジニアは、主に以下のような業種で必要とされています。

医療

家庭に設置されたWebカメラやその他のセンサーによって、病院外での療養を行っている患者の健康状態を監視できるのは、IoTエンジニアの恩恵を受けているためです。これによって、何か異常があればすぐに対応したり、医師から適切な指示を受けたりできるようになりました。

これまでは、患者自身や家族が何か異常を察知した後で病院に連絡し、病院で検査を受けてから適切な措置をとる流れでした。そのため、一人でいるときや急な体調変化が起きた場合などには危険な状況にさらされる可能性もありました。

しかし、IoT技術を活用すれば遠隔で入院患者と同様の迅速な対応が可能となり、救命の機会を劇的に増やせます。特に、医師の不足が深刻な離島や無病院地域などにこの技術が普及すれば、地域住民の命を守る助けになると期待されます。

自動車産業

IoT技術を用いた自動車は、車載センサー、走行データ、道路内センサーから得られる情報を活用し、車両の運行を制御可能としています。目的地、走行速度、車間距離、信号などの要素をデータ基盤で管理することで、乗客は安全に目的地へ向かうことが可能です。

完全自動化はまだ試験段階ではありますが、自動ブレーキシステムや一定の車間距離を保つ技術などは既にIoTを通じてサービス化されており、これらに詳しい人々も増えています。このような未来志向の自動車サービスが求められる現在の自動車業界では、IoTエンジニアの存在が不可欠となっています。

IT

IoTを活用したIT業界のサービス展開は大きな広がりを見せています。例えば、タクシー配車サービスでは、アプリケーションを介して乗り場へ足を運ばずにタクシーを手配できるようになりました。

モノとインターネットを融合させたIoTサービスは今や一般的な存在となり、IT業界では次から次へと新しいIoTサービスが生み出されています。こうした状況から、IoTエンジニアの需要は高まり続けています。

IoTエンジニアに有利な資格

IoTエンジニアに有利な資格には、以下のようなものがあります。

IoT検定

IoT検定は、IoT検定制度委員会が開催する資格試験です。

この委員会は、多種多様な業界団体、企業、知識人をメンバーとし、IoT、AI、ビッグデータなどの領域における技術や知識、技能の評価を行う民間団体です。IoTに対する理解とその応用技能を明らかにし、IoTの更なる広範な普及を目指して設立されました。

IoT検定では、技術的見地、マーケティング、サービス提供、ユーザー視点から、IoTの全面的な運用に必要な範疇や技能要件を総合的に評価します。それぞれの立場でIoTの企画、開発、利用に要求される知識を証明するための資格試験です。

IoTシステム技術検定

IoTシステム技術検定は、MCPC(モバイルコンピューティング推進コンソーシアム)が主催する認定資格です。この資格はIoTシステムの構築に関わる技術者の対応能力を高めることを目指しており、IoTシステムの設計や運用に必要な知識の深さが試されます。

試験は「初級」「中級」「上級」の3つの段階に分けられ、基本的な知識の把握から実践的な専門技術まで問われます。合格すると「IoTアドバイザー(初級)」「IoTエキスパート(中級)」「IoTプロフェッショナル(上級)」の認定が受けられます。

エンベデッドシステムスペシャリスト試験

IoTを含む組み込みシステムの専門家であるエンベデッドシステムスペシャリストは、IPA(情報処理推進機構)が認定する高度な国家資格です。社会的な信頼度が高いこの資格は、取得すれば上流工程の仕事を任される可能性があり、キャリアアップの一助となるでしょう。

一般的に、エンベデッドシステムスペシャリストの業務は、クライアントの要求に対応したシステムを構築するためにチームを組んで行われます。したがって、組み込みシステムの専門知識だけでなく、開発体制の構築などチームマネージメント能力も問われます。

特定の領域における深い専門知識は品質への信頼を高めるだけでなく、競合との差別化にも効果的です。IoTの普及が期待される今後の市場では、新たな開発を計画する企業からの評価も見込まれます。

IoTエンジニアの市場と将来性

IoTエンジニアは、その幅広い知識から市場において非常に高い価値を誇っています。ソフトウェア開発とネットワークセキュリティの両方に対応可能なエンジニアはすでに価値の高い存在ですが、それよりもさらに多くの領域に対する知識を持つエンジニアは、それ以上に貴重な存在といえます。

IoT市場自体は引き続き成長を続けることが見込まれるため、IoTエンジニアの需要は今後更に増加し、市場価値は非常に高くなると予想されています。

IoTエンジニアの需要が増加した背景

近年、通信機器やセンサーの小型化・コストダウン、通信技術の安定化・省エネ化などの技術進歩により、IoTシステムの利用環境が向上しています。このような背景から、IoT技術とその費用のハードルは以前よりも低くなりました。クラウドサービスの普及、多種多様な事業者の参入、開発者向けプログラムの提供などが追加の加速力となり、IoT市場は近年急速に拡大しています。

その結果、今後も各ビジネスへのIoTシステムの導入と展開は続くと予想され、システム開発を手掛けるIoTエンジニアの求人も増え続けると考えられます。特に、技術とビジネスの両面の視点を持ち、短期間でIoTシステムを構築できるIoTエンジニアは、非常に高い評価を受けるでしょう。

IoTエンジニアの現状と将来性

IoTエンジニアは誕生してからまだ歴史の浅い職業であり、IoT技術に特化した専門家もまだ少ない状況が続いています。また、IoTエンジニアは組み込み技術からネットワーク・アプリケーション開発まで広範な知識と技術が求められるため、簡単に習得できるスキルではありません。

IoTエンジニアとして活動するための知識と技術は大変貴重であり、IoT市場全体の需要増加や人材不足を考慮すると、今後もIoTエンジニアへの需要は高まると予想されます。

IoTエンジニアの主なキャリアパス

IoTエンジニアとは?必要なスキルや将来性を解説
(画像=SUPHANSA/stock.adobe.com)

IoTエンジニアはその専門性を磨いていくことで、さまざまなキャリアパスを選ぶことができるようになります。ここでは主なキャリアパスとして、以下の3つの職業を紹介します。

データサイエンティスト

IoT分野のエンジニアとしてデータ解析の実務経験を積むことで、データサイエンティストのキャリアパスを開くことが可能です。

データサイエンティストは、IoTデバイスなどから生まれるビッグデータを解析し、その結果からビジネスに役立つ洞察を引き出すプロフェッショナルです。

既存のエンジニアリングスキルに加え、データサイエンティストとしての能力を身につけることで、同僚エンジニアや関連業務者との意思疎通をより円滑にできます。

セキュリティコンサルタント

IoTエンジニアとしてセキュリティの知識を深めることで、セキュリティコンサルタントの道に進むことも可能です。

セキュリティ技術は、IoTだけでなくECサイトやWebサービス、SNSなど、さまざまな領域で重要な役割を果たします。そのため、IoTの領域に加えセキュリティの知識も備えれば、エンジニアとしてより幅広いキャリアが築けるでしょう。

フリーランスとして独立

労働環境の変化や副業の自由化などを背景にフリーランスとして活動するエンジニアが増えており、その中にはIoTエンジニアとしてのスキルを有する人もいます。

フリーランスであれば、自身のスキルを活かしたIoT関連の案件を自由に選ぶことが可能です。これにより、自分の希望に沿った経験の積み重ねやスキルの向上が可能となります。

ただし、フリーランスの場合は、自身で案件を探したり報酬の交渉を行ったりなど、エンジニア以外の業務も自己管理する必要があるという側面もあります。

IoTエンジニアの需要はこれからも高まり続ける

IoTエンジニアとは、家電製品や産業機械など、さまざまなモノがインターネットで繋がる世界を創り出すITエンジニアです。

IoTシステムの構築および管理には、組み込み技術やハードウェアとソフトウェアの深い理解、ネットワークやセキュリティの知識など、広範なITスキルが求められます。また、さまざまな要素が業務に絡んでくるため、他のエンジニアとの連携も必要になります。

IoTエンジニアとして活躍するためには、全体的な工程の把握と、幅広いIT知識および技術の習熟が必要ですが、IoT市場が今後も成長を続けることを考えれば、IoTエンジニアの需要はさらに増え、その市場価値は高まり続けるでしょう。

【こんな記事も読まれています】
【会員限定動画】サプライウェブで実現するマスカスタマイゼーション時代の企業戦略
製造業における購買・調達業務とは?課題の解決方法も紹介
ビジネスや技術のトレンドに反応しながら進化を続けるCRMの事例を紹介