製造業DXにおけるデータ活用のポイント
(画像=mapo/stock.adobe.com)

目次

  1. アフターコロナはさらに労働力減少が顕著になる
  2. まずは製造工程をデジタル化(数値化)する
  3. 単体のデータだけを集めてもあまり意味がない

アフターコロナはさらに労働力減少が顕著になる

新型コロナウイルスの世界的な流行により、製造業に限らず世の中の仕組みや習慣は大きく変化せざるを得なくなりました。

これまでも日本の製造業においては少子高齢化が進むことによる労働力減少が危惧されていましたが、新型コロナウイルスの影響により、「人と接しない仕事がしたい」という労働者が増え、製造現場での人手不足は残念ながらさらに加速していくことになるでしょう。

製造業においては、労働力減少を補うためにさらなる生産性向上が不可欠となっています。また、これまで「職人技」と鋭い感覚で製造現場を支えてきてくれたベテラン職人が高齢化していることも多く、その方たちがリタイアしてしまう前に、暗黙知だったノウハウを形式知に変えていくことも必要です。

まずは製造工程をデジタル化(数値化)する

製造業のデジタルトランスフォーメーション(DX)というと少し仰々しく聞こえるかもしれませんが、スタートはまず、重要な製造工程はすべてデジタル化(数値化)してデータに落とし込む、というところから始めても良いかもしれません。

例えば鋳造や射出成形の現場があるとしましょう。

鋳鉄を溶かして砂型に流し込むという作業を行う場合に、ベテランの職人さんならば、鋳鉄の温度が適温になったことを「鉄が音で教えてくれる」と言いながら、最適温になった瞬間を肌感覚で感じ、一気に砂型に流し込むというワザを持っているかもしれません。

でも実はこの作業も、最適温になった瞬間に鋳鉄から出てくる音が微妙に変化することを聞き漏らさずに、「鉄が教えてくれた」と表現をしている場合もあります。
製造業がデジタルトランスフォーメーション(DX)に取り組むためには、まず、これらの感覚で行っている作業をすべて数値化すれば良いのです。

鋳鉄を砂型に流し込む際の最適温は何度なのかは、職人さんが「音がする」と言って動き始めた瞬間の温度を計測しておけば良いでしょう。

溶けた湯を砂型に流し込む際のスピードや角度、また砂型のどの部分から最初に湯を流し込むかなども、しっかりとデータや動画に残し、マニュアルにしたり自動化をする際にデータに反映したりすることをおすすめします。

射出成形の場合は、金型を交換する際に、金型自体が熱で温められ膨張しているとスムーズにセットできない場合もあります。このことを防ぐために、「金型は#### 度以上になる場所に保管したり放置したりしないこと」などとしっかりと数値化しておくと良いですね。

ホットメルト射出成形時には、樹脂注入後何秒で取り出すのがベストなのかを、データではなくベテラン職人さんの肌感覚に頼って行っていることもあります。ベテラン職人が「今日は少し寒いから3秒ほど長めにしておいた」などと言っている場合は、その日の室温や湿度、樹脂注入後の成形秒数を記録しておくことで、製造環境に応じてベストなアウトプットを生み出せる状況を再現できるでしょう。

そば打ち名人が感覚で行っているそば打ちも、実はすべての工程をデジタル化(数値化)することで、かなり高い確率で再現することができるそうです。

製造現場における工程も、ベテラン職人さんが現役の内にしっかりとその製造ノウハウをデジタルデータに落とし込み、デジタルトランスフォーメーション(DX)に取り組む際のベースとしていきましょう。

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単体のデータだけを集めてもあまり意味がない

上記のようなことをお伝えすると、「とにかく何でもデータ化してやろう」とやっきになってデータ収集をされ始める方がいらっしゃいます。もちろんデータは多いに越したことはありませんが、大切なことは、そのデータを活用しやすいように、集約・加工することと言えます。

製造現場においては多品種少量化が進んでいるため、日々生産工程や設備が変更になります。また、工場内には多種多様な設備やハードウェアがあり、業種によっても使用されている設備が異なります。

データを蓄積する際は工場内にある様々な設備をIoT化して、設備を制御しているCNCやPLC、各種センサーとゲートウェイが通信することでリアルタイムにデータを取得、蓄積していくことが重要です。これにより、蓄積したデータを有効活用しやすくなります。

ITを活用したソリューションならば、人が行ってきた作業をシステム化することで作業にかける人を減らし、さらに高い生産性を実現できます。データを活用して、さらに生産性の高い製造業務を実現しましょう。

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