2022年版ものづくり白書から学ぶ、製造業が取り組むべき施策とは?
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「2022年版ものづくり白書」が、2022年5月に公開されました。ものづくり白書は「ものづくり基盤技術振興基本法」に基づく法定白書であり、経済産業省・厚生労働省・文部科学省の3省が毎年共同で作成・公開しているものです。

2022年版では、日本の製造業の現況が紹介されているほか、カーボンニュートラルやDX(デジタルトランスフォーメーション)に関する動向・事例がまとめられています。本コラムでは、2022年版ものづくり白書を基に、日本の製造業の現状と、現状を打破するための2つの重要な施策について紹介します。

目次

  1. 日本の製造業の足下の状況
  2. これからの製造業が取り組むべき施策とは?
  3. 自社の競争力向上に取り組む企業の方へ

日本の製造業の足下の状況

まずは、2022年版ものづくり白書の第1部第1章を参考にしつつ、日本の製造業の足下の状況について紹介します。

製造業の業績動向

製造業は2020年時点で日本のGDPの約2割を占めており、今でも中心的な業種の一つです。製造業を対象にした業績調査によると、2020年には約7割の事業者で売上高・営業利益ともに減少傾向となっていましたが、2021年の調査では半数近くの事業者が回復に転じています。また、今後3年間の国内外の売上高や営業利益の見通しについても、「増加」と「やや増加」の割合が増えており、前年度の調査に比べると回復傾向にあります。

しかし、本白書内では、日本の製造業の稼ぐ力が欧米企業より弱い傾向にあることも指摘されました。たとえば、日本・アメリカ・EUの製造事業者を対象に2017年から2020年度の営業利益率の平均値を比較すると、日本が約4%程度なのに対して、アメリカは約7%、EUは約6%と比較的高い水準にあります。また、日本では設備投資をはじめとする有形固定資産への投資は積極的に進められているものの、無形固定資産や研究開発への投資がアメリカ・EUに比べて少ない傾向にあります。

本白書ではこうした状況を踏まえ、今後も続くと考えられる事業環境の変化に対応するために、日本企業も稼いだ利益を元にして積極的かつ効率的に投資し、稼ぐ力を高めていくことが重要であると述べられています。

製造業を取り巻く社会情勢の変化

2021年は新型コロナウイルス感染症の感染拡大に加えて、原材料価格の高騰や人手不足、部素材不足といったさまざまな社会情勢の変化があり、製造業の事業に大きな影響を及ぼしました。

たとえば、原油の価格は2021年後半からすでに上昇傾向にありましたが、ウクライナ情勢の影響でさらに高騰しており、素材系の製造業を中心に生産コストの増加を引き起こしています。このままでは、製造業の利益が圧迫されてしまうでしょう。日本政府は原油価格の高騰に対してさまざまな対策を講じていますが、企業自身の取り組みも重要です。業務効率化によるコスト削減や、付加価値向上による値上げなどによって、利益を確保する動きが活発化すると考えられています。

また、部素材不足の中でも日本の製造業へ特に大きな影響を与えているのは、半導体不足です。今もなお続いている半導体不足の影響で、自動車、輸送用機器、電機・電子といった業種はもちろん、石油・ゴム製品、非鉄金属といった業種までマイナスの影響を受けている状況です。日本政府は半導体を始めとする重要な部素材の国内サプライチェーンを強靭化すべく、国内での生産拠点の整備を支援しています。しかし、部素材不足についても、各企業が自社のサプライチェーンの強靭化に積極的に取り組んでいく必要があるといえるでしょう。

2022年版ものづくり白書から学ぶ、製造業が取り組むべき施策とは?

これからの製造業が取り組むべき施策とは?

上述したように、日本の製造業はさまざまな社会情勢の変化にさらされています。こうした変化に対応し、製造業が競争力を高めていくためには、どのような取り組みを進めればよいのでしょうか。ここでは、2022年版ものづくり白書を参考にしながら、「サプライチェーンの強靭化」と「DXによる競争力向上」という2つの取り組みをご紹介します。

サプライチェーンの強靭化

原材料価格の高騰や部素材不足に直面したことで、製造業におけるサプライチェーンの強靭化は今まで以上に重要な取り組みとなっています。

2021年度に行われた調査によると、多くの企業は強靭なサプライチェーンを構築すべく、「調達先の分散」「国内生産体制の強化」「標準化・共有化・共通化の推進」などの取り組みを進めると回答しています。2020年度に行われた同様の調査結果と比較すると、「国内生産体制の強化」と回答した割合が約2割から4割へ増加しており、国内でサプライチェーンを強靭化しようという意識が高まっていることが伺えます。

サプライチェーンの強靭化については、「2021年版ものづくり白書」でもその重要性が示されていました。「2021年版ものづくり白書」では、製造工程間でのシームレスなデータ連携や企業間での安全なデータ共有を可能にするデジタル技術の活用が効果的な施策であることが述べられており、その具体例として、CCTが技術開発を進めている新しい「3Dデジタル・エンジニアリングチェーン」が紹介されました。

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DXによる競争力向上

近年、企業が対応すべき新しい社会課題が増えていることから、DXの重要性が改めて叫ばれています。社会課題の中には、カーボンニュートラルのように組織や企業の壁を超えて連携しながら取り組む必要があるものも多いため、データ収集・分析・共有ができる仕組みを構築していかなくてはなりません。データの活用は社会課題の解決に役立つだけでなく、設計開発や生産管理などの効率を高め、競争力を向上させるのにも役立ちます。

「2022年版ものづくり白書」では、製造業の競争力を向上させるためのデジタル技術として「5G」と「MES」が紹介されています。

5Gの「低遅延」「高速大容量」という特性を生かせば、さまざまな機器の制御をクラウド上で実行できるようになります。また、「同時多数接続」の特性によって、さまざまな生産設備やセンサーから同時にデータを収集することも可能です。

MES(製造実行システム)は、製造工程の把握や管理、製造現場の作業者への指示などを行うシステムであり、製造現場のあらゆるデータを蓄積するのに役立ちます。ERP(経営資源管理システム)で管理されている生産計画などのデータとMESのデータを連携させれば、AIで最適な稼働・制御条件をシミュレーションし、リアルタイムで製造現場にフィードバックすることで、生産の最適化を実現することが可能です。

自社の競争力向上に取り組む企業の方へ

今回は、2022年版ものづくり白書を参考にしながら、日本の製造業の現状と、これからの製造業が取り組むべき2つの施策について解説しました。社会情勢の変化にさらされる中でも競争力を発揮していくために、本コラムで紹介した「サプライチェーンの強靭化」と「DXによる競争力向上」に取り組んでいただければ幸いです。

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