本記事は、データ総研の小川康二氏と伊藤 洋一の共著『 DXを成功に導くデータマネジメント データ資産価値向上と問題解決のための実務プロセス75』=株式会社翔泳社、2021年12月20日発行の中から一部を抜粋・編集しています。
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データ活用ツール導入だけが先行するリスク
データ活用を実践し始めた企業にインタビューをすると、「高価なデータ活用ツールを導入したが、思ったような効果が出ていない」という話をよく耳にします。
残念ながら、いまだに多くの企業では「データ活用ツール」さえ導入すれば、何かしらの業務効果が得られる、という幻想を抱いているようです。
そもそもデータ活用ツールの導入によって、どのような効果が得られると想定していたのでしょうか?
今は「DX推進」という錦の御旗のもとに「ツール導入により全体の効率化が〇%進む」という皮算用で導入が決定するケースが散見されます。
このように、目的がデータ活用ツールの導入になってしまっているのです。本来の目的はDX推進に向けた業務改革です。データ活用はその一環であり、ツール導入は実現手段の1つでしかありません。
データ活用ツールはあくまで道具
「データ活用が推進されないのは、ツールがないからだ。ツールを導入することで活用を推進するのだ」というお話もよく耳にします。また、「高額なツールを導入したのだから、ちゃんと使いなさい」という論調も多いように思います。
しかし、現場のニーズをヒアリングすることもなく、ツール導入が先行しているのであれば、導入したところで誰も使ってくれません。それ以前に、そもそも使い方がわからないので、活用のしようがないのです。
データ活用は、新しい業務です。
どのように業務を実践し、データ分析を行うのかをビジネスサイド、ITサ イドが、ツール導入に先立ち、しっかりと検討しておく必要があります。
データ分析の最終ゴールは「将来の予見」である
われわれが「事実」として知ることができることは、過去に何があって、現在どうなっているか? ということだけです。
過去と現在の事実を知ることで、将来どうなるのか? を予見することこそ が、データ分析に求められることです(図6.2.1 )。
仮説検証型アプローチを実践する
ここにデータ分析の現場で散見される「あるある」があります。
Point! データ分析あるある
- データを分析さえすれば、何かしらのインサイトが得られる、と本気で思
- っている
- インサイトが得られないのは、分析の仕方に問題があると考えている
優秀なデータ活用ツールが示すグラフや図は、確かにいろいろな情報を示唆してくれます。しかし、得られた情報だけを頼りにしていては、それをどう解釈するかはデータ活用者次第になってしまいます。
誰もが納得するインサイト(洞察)を得るためには、科学的な「仮説検証型アプローチ」を取ることが重要です(図6.2.2 )。
進め方は単純です。
はじめに目的・課題を設定し、仮説を立てます。その仮説を立証するためには、どのデータを見れば良いかをひたすら考えます。このアプローチで一番重要なステップとなります。
次にデータを収集し、調査を行います。ここは機械的な作業になります。データ活用ツールで実現できる領域です。
そして、現状調査の結果を仮説と比較し、仮説が正しいか、部分的に正しければどこが正しく、どこが正しくないのかを検証することで、インサイトを探ります。
最後に、仮説検証の結果を振り返り、次にどのような目的・課題設定をし、新たな仮説を立てるべきかを検討します。
データ分析の結果得られるデータは「将来の予見」となるため、「絶対解」はありません。あるのは「確からしさ」です。
この「確からしさ」をより精度高く証明し、関係者に納得してもらうことが重要となります。そのためにも、「振り返り」から新たな「目的・課題設定」につながるサイクルをしっかりと回し、精度を高める必要があります。
アウトプットから考える
今あるデータをうまく組み合わせて、新たなインサイトを探りたいという気持ちはよくわかります。しかし、その組み合わせは無限に近いです。
「仮説検証型アプローチ」を取るということは、インプットをどう組み合わせれば良いかと考える前に、アウトプットを先に決めることに他なりません(図6.2.3)。
データ資産価値向上と問題解決のための実務プロセス75
「データ駆動型経営」を絵に描いた餅にしないためにはどうすればいいのか、 現場の担当者向けに「実現できる内容」で詳しく説明しています。
著者は、10年前からデータマネジメントの普及に携わってきたデータ総研の皆さん。 企業がDXに失敗する理由にも触れながら、実務に役立つ成功法則を紹介しています。
【本書の想定読者】
・DXが目指すところはわかったけれど、具体的に何から始めればいいのかわからない方
・データが社内で散在、混乱していて、データ活用の手前で躓いているDX担当の方
・DXがスムーズに進まない、挫折しそうで困っているDXチームのリーダー
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