仕事に対する姿勢や高い能力が評価され、コンサルは転職市場で高い評価を受けています。待遇や働き方を改善したいと考えている方は、転職することでより理想の労働環境を手に入れられるかもしれません。
目次
コンサルタントは転職市場での評価が高い
高い能力を持つコンサルは、以前から転職市場で高い評価を受けていました。さらに近年、コンサルの中途採用に消極的だった大手日系企業もコンサルの中途採用を積極的に始めたこともあり、コンサルの転職市場は広がりつつあります。
また、スタートアップ企業における2022年の資金調達金額が過去最高の8774億円を記録するなど、ベンチャーや中小企業の資金力も右肩上がりの傾向にあります。そのため、好条件でポストコンサル(コンサルからの転職者)を採用できる企業が増えています。
このような背景から、労働環境の良い事業会社に給与を維持して転職している方もいます。実績があるコンサルは、予想以上の条件で転職できるかもしれません。これだけコンサルが評価されるのには、いくつかの理由があります。
コンサル出身者が評価される5つの理由
コンサルが転職市場で評価が高いのは、ビジネスにおいて重要な「経営力」や「コミュニケーション能力」などが高いためです。本章では、コンサル出身者が評価されている5つの理由を紹介します。
1.経営力がある
コンサルは、企業が抱えている経営問題を解決するために、顧客企業の経営者層と経営について話し合っています。コンサル以外の事業会社では、若いうちから会社の経営に関わることはまれですので、経営力はコンサルが持つ強みと言えるでしょう。
また、コンサルは多業種の企業の経営状況を深く解析しているため、どのような性質をもつ企業が軌道に乗り、何をすると失敗するのかなどの事例を多く見ています。そのような経験を持つ人材が社内にいれば、新たな施策の成功率を上げ、経営リスクを下げられます。
2.課題解決力がある
コンサルは、経営に特化した課題を解決するのが仕事です。経営という正解のない課題に常日頃から取り組んでいるコンサルは、「課題を見つける能力」「課題を解決するための道筋を立てる能力」の高さが評価されます。
これに対し、事業会社で働いている方は、40代や50代にならないと経営問題レベルの大きな課題に向き合う機会がほぼ与えられません。そのため、若い年齢から会社全体を見て様々な経営課題を解決しているコンサルは、非常に重宝されます。
3.統率力(リーダーシップ)がある
コンサルは、企業内の問題点を見つけて経営戦略を立て、施策をクライアントに納得してもらい、結果が出るまで経営戦略のリーダーとして企業を引っ張ります。これらを行うには、高度なリーダーシップが必要です。
例えば、企業全体を見る力や、戦略を納得してもらうための説明力、社員と良好な関係を保つためのコミュニケーション能力などがあります。コミュニケーション能力はビジネスで最も重要視される能力の一つですので、転職市場でも高い評価を受けます。
4.高いプロ意識を持っている
コンサルは、資格を生かして仕事をするのではなく、自分の思考や戦略といった「個々の能力」を生かして仕事をします。そのため、多くのコンサルは結果を出すために常に最善の努力をし、時にはプライベートの時間を削って経営戦略を練る方もいます。
また、経営戦略を練る上で企業にもたらされる金額も目にすることも一因でしょう。たとえ中小企業であっても、コンサルティングが成功すれば、企業には非常に大きな金額がもたらされます。
その他にも、給与の高さや経営陣との関わりなど、自身が大きな役割を担っていると感じる場面が多い職業です。そのため、コンサルは高いプロ意識を持った方が多いと言えるでしょう。
5.コミュニケーション能力が高い
コンサルはただ単に経営戦略を立てるだけでなく、それを経営陣や社員に伝え、納得してもらわなくてはいけません。わかりやすく戦略を伝えるためには、高い論理的思考力や言語能力が必要です。
また、戦略を実行する上で、経営陣や社員と良好な関係を築かなければなりません。そのため、ビジネスパーソンとやり取りすることが多いコンサルは、クライアントと良好な関係を築くための高いコミュニケーション能力を持っています。
コンサルタントのキャリアアップに選ばれる転職先
コンサルはほぼ全ての業種で必要とされているため、多くの転職先があります。本章では、多くのコンサルが選択する転職先を6つ選択します。
<コンサルに選ばれる転職先>
・大手日系企業
・外資系企業
・ベンチャー企業
・PEファンド
・他のコンサルティングファーム
・独立・起業
大手日系企業
近年コンサルの転職先として、製造業を始めとする日系の大手事業会社が選ばれるようになってきました。従来日系企業は、社風や年功序列の強さからポストコンサルに人気のある転職先でありませんでしたが、競合企業への対抗戦略打ち出しや海外進出の際にコンサルを活用する企業が増えてきました。
大手日系企業では、コンサルの主要な業務である経営の課題点発見のほか、社内のDX推進や海外進出の戦略立案などを任されることが多いです。
一般的にコンサルの給与水準よりも低い傾向にあるため、報酬は下がる傾向にありますが、労働時間が減ったり固定の休みを貰えることが多いため、ワークライフバランスを改善したい方におすすめの転職先です。
外資系企業
外資系企業は以前からコンサルを積極的に採用していたこともあり、コンサルの転職先に昔から選ばれています。外資系企業は世界各地に拠点を持つ企業が多く、世界の最先端を行く事業に関わることが可能です。
外資系企業では、勤務国における経営戦略や世界規模での経営戦略を任されます。海外の社員とやり取りすることもあるため、ビジネスレベルの英語が必要となりますが、その分大きな規模のプロジェクトに関われる機会が増えるでしょう。
高い資金力を持つ企業が多いため、コンサル業界からの転職でも給与が上がったという方も多くいるようです。また、働き方が自由な企業が多く、実績や技術があれば年齢層が高くても受け入れられやすいというメリットがあります。
ベンチャー企業
特に20代のコンサルに人気があるのがベンチャー企業への転職です。ベンチャー企業は資金力が乏しいと思われる方もいるかと思いますが、資金調達能力が優れている企業であれば高い給与水準で雇えることも増えてきているようです。
ベンチャー企業では、経営に関するある程度大きな裁量権が与えられ、起業家や経営陣と共に会社を成長させていくことが求められます。また、ベンチャー企業は特定の業種にこだわらずにあらゆる社会問題を解決するために仕事をする傾向にあるため、幅広い分野のコンサルティング能力が要求されます。
労働時間や休暇が増える傾向にはありませんが、若いうちから裁量を与えられる転職先ですので、自分の意志で会社を大きく動かしたいという方におすすめの転職先です。
PEファンド
PEファンドは、コンサルで得た経営経験を実践できる場として、ポストコンサルの転職先の一つに選ばれています。コンサルはアドバイスや提案を行って経営改善を促しますが、PEファンドでは自身の判断で実際に会社を動かせるため、やりがいを感じやすい職種です。
PEファンドは企業を「安く買って高く売る」ことで利益を出しています。どれだけ企業価値を高くできるかは、PEファンドに在籍するコンサルの技術次第で大きく変わりますので、何よりも結果が求められます。
そのためには、顧客となる企業探しから企業の価値評価、経営改善から売却(EXIT)するまでの一連の能力を全てハイクオリティにこなす能力が必要です。高い能力が求められるため狭き門ではありますが、高い給与に加え、結果に対するインセンティブが受け取れるなどの大きなメリットもあります。
他のコンサルティングファーム
コンサルはやめなくても良いが、ポジション・給与・労働時間のどれかを改善したいと考えているのなら、別のコンサルティングファームに転職するという手もあります。他にも、人間関係やトラブルなどのトラブルを抱えている方は、同業への転職を考えても良いかもしれません。
また、専門性を高めたいと考えている方は、特定の分野に特化したコンサルティングファームを選択すると良いでしょう。特に、将来的に事業会社への転職を考えているのならば、該当する事業のコンサルティング業務を担当しておくと転職で有利に働くかもしれません。
独立・起業
ポストコンサルの選択肢として、起業を選択する方も増えてきました。コンサルを通して培った技術や経験をフルに生かし、全て自分の裁量で物事を進められます。コンサルで培った能力を最大限生かせる機会になります。
また、コンサルタントのフリーランスとして独立する選択肢を取る方もいます。これまで仕事をする中で関わってきた方とのコネクションや、高い地位に就いた実績があれば、個人でも仕事を取ることは可能です。
ただし、起業や独立で成果を収めるためには、コンサルで得た経営知識の他に、基本的な業務遂行能力や該当分野の深い知識、優秀な社員を採用する能力など、コンサル業務以外の能力も必要になります。これらを軽視せずに十分な準備をしておけば、コンサルで培った経営能力を最大限生かすことができるでしょう。
コンサルの年代別キャリアパス例
コンサルの転職先は、経験や年代によって異なる傾向にあります。ここでは、20代、30代、40代以降の方がどのようなキャリアを選択できるのかを解説します。
20代はベンチャー企業やコンサルファームが多い
20代のコンサルは、より良い待遇を求めて別のコンサルティング会社に転職したり、ベンチャー企業の経営コンサルとして転職することが多いです。他には、PEファンドや安定を求めて大手日系企業に転職する方もいます。
しかし、20代はコンサル経験年数が浅いことや、十分な実績を積めていないことから、大企業に転職しても裁量が十分に与えられないことが多いです。そのため、まずはベンチャーやコンサル業界で実績を積む選択をされる方が多い傾向にあります。
30代は外資系や大手日系企業も視野に入る
30代になると、コンサルティングの経験が豊富になり、転職先に提示できる実績も豊富になってきます。そのため、スタートアップなどのベンチャーの他にも、外資系や大手日系製造業の経営幹部候補として転職できるようになります。
また、経営に関する知識がついてきたことから、起業して自ら事業を始めるという方もいます。コンサルとしての経営技術があり、まだまだ働ける年代であるため、多くの転職先候補から選ぶことができるでしょう。
40代以降は多くの業種で役員レベルの転職が可能に
40代以降になると、コンサル業界の中でも役員レベルに就いている方が増えてきます。経営に関する事業に長年関わっているという実績から、大手日系企業や外資系企業に役員レベルで転職することも可能です。
一般的に、40代以降の転職は厳しいと思われていますが、コンサルの場合は経験や実績からくる能力があれば、勤続年数が短くても会社に大きなメリットをもたらすことができます。そのため、就きたい役職によっては年齢を重ねなければ得られない経験年数がプラスに作用する場合もあるようです。
しかし、ほとんどの業種はコンサルの給与水準より低いため、事業会社に転職した場合は給与が下がる傾向にあります。特に、大手日系企業やベンチャー企業では、コンサル勤務時の給与以下となることが多いです。そのため、給与を重視する方は、コンサル業界の役員として転職する方も多いです。
コンサルから転職する際に見るべき5つのポイント
<転職の際に見るべきポイント>
1.収入
2.勤務時間
3.企業の事業内容
4.業務内容
5.社員の仕事への向き合い方
1.収入
コンサル業界は給与水準が非常に高いため、事業会社に転職した場合は年収が下がる傾向にあります。特に、配偶者やお子さんがいる方は妥協できない点だと思いますので、あらかじめ「どこまで下がっても良いか?」の線引きをしておくと良いでしょう。
また、事業会社はインセンティブがない場合も多いため、コンサル業界から転職するとモチベーションが低下してしまう可能性があります。給与額だけでなく、給与形態も確認するようにしましょう。
2.勤務時間
特に大手企業に転職した場合は、固定の休日が確保できるようになったり、残業がなくなったりと生活面で大きな余裕を生み出せます。休日返上で勉強している方が多いコンサル業界と比較すると、ゆったりとした生活を送れるでしょう。
大手日系企業は、「ノー残業デー」や「未経験者の育成」などを社員に寄り添った制度を掲げ、働きやすさを追求している会社が多いです。プライベートの時間を大切にしたい方は、休日数や残業時間などを軸に考えてみてください。
3.企業の事業内容
コンサルとしてよく携わっていた事業内容や興味のある業種であれば、ある程度の前知識があるため仕事に取り掛かりやすいでしょう。「この業界で働きたい」という強い意志があれば、チャレンジしてみるのも手です。
特に、事業会社への転職であれば、定年までその業界に携わる可能性もあります。少しでも興味の持てる分野に転職すると、日頃のリサーチが楽になります。
4.業務内容
「思っていた仕事と違う」とならないよう、入社後の業務内容は詳細に調べましょう。特に大手事業会社の場合、経営方針に関わる裁量を今までよりも与えられない可能性もありえます。
転職先の雰囲気や社員の性格まで知ることは難しいですが、より理想の転職先を見つけるためにも、転職サイトの口コミや担当社員に転職先の雰囲気を聞いてみるなど、情報収集は怠らないようにしましょう。
5.社員の仕事への向き合い方
コンサル業界は、ワークライフバランスよりもどれだけ結果を残せるかに焦点を当てている企業が多いため、他の業種と比較すると働く意欲が高いです。ただし、残業なしやワークライフバランスの良さを謳っている企業の社員は、働く意欲が低い場合もあります。
コンサル業界で厳しく鍛えられた方にとっては、そのギャップが想像以上に大きい場合があるため、転職する際には注意です。実際に働いている社員のリアルな声が書き込まれている転職サイトもあるので、ギャップをできる限り小さくするためにも、多くのプラットフォームに登録して情報収集することをおすすめします。
コンサルから転職する際の3つの注意点
転職する企業の性質以外にも、転職するタイミングや事業会社特有の性質など、業界が変わる際に注意すべきポイントがいくつかあります。
転職するタイミングを逃さない
転職する多くの方は中途採用となりますが、新卒採用と違って一定の時期に一定人数を取っている会社はほぼありません。役職の空きに応じて採用する企業が多いため、良い求人を逃さないためにも、常にアンテナを張っておく必要があります。
また、現職のコンサルティングファームで、長期プロジェクトが始まってしまうと、途中で転職しづらかったり、引き継ぎが面倒になったりと、自他ともに迷惑を被ることになります。日頃から転職のアンテナを張りつつ、タイミングを伺いながら転職活動をするようにしましょう。
事業会社への転職は年収ダウンを覚悟しておく
コンサル業界は給与水準が非常に高いため、ある程度の役職に就かない限りは年収が下がります。特に、20代で大手企業に転職する場合は、同期と変わらない条件で雇用されることもあります。
コンサル業界であれば年収1,000万円も20代のうちに達成できますが、日本全体で見ると年収1,000万円以上を受け取っている方は5.9%しかいません(給与所得者のみ。「令和3年分 民間給与実態統計調査(厚生労働省)」より)。
コンサル業界の給与水準が高いがゆえに、大幅な給与ダウンが多い傾向にありますが、勤務時間や残業時間などと照らし合わせるとむしろ割が良かったという場合もあります。ただし、ある程度の年収ダウンは覚悟しておきましょう。
異動や転勤がある
全国に支社がある企業は、数年ごとに異動を命じられることがあります。コンサルは基本的に出張で遠方顧客の対応をすることが多いですが、異動が多い会社だと生活の基盤が短いスパンで変わります。
異動や転勤の有無は正確に返答してくれる企業が多いですので、事前に確認しておくと良いでしょう。
まとめ|強みを生かせばキャリアアップを十分に狙える
コンサルは、豊富な経営経験や高い能力から、転職業界では高い評価を受けています。そのため、転職活動を始めるとすぐに良い条件が見つけられるかもしれません。他にない強みや実績があれば、予想以上の条件が何社からも提示される可能性もあります。
しかし、転職する際には「何を求めて転職するのか」を見失わないようにしてください。能力を上げたくて転職活動を始めたが、一番の決め手が給与の高さだった、という選択もなしではありませんが、能力を高められていれば、結果的により高い給与を得られていたかもしれません。
自分の持っている強みを生かしつつ、転職する目的を見失わないようにすれば、満足できる転職がかなうでしょう。
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