製造業における業務プロセスとは?改善する方法についても解説
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製造業における業務プロセスにはいくつかのステップがあります。業務の改善や生産性を上げるためには、各工程について深く理解しなければなりません。また、近年では製造業のデジタルトランスフォーメーション(DX)が推進されていますが、ITシステムを導入し既存の課題を解決するためには、まず各プロセスの状況を詳細まで把握し、分析する必要があるでしょう。

そこで今回は、製造業における業務プロセスについて紹介いたします。製造業のDXについても触れるため、ぜひ参考にしてみてください。

目次

  1. 製造業の基本的な業務プロセス
  2. 業務プロセスにおける課題
  3. 製造業におけるプロセス管理の重要性
  4. 製造業の業務プロセスを改善する方法
  5. 製造業におけるDX
  6. 製造業がDXを推進するメリット
  7. 製造業がDXを推進する際の注意点
  8. 自社の業務プロセスを改善しよう

製造業の基本的な業務プロセス

製造業の業務プロセスは細分化されていますが、大きく5つの工程に分けることができます。業務の効率化を目指したり生産性を向上したりするためには、それぞれのステップを把握・理解し、課題を洗い出し、適切に進捗管理する必要があります。ここでは、まず製造業の基本的なプロセスを紹介いたします。

製造業の業務プロセス

受注管理

製造業の業務プロセスのスタートは「受注業務」です。生産部門ではなく営業部門や販売部門が主となり、顧客からの注文を受け付けます。このとき、顧客が発注する商品の種類や数量をもとに見積もりを提出し、受注契約します。生産部門は販売部門から共有された受注内容を適切に管理することが必要です。

生産計画

受注管理の情報をもとに、顧客の納期などの要望と工場の設備、稼働状況、人員などの生産能力を考慮して生産計画を立てます。この生産計画を立てた後に、実際に商品の製造に取り掛かるのが一般的な流れです。

このとき、適切な生産計画を立てないと、工場などの生産施設の稼働が空いてしまったり、反対に生産能力を上回ってしまったりする可能性があるため注意が必要です。生産計画はスケジュールだけでなく、原材料などの在庫状況や完成品を保管している倉庫の空きスペースなど、さまざまな要素を考慮することも重要です。

生産

生産計画をもとに、適切に商品を製造できるように現場に生産指示を行います。製造業といっても、作る商品の種類はさまざまであり、ラインや工程によっては数時間で完成するものもあれば、数日・数ヵ月かかることもあるでしょう。

現在では、多くの生産現場が機械化されていますが、人の手が介入するプロセスはまだ多いのが現状です。複雑な工程を適切にクリアするためには、生産計画に基づいた正確な生産指示が必要になるでしょう。生産指示は同時並行で生産計画・在庫状況・実際の生産結果・進捗具合といった要素を把握しなくてはいけないため、非常に重要なプロセスとなります。

出庫

商品の製造が完了した後は、顧客の希望に合わせて納品する必要があるため、出庫指示を行います。出庫指示には、出庫指示書や納品書などの書類を作成し、出庫を担当する部門に引き継ぎます。

このとき、顧客が複数おり、倉庫内にさまざまな商品が保管されている場合、納期が早いものが倉庫の奥側にあると、スムーズに出庫できません。そのため、生産計画を考える際は、出庫のスケジュールも考慮し効率良く出庫できるようにしましょう。

出荷管理

出庫後は顧客のもとへ商品を届けます。この出荷管理が製造業の基本的な業務プロセスの最後のステップです。製造業は生産するだけでなく、顧客のもとへ商品を届けるまでが役割であるため、出荷状況なども管理しなければなりません。

出荷した商品の数量や状態、輸送中の場合は位置情報を把握する必要があります。これらの情報を適切に管理できていないと、輸送ルートにトラブルが発生した際に対応できず、納期に遅れてしまう可能性があります。

進捗管理

受注管理から出荷管理まで大きく分けて5つのステップがありますが、同時並行で進捗管理も適切に実行しなければなりません。ただし、販売部門・生産部門・物流部門のように、生産プロセスにはさまざまな部門が関わっているため、それらの情報を総合的に判断する必要があります。

そのため、製造業は適切に商品を生産するために、効率良く正確な情報管理・進捗管理が求められます。

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業務プロセスにおける課題

先ほどの5つの業務プロセスは、基本的に製造業であればいずれの場合も同様のステップを踏みます。企業によっては各プロセスの中で課題を感じることもあるでしょう。しかし、その課題こそが業務を改善する糸口になります。

業務効率を高めるためにも、まずは業務プロセスにおける課題を把握しましょう。ここでは、製造業における業務プロセスの主な課題をご紹介します。

業務が標準化されていない

製造する商品や企業によっては、全ての工程を機械化することが難しく、人の手が介在します。その際に、作業員の知識・スキル・経験によって差が生まれることがあるでしょう。例えば、完成品の検品作業を熟練の技術者が手作業で確認するような場合、他の人にその業務を任せられず属人化します。

このケースでは、その業務を担当する作業員が休んだり、退職したりすると業務が回らなくなる可能性があります。このような事態を防ぐためには、どの作業員でも業務にあたれるように標準化する必要がありますが、業務フローを正確に把握していなければ属人化しているプロセスを見つけることができません。

人材が不足している

多くの製造業が抱えている課題に「人材不足」があります。日本における少子高齢化が深刻化しており、今後も人材不足が悪化する可能性が高いでしょう。先ほどと同様に、属人化している業務があり、その担当者が高齢であれば後継者が見つからずに引退する事態になりかねません。

また、工程に必要な人員を確保できないことで生産効率が落ちることもあるでしょう。既存の従業員の稼働を増やすことにより、精神的・肉体的な負担が大きくなるケースも考えられます。人材不足を解決するためには人材の確保も重要となりますが、同時に業務プロセスを見直し、無駄を削減するなどの対策が求められます。

作業ミスが発生しやすい

製造業の業務プロセスに手作業が介在している場合、数量のカウントや材料の分量を間違えるなど作業ミスが発生しやすいです。生産設備の機械化を進めた場合でも、操作する人がミスをする可能性はあります。

他にも、生産数の数え間違いや指示の確認漏れなどの人為的なミスが発生するリスクもあるでしょう。業務プロセス全体で考えると、複数の部門が関わっているため、共有事項の連絡漏れやコミュニケーション不足により大きなミスが起こることもあります。

このようなミスをなくすためには、十分なチェック体制を整えたり、ITシステムなどの導入により、人の手が介在するプロセスを少なくしたりする必要があるでしょう。

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製造業におけるプロセス管理の重要性

製造業にはさまざまな業務プロセスがあり、その流れを最適化することで業務改善や生産性の向上につながります。そのため、各プロセスを適切に管理し現状を把握しなければなりません。プロセス管理が十分に行き届いてなければ、ミスが発生しやすいだけでなく発覚も遅れ損失が大きくなるでしょう。

業務プロセスの状況を把握・可視化し、無駄を見つけて改善することにより、今までと同じ労力で生産数の向上やコストの抑制が可能です。いずれの場合も企業にとって利益につながり、生産するロット数が多くなるほど、メリットも大きくなるでしょう。

ただし、業務プロセスの詳細は企業や生産施設によって変わるため、自社に適した方法を見つけることが重要です。

製造業の業務プロセスを改善する方法

製造業において業務プロセスの効率は、生産性や利益に直結するため、課題を見つけて改善する必要があります。業務プロセスを改善するためには、いくつか手順があり、それを参考に各工程を見直すと良いでしょう。ここでは製造業における業務プロセスを改善する方法をご紹介します。

5Sを徹底する

5Sとは製造現場での職場環境改善のための活動のことであり、整理・整頓・清掃・清潔・しつけの頭文字のSを取ったものです。5Sの意味は以下の通りです。

  • 整理:不要なものを処分すること
  • 整頓:必要なものを使いやすい場所に置くこと
  • 清掃:現場をきれいに掃除して点検を行うこと
  • 清潔:清潔な状態を維持すること
  • しつけ:4つの「S」を習慣づけること

この5Sを守ることにより、作業しやすい生産現場を実現できます。その一方で5Sが守られていないと、作業効率が落ちてしまいます。例えば、整理・整頓できていない状態では、作業に必要なものを探すのに時間がかかってしまい、人為的なミスも起こりやすくなります。

また普段から清掃・清潔ができていなければ、現場をきれいな状態にするまでに時間がかかったり、商品の品質が悪くなったりします。まずは、従業員の意識を変えるだけで実践できる5Sを取り入れてみましょう。

5Sを徹底するだけでも、今の業務に散在している無駄が見つかり、業務改善につながる可能性は高いです。また、5Sの徹底を継続し習慣になることで、商品の品質向上・コストダウン・納期の短縮などにつながります。

各プロセスを分析・改善する

業務プロセスを改善するためには、現状や抱えている課題を明確にします。そのため、まずは既存の生産プロセスを把握し、数値などを用いて見える化しましょう。現状を把握する体制が整った後は、細かい点まで分析します。

生産プロセスに何かしらの数値の変化があれば、その内容を分析することでボトルネックになっている要因が見つかる可能性があります。その要因が明確になった後は、改善策を考え実践しましょう。業務プロセスの改善は実践してみないと分からないことも多いため、PDCAサイクルを回すことも重要です。

ITシステムを導入する

アナログな業務が多いケースでは、従業員による手作業が多くなりミスが発生しやすいです。そこで、ITシステムを導入することにより、大幅な業務の効率化が見込まれます。例えば、今まで数量や生産実績などを紙に書き、Excelなどに転記して記録している場合、工数が大きくなり従業員の負担が増します。

生産システムを利用することにより、紙ではなくタブレットなどのデバイスで数値を入力し、そのままシステムに内容が反映されます。他にも、原材料の在庫や完成した商品の数量をカウントする際には、RFIDタグやバーコードを活用することにより、目視・手作業で個数を数える必要がなくなります。この場合、工数を削減できるだけでなく、ミスも少なくなるでしょう。

現状のプロセスが抱えている課題や、目標に合わせて最適なITシステムの導入を検討しましょう。

製造業におけるDX

製造業ではITシステムの導入が急速に進んでおり、デジタル技術を活用して既存の業務を改革するDXの推進が注目されています。製造業界は、少子高齢化による人材不足が加速しているだけでなく、国際的な競争力の低下が問題視されています。

実際に、現代ではさまざまな要因により未来が予測しづらくなっているため、外的な要素に対して柔軟に対応する必要性が増しています。そこで、ITシステムの導入によりデジタル技術を活用することで、業務の効率化・自動化を実現できるでしょう。

今まで人の手が必要だったプロセスが自動化されれば、今よりも少ない人数で業務を回すことも可能です。

製造業がDXを推進するメリット

製造業がDXを推進するメリットはさまざまです。得られるメリットが自社の課題に関連するものであれば、業務の改革を進めやすいでしょう。ここでは、製造業がDXを推進するメリットをご紹介します。

●生産性の向上 DXを推進することで業務が効率化し、生産性の向上が期待できます。工場などの生産設備では、一般的な生産管理システムから従業員全体に関係がある勤怠管理システムなどの導入など課題に応じたシステムが展開されており、自社の課題に合わせて導入することでより効果を高めることができます。

その他にも、AI(人工知能)やIoT(Internet of Things)などの先端技術を活用も進んでいます。例えば、センサーなどにIoT機器を備えることで、今よりも多くのデータを収集できます。そこから集めたデータを分析することで、業務を改善するヒントが見つかるでしょう。

効率化と同時に業務の自動化を実現できれば、今よりも少ない人数で生産ラインを回せるようになり、浮いた人員分をよりコアな業務や他の稼働に充てたりすることで生産性向上に直結します。

コスト削減

ITシステムやAI・IoT機器の導入により、業務を効率化することで既存の無駄を削減できます。その結果、今までよりも人件費を含む生産コストを抑えられるでしょう。

生産設備の機械化・自動化により、業務効率化が図れるだけではなく、適切に原材料や資材の在庫管理を行えるようになるため、劣化や品質低下によるロスを防ぎやすくなる点もメリットです。廃棄する量を削減できる点も、コスト削減や利益増大につながります。

属人化している業務の標準化

今まで属人化していた業務は、DXの推進により標準化しやすくなります。例えば、業務のマニュアルを共有しやすくなり研修などもオンラインなどで開催できるでしょう。先ほどの通り、熟練の技術者のノウハウもAIやIoT機器を使用することで、習得しやすくなります。

また、熟練の技術者と同等の業務を、機械学習したAIにより人に代わってロボットが実施することもできるでしょう。

製造業がDXを推進する際の注意点

製造業がDXを推進するメリットは多いものの、全ての企業が成功しているわけではありません。例えば、大規模なIT投資を実施してみたものの、想定よりも業務が改善されないケースがよく見られます。他にも、ITシステムを導入しても、従業員に浸透せずに有効活用されないことも少なくありません。

このような事態を防ぐためには、自社の課題を明確にした上で最適なシステムを選定し、導入に向けて準備を万全にする必要があります。また、DX推進に必要な人材が不足していることから、最適なシステムの選定や導入、環境構築に苦労することも多いです。

このような場合は、製造業のDXに詳しい専門家の協力を得ると良いでしょう。自社の状況を把握し、適切なアドバイス・提案を受けることで、ITシステムの導入に失敗しにくくなり、スムーズに導入できます。

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自社の業務プロセスを改善しよう

この記事では、製造業における業務プロセスについて紹介しました。製造業の業務プロセスは複数の部門が関わっており、工程全体を改善・最適化することで、さまざまな課題の解決につながります。

まずは、従業員の意識を変えるために5Sを徹底しましょう。また、現状のプロセスを把握することで課題点・改善点が見つかりやすくなります。人の手が介在している業務は、デジタル技術の活用によって改善できることもあるでしょう。自社に最適なITシステムを導入し、DXを推進して業務を改善してみてください。

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