100年企業とは

本記事はサステナブルメディア cokiの記事から引用しています。

100年企業とは、100年以上続く老舗企業を指す言葉です。日本は世界で最も100年企業が多い国とされていますが、一方で経営悪化によって創業からわずか数年で廃業に追い込まれる企業も少なくありません。

100年続く老舗企業には、一体どのような特徴があるのでしょうか。本記事では、100年企業の特徴や実現するためのポイントについて解説します。

なぜ100年企業を実現できているのか、どのような戦略を立てるべきかが分かれば、持続可能な経営に役立つでしょう。

目次

  1. 100年企業に共通する特徴
  2. 代表的な日本の100年企業
  3. 100年企業を実現するためのポイント
  4. まとめ
100年企業とは
(Adobe Stockより)

100年企業とは、その名のとおり創業100年を超える長寿企業を指す言葉です。

東京商工リサーチの調査によると、2022年に倒産した企業の平均寿命は23.3年で、ここ数年の企業の平均寿命は22~25年程度となっています。

100年企業とは

そんな中、社会情勢が激しく変わる環境下でも創業100年を超えてなお活躍し続ける「100年企業」に注目が集まっています。

日本は世界中で最も100年企業の数が多い

実は、日本は世界で最も100年企業の数が多い国として知られているのをご存じでしょうか。

創業から100年以上経過した企業数の国別ランキングでは、日本の100年企業数は33,076社で全体の41.3%を占めるという圧倒的な結果になっています。

順位企業数全体に占める割合
1位日本33,07641.3%
2位アメリカ19,49724.4%
3位スウェーデン13,99717.5%
4位ドイツ4,9476.2%
5位イギリス1,8612.3%

ちなみに、2位はアメリカの19,497社(全体の24.4%)、3位はスウェーデンの13,997社(全体の17.5%)となっており、全体の半数近くを占める日本企業の凄さが伺い知れます。

日本における100年企業の割合は?

東京商工リサーチ、総務省の調査によると、2023年の日本における100年企業の割合は約1.2%です。

東京商工リサーチによると、2023年に新たに創業100周年を迎える企業は全国で2,649社(※1)、上記企業を含めた2023年の100年企業は42,966社(※1)となっています。

また、総務省の調査によると、2021年6月時点での企業数は368万社(※2)となっています。

国別ランキング1位の日本でも国内の100年企業数はわずか1.2%のため、事業を100年続けていくことは非常に難しいことであるといえるでしょう。

(※1参考:東京商工リサーチ
(※2参考:総務省統計局「我が国の事業所・企業の経済活動の状況~令和3年経済センサス‐活動調査の結果から~」

100年企業に多い業種

日経BPコンサルティングによると、日本の100年企業に最も多い業種は「製造業」です。

順位業種割合
1位製造業26.0%
2位小売業23.5%
3位卸業22.3%
4位建設業7.4%
5位サービス業5.2%

割合としては、製造業が26.0%、次いで小売業の23.5%と卸業の22.3%、少し差が開いて建設業の7.4%とサービス業の5.2%となっています。

日本の100年企業のトップ3は「製造業」「卸業」「小売業」といった製品を業者や消費者に販売することに関する業者が多いといえるでしょう。

100年企業に共通する特徴

100年企業とは
(Adobe Stockより)

100年企業のように長く創業が続く会社には、いくつかの共通点があります。ここでは、ブランドを守り続けるために100年企業が重視しているポイントについて見ていきましょう。

伝統と革新のバランスが取れている

創業100年を超える企業に共通しているのが、伝統と革新をバランス良く取り入れている点です。

創業当初からの伝統を大切にするのはもちろん、時代とともに変わりゆく流行を上手く取り入れる柔軟さも重要といえます。

大切なのは、伝統と革新のどちらかに偏りすぎるのではなく、両方をバランスよく経営に活かすことです。

新しいことに挑戦しすぎて理念がブレると企業のブランド力低下につながり、反対に伝統を守りすぎると求められるニーズに対応しきれなくなります。

そのため、あくまで創業当初からの伝統を守りつつ、変化を恐れない姿勢が100年企業の秘訣といえるでしょう。

企業理念がしっかりと引き継がれている

経営者が変わっても企業理念がしっかりと引き継がれている企業は、創業から長く続いている傾向にあります。

当たり前ですが、会社が長く続くほど世代交代は多くなります。その際に企業理念が引き継がれていないと、ブランドの方向性がズレて顧客の信頼を失うかもしれません。

こうした事態を避けるために重要なのが、先代からの企業理念をしっかりと後継者が引き継いでいく体制づくりです。一例として、多くの100年企業では企業理念が言語化されています。

企業理念を言語化することで、トップや従業員が変わっても方向性がブレにくいといえるでしょう。

企業理念が従業員にまで浸透していれば、製品やサービスの提供等を通して顧客からの信頼向上にもつながります。

地域社会への貢献を重んじている

地域社会との関わりを大切にしているのも、100年企業の特徴のひとつです。会社が大きくなってくると、全国展開や都心へのオフィス移転を検討する場合もあるでしょう。

100年企業にも全国展開しているところはありますが、上場企業・中小企業に関わらず100年続く企業は地域密着の経営を行っている傾向にあります。

創業地に本社を置き、顧客のニーズに合わせたきめ細かい経営を心がけることで、地域に愛される企業になるでしょう。

地域や顧客に愛されている企業は、全国展開してもブランド力を保持しやすくなります。

従業員を尊重している

従業員を尊重し、働きやすい環境を整えているのも100年企業の特徴といえます。

従業員は企業にとってなくてはならない存在です。にもかかわらず、企業の利益を追求するあまり従業員の労働環境がないがしろになってしまうケースもあります。

一方、100年企業では会社と従業員を対等な立場と捉え、一人ひとりが働きやすく、やりがいを持って業務にあたれる環境を重視しているのが特徴です。

適正な賃金や残業はもちろん、働き方の多様性や従業員の意見を尊重する取り組み等が行われています。

一人ひとりを家族のように大切にすることで、従業員のやりがいや会社への貢献度も高まり、結果的に良い製品やサービスの提供につながるでしょう。

向上心や成長意欲が高い

100年企業は、創業から何年経っても向上心や成長意欲が高い傾向にあります。

事業が軌道に乗ってくると「このままでいいや」と慢心してしまいがちです。しかし、現状にあぐらをかいていると社会の変化についていけず、どんどん取り残されてしまいます。

そこで大切なのが、向上心や成長意欲といった「学び続ける姿勢」です。おごり高ぶらず、いつまでも謙虚に学び続ける企業は、時代や社会情勢の変化に適用できるでしょう。

堅実な経営を心がけている

身の丈に合った堅実な経営を心がけているのも、100年企業の特徴といえます。長く経営を続けていくには、自然災害や社会情勢の変化など財政的なリスクがつきものです。

そのため、100年企業はこうしたリスクに備えて堅実的に経営と向き合っています。

とはいえ、新しいことに全くチャレンジしないわけではありません。万が一にもリスクをカバーできるよう、スモールステップで事業を拡大していくことが大切です。

代表的な日本の100年企業

100年企業とは
(Adobe Stockより)

ここでは、日本に40,000社以上ある100年企業の中から知名度の高い企業を一例として紹介します。

キューピー株式会社

マヨネーズやドレッシングなど、家庭の食卓に欠かせない商品を幅広く製造・販売しているキューピー株式会社は、創業から105年(2024年現在)を迎える企業です。

「愛は食卓にある。」をコーポレートメッセージに掲げ、食を通して社会貢献するために取り組んでいます

主な事業としては、家庭用の商品はもちろん、レストランやホテルで使用される業務用の商品や海外への輸出も手がけています。

株式会社 虎屋

和菓子で知られる虎屋は、1501年創業の老舗企業です。室町時代に創業した虎屋は、2024年現在で創業523年を迎えています。

「おいしい和菓子を喜んで召し上がって頂く」という理念を掲げ、和菓子の直営店のほか、商業施設や空港に販売店、一部の直営店にはカフェを併設するなどさまざまな事業を展開しています。

100年企業を実現するためのポイント

100年企業とは
(Adobe Stockより)

ここからは、100年企業を実現するために必要なポイントや、具体的な戦略について解説します。自社に必要なポイントは何かを把握し、経営に活かしましょう。

変革意識は持ちつつも経営理念は変えない

変革意識を持つのは大切ですが、100年企業を目指すなら軸となる経営理念まで変えてしまわないことが重要です。

時代の変化やニーズに合わせて変革することも時には必要ですが、経営理念がブレてしまうと創業時からの顧客が離れてしまう可能性があります。

そのため、あくまで軸は本業に置き、経営理念から派生する形で新しい事業を検討するようにしましょう。

100年以上会社を存続させていくのであれば、社会情勢の変化や自然災害など予期せぬ出来事は必ずといっていいほど起こります。

予期せぬ事態にも焦らず、創業当初からの理念を貫くことが100年企業のひとつのポイントといえるでしょう。

後継者の育成に力を入れる

会社を長く存続させるためには、後継者の育成も大切です。

どれだけ優れた経営者であっても、必ず世代交代しなければならない時期が来ます。100年企業を目指すには、先代が築き上げてきた会社やノウハウをしっかりと後継者に引き継ぐ必要があります。

そのためには、早い段階から後継者の選別と育成を行わなければなりません。また、後継者以外にも、管理職や現場のリーダーなど会社を引っ張っていく存在も大切です。

後継者や管理職を担う若手を早い段階から選別・育成し、スムーズに世代交代ができるように準備しておきましょう。

従業員や地域社会との関係性も大切にする

100年企業を目指すには、従業員や地域社会との関係性も重視する必要があります。自社の利益のみを追っていては、持続可能な経営はできません。

ステークホルダーと呼ばれる従業員や地域社会、顧客、株主など企業に関わる相手との関係性を良くしてこそ、100年以上続く企業になり得るといえます。

内外のどの方面からも愛される企業を目指しましょう

ステークホルダーについての基礎知識や、従業員との関係性の構築について知りたい方はこちらをご覧ください。


組織体制を整備する

組織体制を整えるのも、100年企業の実現には不可欠です。数人程度の従業員であれば、経営者は一人ひとりの意見を聞きながら一緒に業務を進められます。

しかし、企業の規模が大きくなり、数百〜数千人の従業員を抱えるようになるとそうはいきません。
そのため、企業規模の拡大に合わせて組織体制を整えていく必要があります。

従業員一人ひとりが把握できるように企業理念を言語化したり、作業をマニュアル化したりすれば、経験年数に関わらずどの従業員でも同じ品質・サービスの提供が可能になるでしょう。

まとめ

本記事では、100年企業の特徴や、実現するためのポイントについて解説しました。

100年企業には、「企業理念を守りつつ時代に合わせて変革していく」「利益だけでなく従業員や地域社会との関わりも重視する」といった特徴があります。

そのため、企業内外から愛されることが、100年企業を実現するひとつのポイントといえるでしょう。

激しく変化する時代を生き抜いていくためにも、本記事で参考にできる部分を上手く取り入れながら持続可能な経営を行っていきましょう。

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