本記事はサステナブルメディア cokiの記事から引用しています。
「中小企業はESG経営に取り組むべきか」
「コストがかさんでしまい、メリットが少ないのではないか」
「どのようにESG経営に取り組めば良いのかわからない」
そんなお悩みを抱えていませんか。
ESG経営とは「環境・社会・企業統治」を考慮した経営を指します。
大企業が取り組むものと思われがちなESG経営ですが、中小企業にとっても企業の持続可能性を高めるために重要です。
また、バリューチェーンの温室効果ガス排出量の算出の必要が出てきたため、今後そういった観点からも中小企業のESG経営が求められるでしょう。
本記事では、中小企業にとってESG経営が必要である旨をお伝えするため、以下の内容を解説します。
・中小企業がESG経営を求められる背景
・中小企業がESG経営に取り組むメリット
・中小企業がESG経営に取り組まないデメリット
・中小企業がESG経営に取り組む際の課題
・中小企業がESG経営で抑えるべきポイント3つ
・中小企業によるESG経営の取り組み事例
今からESG経営に取り組む方だけでなく、「すでに取り組んではいるが課題に悩まされている」という方にも読んでいただきたい内容になっております。
本記事が、貴社のESG経営のお悩み解決の糸口となれば幸いです。
目次
中小企業がESG経営を求められる理由
中小企業がESG経営を求められる理由の根本は「世界的な環境問題」にあります。
地球環境が加速的に破壊されており、全世界が協力して環境問題に取り組む必要があるからです。これは企業規模も上場・非上場も関係なく、すべての企業が取り組むべきグローバルな課題です。
しかし、企業が経営や発展を犠牲にしてESG活動に取り組むというのは、望ましくありません。
国連が採択したSDGsは「持続可能な開発のための2030アジェンダ」であり、環境や社会の問題を解決しつつ、企業の持続可能性も一緒に高めることが目的です。
企業の持続可能性は、より良い環境や社会を基盤としています。すべての企業にとって重要な視点です。
また、昨今は企業のサステナビリティ活動を評価するESG投資が国連から推奨され、それに伴いサステナビリティ評価基準の統一の流れが整いつつあります。
特に温室効果ガス排出量の算出については、バリューチェーンのすべてのプロセスにおいて求められます。
温室効果ガス排出量の算出および削減に取り組まない企業は、投資家だけでなく親会社や取引先などのステークホルダーから、評価されなくなっていくでしょう。
中小企業がESG経営に取り組むメリット
ここでは、中小企業がESG経営に取り組むメリットについて解説します。
主なメリットは以下の3つです。
- ステークホルダーからの評価向上
- 企業の持続可能性の強化
- 資金調達・キャッシュフローの増強
それぞれ詳しく見ていきましょう。
ステークホルダー(利害関係者)からの評価向上
ESG経営に取り組んでいる企業は、ESGに取り組む大手企業をはじめとする取引先や投資家などのステークホルダーから、高く評価されます。
ESG活動に尽力している企業は、社会的価値が高いからです。
地域密着型の中小企業である場合、顧客が地域住民であることも。
例えばある地域に、競合の製造業であるA社とB社があるとします。A社の商品は安いですが、地域の環境に配慮しません。B社の商品はA社より高いですが、地域の環境に配慮して製造しています。
長期的な目線で考えると、地域住民にとっては生活基盤に配慮するB社の方が、信頼と社会的価値が高くなります。
生活基盤をゆるがすリスクがあるA社よりも、今後も応援したい企業となるB社の商品を購入するでしょう。
目先の利益の追求だけではステークホルダーから見放され、企業の持続可能性は低下します。
企業の持続可能性の強化
ESG経営に取り組むと、企業の持続可能性が強化されます。
中長期的な経営方針および計画の定期的な見直しにより、以下の力が強まるためです。
- 効率的で透明な企業統治
- ブランディング
- 高度なリスクマネジメント力
- 事業成長の基盤づくり
- 優秀な人材確保の機会の獲得
ESGにおいて優先的に取り組むべき重要課題の特定や、具体的な目標設定および達成のための計画には、これまでの事業や企業統治の見直しが欠かせません。
ESG経営への取り組みは事業や企業統治における課題発見の機会になり、結果、企業の持続可能性を強化します。
資金調達・キャッシュフローの増強
ESG経営に積極的な企業は、資金調達面においても強みがあります。
ESGに積極的な企業を評価して投資先に選択する「ESG投資」が潮流となっている昨今では、金融機関による融資の基準にもESG評価が使われているからです。
特に、経営介入を防ぐためあえて株式を発効していない企業においては、金融機関からの融資が有利になることは非常に大きいメリットになります。
また、ESG経営を通じてコスト削減等が見込まれます。例えば温室効果ガス排出量の削減のために、製造およびサービス提供の効率化によるコストカットなどが手段となるからです。
ESGはコストばかりかかるボランティア活動としてではなく、企業や事業の価値を高める有効な手段として、事業計画や経営方針に組み込むべきです。
中小企業がESG経営に取り組まないデメリット
中小企業がESG経営に取り組まない場合、あらゆる事業機会を失うでしょう。
国際的にサステナビリティへの配慮が当然のものとなってきているため、ESG経営を無視してはグローバル競争に勝てないからです。
また、パリ協定で示された目標達成が急がれる中、「ネットゼロ(正味ゼロ)」の実現のため、今後すべての企業にESG経営が要求されます。
「ネットゼロ」とは、温室効果ガスの排出量から吸収量や除去量を差し引いた合計をゼロにするという意味です。パリ協定で示された「1.5℃目標」の達成を目的としています。
「1.5℃目標」とは世界の平均気温の上昇を産業革命以前と比べて1.5℃に抑えるというものです。
この目標を達成しなければ様々な環境問題が悪化します。悪化を防ぐためには、すべての企業の協力が必要です。
協力的でないと見られる企業との取引は、自社の評価を下げる一因となってしまうため、結果、ESG経営に取り組まない企業は事業機会を失います。
中小企業がESG経営に取り組む際の課題
中小企業がESG経営に取り組むのは、大変有益です。
しかし、取り組む際には以下の課題があると知っておきましょう。
- 短期間では結果が見えてこないため、中長期的な戦略になる
- 評価機関によって評価基準にばらつきがあり、情報公開のハードルが高い
- 対処方法や他社事例などの情報不足している
- 対応できる人材がいない
- 対応コストが高い
評価基準についてはサステナビリティ情報の国際的機関であるISSBやCSRDが、評価基準の統一に向け動いているため、今後ハードルは徐々に下がっていくと想定されます。
ESG経営への取り組みは早めであればあるほど良いですが、中小企業によるESG経営の事例が少ないため、情報や人材の不足のため、初動が困難になりがちです。
情報収集や相談、サステナビリティ推進室の立ち上げなど、初動において必要な取り組みをサポート企業に依頼するのも手でしょう。
弊社ではESG経営の支援サポートも行っておりますので、お気軽にお問い合わせください。
中小企業がESG経営で押さえるべきポイント3つ
ESG経営は、やみくもに取り組んでも上手くいきません。
ここでは中小企業がESG経営で押さえるべき、以下の3つのポイントを解説します。
- 事業とあわせて戦略的に行う
- 経営陣を中心に全社的に行う
- 自社だけでなくステークホルダーと協力する
それぞれ詳しく見ていきましょう。
事業とあわせて戦略的に行う
ESG経営の真髄は環境・社会・企業統治の課題を解決する「事業の創出」です。ただのボランティアではなく、既存および新規事業と混ぜて戦略的に行うのが良いでしょう。
長野県にあるセイコーエプソン株式会社は、2021年に長期ビジョン「Epson 25 Renewed」を策定し、「環境」「DX」「共創」により、企業成長と社会課題解決を目指す「攻めのESG経営」へのシフトを加速させました。
重要なのは、長年培ってきた「省・小・精の技術」が社会課題にどのように貢献できるかという視点で長期ビジョンを策定している点です。
既存の強みを活かしてイノベーションを次々と起こした結果、環境への配慮と商品価値向上の両方を実現しました。
詳細は以下の記事にてご覧ください。
経営陣を中心に全社的に行う
ESG経営は、企業の経営方針・事業計画に深く関わるものです。
経営陣を中心に全社的に行うことで、縦横のつながりからサステナビリティ担当者へと情報を集めやすくなり、重要課題の特定や毎年の情報公開作業が効率的になります。
また、全社員が自社のESG経営について深く理解しておくことで、環境・社会・企業統治のそれぞれの活動について分担が可能になります。
国際サステナビリティ基準の統一を図っているISSBが、非財務情報の開示時期を財務情報を同時期まで早めたことで、ESGに関わるタスクは今までよりもさらにスピードを求められるでしょう。
社員がしっかりとした理解の機会を得られない場合、分担されたとしても取り組みの意義を見出せず、ただ面倒な仕事が増えただけと思われるおそれがあります。
そうなれば情報公開が上手くいかず、評価機関からも実績にふさわしい評価を得られません。
自社内だけでなくステークホルダーと協力する
環境問題が一人の取り組みでは解決しないのと同様に、ESG経営においても他者を巻き込む力が必要とされます。
自社内の取り組みだけでは制限がかかる活動の規模や幅も、ステークホルダーとの協力によって広げていくことが可能です。
バリューチェーンの各プロセスに関わるステークホルダーと、各々のESG経営について話し合うのも有益です。同じ重要課題があれば、共に目標達成できるよう効率化や仕組みについて相談できます。
中小企業によるESG経営の取り組み事例
ここで紹介する事例は、参考記事ではSDGsの取り組みとして取り上げられていますが、企業の安定的な成長に関わっているため、ESG経営の取り組み事例としても紹介します。
紹介する事例は以下の3つです。
- 衣料小売店によるフェアトレードと古民家再生
- SDGsへの取り組みによる経営立て直し
- 紙マネキンで循環サイクルを実現
それぞれ詳しく見ていきましょう。
衣料小売店によるフェアトレードと古民家再生
衣料小売店A社は、タイ産のオーガニックコットンで衣料品を自ら生産し、日本の店舗で販売。
また、オーガニックファッションの店舗がほとんどない地域において、古民家を店舗として再生する取り組みを実施しています。
事業の特徴は、以下の3つです。
- 衣料品の生産もタイで実施し、地元への雇用機会を提供
- 過度な価格交渉や生産指導を行わず、フェアトレードを意識した経営
- 競争相手のいない土地で顧客と密な関係を構築
これらの取組みはA社のブランドイメージを構築する上で、大きな役割を果たしています。
また、A社は古民家のある地域における人脈や商習慣の知識を補うため、総務省の管轄下で推進されている「地域おこし協力隊」という事業を活用しました。
企業に不足している力を補いつつ、持続可能な地域社会の実現も図る取り組みです。
本例は以下の記事より引用・加工しました。小規模事業者によるその他取り組みについても紹介していますので、ぜひご覧ください。
SDGsへの取り組みによる経営立て直し
アルミニウム製造加工会社である「加藤軽金属工業株式会社」は、当時最重要課題であった経営の立て直しのため「SDGsの取り組み」を始めました。
行った取り組みは以下の4つです。
- サプライチェーン排出量削減のため「省エネ」を考慮した装置に買い替え
- 太陽光パネルでの自家発電による消費電力削減
- 省エネ判断としてCO2排出量の削減可能性を数値化
- 工場内の各装置の使用電力及びCO2 排出量を「見える化」
初期投資はかかっていますが、製造効率の向上やランニングコストの削減に成功しているため、長期的な目線で見ると企業の持続可能性を高めていると言えます。
本企業は、他にも就業環境の改善やベンチャーとの協創にも取り組んでいます。
詳細は以下の記事よりご覧ください。
紙マネキンで循環サイクルを実現
株式会社 彩ユニオンは環境にやさしい紙製マネキン「Kami tocasi (カミ トカシ)」を開発・発売しています。
「Kami tocasi (カミ トカシ)」は、以下の特徴があります。
- パルプモールド製法の採用により、時間とコストの大幅削減に成功している
- 石油素材を一切使わず、約90日で土に還る
- 洋服の端材も原材料として使用できる
近年ではサステナビリティへの関心が高まり、強度に優れ、安価なFRPガラス(繊維強化プラスチック)で作られた一般マネキンよりも、環境にやさしい紙製マネキンが注目されています。
しかし、従来の紙製マネキンは価格がFRPマネキンの3~4倍高いという課題がありました。
「Kami tocasi (カミ トカシ)」は、卵パック製造にも使われるパルプモールド製法の使用により、従来の紙製マネキンの約半分のコストで制作できるようになっています。
今までは捨てていた洋服の端材を活用してマネキンにすれば、ブランドのストーリーにもなるため、自社だけでなく取引先の価値向上にも役立ちます。
環境と経済にやさしい循環サイクルを作りつつ、企業の価値向上を叶える取り組みです。
詳細は以下の記事にてご覧ください。
まとめ|中小企業こそESG経営に取り組むべき
企業規模や上場・非上場に関わらず、ESG経営は企業価値と持続可能性を高める有益な活動です。
サステナビリティという新たな評価基準が注目されるようになったことで、財務情報以外での企業価値のアピールが、より効果を発揮するようになったとも言えます。
そのため、中小企業こそESG経営に取り組むべきなのです。
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本記事が、貴社のESG経営による企業価値向上に、少しでもお役に立てれば幸いです。
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