自社DX人財の育成とは

目次

  1. DX人材とは?
    1. 求められる人物像
    2. 役割
    3. 求められるスキル
  2. なぜDX人材を育成すべきなのか
    1. 市場全体でDX人材が不足している
    2. DX人材の確保にコストがかかる
    3. 自社の文化・風土に合わせた特化スキルを身に着けられる
  3. DX人材育成の失敗事例
    1. 企業が目指すDXビジョンが不明確
    2. 人材投資が不十分
    3. 時の経過とともに「現場任せ」になってしまう
  4. DX人材を育成するメリット
    1. 自社の事業効率化が加速する
    2. 持続可能性が高まる
    3. 協働他社と密な連携が可能になる
  5. DX人材育成のポイント
    1. OJT教育制度の充実
    2. 学習支援
    3. ITリテラシーの全社的底上げ
  6. まとめ

DXはDigital Transformation(デジタルトランスフォーメーション)の略で、さまざまな企業で盛んに行われている取り組みの1つです。しかし、どこの企業においてもDX人財を確保することに苦労しています。ここではDX人財育成の失敗例をあげつつ、DX人財を育成するメリットや育成のポイントなどを紹介します。

DX人材とは?

まずDX人材とは、どのような人財なのでしょうか。ここでは求められる人財を紹介します。

自社DX人財の育成とは

求められる人物像

実はDX人財に明確な定義は存在しません。それはDX人財にはさまざまなスキルがあり、求められる役割もさまざまだからです。ここでは求められる人財を役割とスキルに分けて紹介します。

役割

DX人財にも様々な役割があります。それぞれの役割を持った人が相互作用することで高いパフォーマンスを出すことができます。三菱総合研究所の発表によると、以下の大きく4つの役割にわかれています。

自社DX人財の育成とは
出所)三菱総合研究所の公表資料を基に、弊社が作成

DX人材はこれらの役割をしっかりと理解し、適切に対応できることが求められます。

求められるスキル

次に求められるスキルを紹介します。DX人財として求められるスキルは大きく6つ存在します。しかし、これらのスキル以外にも自社のシステムやDXや企業戦略によって必要なスキルは変わってくることを理解しておきましょう。

  • マネジメントスキル

DXは1つの製品・サービスを導入して終わりではありません。そこから業務プロセスや会社の風土を変革していくことが求められます。そのため、他の部署を含めてマネジメントをしなければならないこともあるため、どのようなポジションの人でもマネジメントは必要なスキルです。

  • 新規事業の企画力・構築力

企画力・構築力はDXの戦略に基づいた具体的な企画の立案を行うことです。DXは新しい企画を繰り返し実行し、ビジネスプロセスを改善することが重要となりますので、一人ひとりが企画力・構築力を持っていることが重要です。

  • データサイエンスの知識

DXを進めるにあたってデータの取り扱い方法は必ず検討しなければならないテーマでしょう。そのため、データサイエンスの知識が必要になります。

  • AI、ブロックチェーンなどの最先進技術の知識

DXではAIやブロックチェーンなどの最新技術の活用も検討されることがしばしばあります。そのため、これらの最新技術も把握しておく必要があります。

  • UI/UXへの知識

DXは最終的には業務ユーザーや一般ユーザーに価値を提供することです。価値はユーザーインターフェースやユーザーエクスペリエンスによって提供されます。そのため、UI/UXの活用方法を抑えておくことは重要です。

なぜDX人材を育成すべきなのか

DX人財を育成すべき理由としては以下の3つがあげられます。

市場全体でDX人材が不足している

DXが急激に普及したことにより、DX人財のニーズは急速に高まりました。そのため、DX人財はどこの会社でも不足しています。そんな中、外部からDX人財を調達しようとしても、人財を確保できる可能性も少ないですし、確保できたとしても十分なスキルを持っている人を確保できるとは限らないでしょう。すぐに確保できる保証がないのでリスキリングなどを行い、自社で育成をした方が効率的と言えるでしょう。

DX人材の確保にコストがかかる

DX人財が不足しているということは、現在DX人財は引く手あまたです。そのため、人財を獲得するためには多くのコストをかけなければなりません。エージェントに募集を掛けたとしても多くの手数料を支払わなければならないでしょう。また、場合によっては自社の他の社員よりも給料を多く払うケースも出てくるでしょう。そのため、内部で育成をした方がコストが下げられる可能性があります。

自社の文化・風土に合わせた特化スキルを身に着けられる

DX人財といってもその役割やスキルはさまざまです。外部から獲得したDX人財が必ずしも自社のニーズとマッチしているとは限りません。また、外部からの人財の場合、いくら面接をしたからといっても正確なスキルを把握しているわけではないでしょう。しかし、内部で育成することで自社のニーズや文化をよく理解した自社に対する専門性の高い人財を確保することができます。

DX人材育成の失敗事例

ここでは、DX人財の育成に失敗したケースを紹介します。

企業が目指すDXビジョンが不明確

DX人材を育成せよと言われても、どのような人材を確保すればよいのかわからなくなってしまいます。社内におけるDX人材の定義を行おうと思っても専門知識がなく、多くの時間を費やしてしまいます。目指す方向性が不明確の状態で人材確保・人材育成を進めてしまうと、結局教育体制の検討などが不十分で、失敗してしまうケースが起こり得ます。

人材投資が不十分

日本ではDXを進めている約半数の企業が人材不足に悩まされています。これだけ多くの企業が人材不足に悩まされている要因として人財投資が不十分であることがあげられます。日本では令和3年版情報通信白書によると、DX人財に悩まされているものの、教育や人員の確保など何もしていないと回答している企業も多く、人財投資の少なさを伺わせます。

この人財投資が不十分であることから専門的な能力をもった人財を確保できず、DX人財育成に失敗してしまうケースがあります。

時の経過とともに「現場任せ」になってしまう

目指す方向性が不明確な理由と近いところもありますが、トップがDX人財を確保せよ、と言っても、どのような人財を確保すればよいのかわかりません。DXはIT部署内だけで完結するべきものではなく、企業の文化やビジネスプロセスも変化させる重要なプロジェクトであるため、経営層からどのような人財を求めているのかビジョンを指し示すことが必要です。すべてを現場任せにしてしまった場合、DX全体の戦略とDX人財の育成戦略が嚙み合わず失敗してしまうでしょう。

自社DX人財の育成とは

DX人材を育成するメリット

ここでは、DX人材を自社で育成するメリットを紹介します

自社の事業効率化が加速する

外部からDX人材を調達する場合、自社のニーズに合ったスキルを持っているかもわかりません。また、自社の事業の目的や社風、文化も理解していないケースもあります。

一方、DX人財を自社で育成した場合、時間やコストが膨らむケースもございますが、自社事業の目的や文化を理解しており、その上で自社システムを十分に把握している人材を育てることが可能です。そのため、自社のDX推進も形骸化することもなく、進めることができ、中長期的には事業効率化を加速させることが可能です。

持続可能性が高まる

自社でDX人財を育成する場合、時間やコストが掛かる可能性がありますが、中長期的目線で考えると、自社内にデジタル関連のナレッジが蓄積され、持続的なDXの推進、デジタル化の対応が可能になるはずです。またデジタル技術を用いた大きな市場変化が生じた際にも、自社のDX人材を中心に問題対処、課題解決をより円滑に行えるようになるでしょう。

協働他社と密な連携が可能になる

自社でDX人財を育成して、自社メンバーで開発ができるようになった場合、デジタルツールの調整など、融通が効くようになります。協働他社と連携したい場合にもデジタルの基礎知識を持ち合わせているだけで迅速に対処できるようになるはずです。結果として、協働する他社と密な連携が可能となり、全体的な生産性の向上に寄与するはずです。

DX人材育成のポイント

DX人財は勝手に育成されるものではありません。自社でDX人財を育成する場合にはコストをかけて支援をすることが大切です。ここではDX人財の育成ポイントを紹介します。

OJT教育制度の充実

自社独自の文化や社風、業務をしっかりと理解するために、OJT教育制度の充実が欠かせません。OJTは、On the Job Traningの略称で、職場の上司や先輩社員が、部下や後輩に対し、実業務を通じて指導することによって、業務知識、業務ノウハウなどを伝授する教育のことを指します。OJTはアメリカで生まれた教育制度ですが、日本の大企業でもよく取り入れられています。このOJTを繰り返し実践することで従業員は徐々に実力が身に付き、さらには会社の文化や風土の理解を踏まえた業務遂行が行えるようになります。自社DX人材育成にはこのOJT教育制度の充実、連携も大切な取り組みの一つと言えます。

学習支援

先述したOJTだけでは社員のスキルを底上げしていくのは難しいはずです。自社のシステムや自社のDXの進め方、仕事の方法などはわかりますが、DX推進者として他を巻き込む存在になるためには、継続的な学習努力が必要と言えます。経営者側(企業側)からすると、従業員の学習支援を促進する必要があります。特に必要になってくるのはAI、ブロックチェーン、クラウドサービス、ChatGPTといったテクノロジー、データサイエンティストやマーケティング関連の知識やノウハウです。これらはDX戦略を立案するにあたって基礎的な知識になりますし、DXを進めるプロジェクトメンバーとしては必須知識とも言えます。

研修やセミナーといった学習機会の提供や教材などの学習コストの補助を行うことで、DX人財を目指す人を支援することができ、効率的にDX人財を育成できるでしょう。

ITリテラシーの全社的底上げ

DX人財の育成と聞くと、IT部門のみの教育と思いがちですが、実は全社的にITリテラシーを底上げする必要があります。なぜなら、DXは一部門だけでは完結しない取り組みだからです。DXは全社的にビジネスを効率化していくためにさまざまな部署と協力し、全社一丸となってプロジェクトを推進することが肝要です。全従業員が均一的なITリテラシーを保持していない場合、プロジェクトを進める意味を理解してもらえず、進行途中に阻害要因となる可能性があります。しかし、きちんと教育ができている企業の場合、部署の垣根を越えて従業員たちが互いに協力し合い、効率的にプロジェクトを進める傾向があります。最低限、DXを進める意義やDXで注目されているAIやデータ分析関連の用語を教育し、ITリテラシーの底上げをすると良いでしょう。

まとめ

ここまで、自社でDX人財を育成するメリットやよくある失敗パターン、育成のポイントなどを紹介しました。

DXは今後、会社をより効率的に推進するにあたって必要不可欠なテーマです。しかし、DX人材は市場全体で不足傾向にあり、外部から調達することは今後より一層難しくなるでしょう。

自社でDX人材を育成する場合、OJTと学習機会を提供しつつ、社内メンバー全員のITリテラシーを底上げすることを目指すことが重要です。


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