課題・要望
- メンテナンスビジネスを強化するにあたってIoT導入を検討していた
- ソフトウェアにもハードウェアにも強いITベンダーが必要だった
IoT搭載にとどまらず、高付加価値なソリューションを生み出すパートナー
解決策・効果
- 専門性の高い分野にも通じたエンジニアが担当することで、想定以上のレベルで課題解決の見込みが立った
- 当初の想定以上の付加価値が見込めるようになり、グローバル進出など中長期的な戦略につながる可能性が出てきた
インタビュー
高層ビルなどの大規模施設では、空調用熱源機械に最適な運転をしてもらうために放熱部分の役割を担う「冷却塔」や、人にやさしい快適な屋内空間を創り出すために最適な気流を生み出す「吹出口」が重要な役割を果たしています。
こうした空調設備において、国内トップクラスのシェアを誇るのが空研工業です。今後グローバル進出を目指すという同社がどのような課題を抱え、パートナー企業に何を期待しているのか、常務取締役の清國栄治さんに伺いました。
―空研工業さんは空調設備のリーディングカンパニーですが、どのような強みを持っていらっしゃるのでしょうか?
弊社は創立から60年以上、空調設備の製造販売・施工を行っていますので、積み重ねたノウハウはそれなりのものだと自負しています。そのノウハウを、ニーズに合わせて柔軟に活かしているのが強みといえるかもしれません。
たとえば「吹出口」は、人に直接当たらない気流が生まれるように、空間の構造に合わせて設計します。加えて、今はオフィスビルでも商業施設でも、その空間に調和したデザインにしています。形だけでなく色も空間に合わせて塗装したり、照明メーカーさんとコラボレーションして照明一体型の「吹出口」を製作したりしています。
―普段利用していても気づきにくい部分ですが、繊細な工夫がされているのですね。
そうですね、一般の方の目に触れる機会が少ない「冷却塔」も、実は色々と工夫しています(笑)。以前は屋上に設置されることが多かったのですが、最近は屋上緑化などでスペースを効率的に活用するケースも増えてきていました。そこで、景観に配慮して別の場所に設置するケースも出てきています。
また、「冷却塔」のメンテナンスを怠ることで大きなエネルギーロスをしている事に気付かれていないお客様も多くいます。そのため弊社では定期メンテナンスのわずらわしさを解消した送風機の駆動システムも開発し、大変喜ばれています。 さらに最近大きな話題となっている汚染熱の問題もあります。日本最大の研究機関である産業技術総合研究所によれば、大阪市の空調排熱による気温上昇は0.27℃とも伝えられています。その点、弊社のシステムは水冷式なので昨今のヒートアイランド現象やゲリラ豪雨などの異常気象の抑制にも貢献できています。このようにCO2削減や汚染問題を考え、「冷却塔」を使うことでみなさまが安心して生活できる環境にしたいと思っています。
―そうしたなかで、空研工業さんにはどのような課題があるのでしょうか?
ビルや施設を管理するデベロッパーさんにとって、空調設備のメンテナンスは負担の大きい業務のひとつです。特に「冷却塔」は屋外の目立たない場所に設置されますので、どうしても目が届きにくいです。施設内は自分たちで管理しているけれども、「冷却塔」は別の専門業者にメンテナンスを依頼しているデベロッパーさんも珍しくありません。
そして「冷却塔」は常に送風機が動いていますので、軸受部分がどうしても劣化します。この劣化の度合いが、人のチェックではわかりにくいのです。ある程度劣化すると異音を発するようになるのですが、そうなるといつ壊れてもおかしくないので、安心して使っていただくことができません。こうした状況を予知保全できないものかと考えていました。
―異変をいち早く察知できれば、慌てて部品交換の手配をしなくても済むということでしょうか?
そうです。「冷却塔」は夏場に稼働が増えるのですが、人間の耳では聞き取れないレベルの異音や振動を検知できれば、過去のデータを基にしてデベロッパーさんに「今年の夏は今のまま使えると思いますが、遅くとも来年の夏前までには交換したほうがいいですよ」といったご提案ができます。そうすると、デベロッパーさん側は「来年度予算に交換部品の費用を盛り込んでおこう」ということで、計画的な予算管理も可能になるわけです。
―まさに「攻めのメンテナンス」ですね。
もちろん、弊社にとってもメリットがあります。今までは「冷却塔が壊れたから交換用の部品を手配してくれ」と注文をいただいていたのですが、それが集中してしまうと安定供給ができなくなり、デベロッパーさんにご迷惑をかけてしまう可能性があります。
しかし、需要量を早い段階で予測できれば、部品の調達や作業要員の確保がしやすくなります。送風機の軸受部品は受注量全体の5割弱を占めていますので、予知保全ができるようになれば、より効率的な経営も見込めます。
問題は、このアイデアをいかに具現化するかということでした。IoTやAIを活用すればできるだろうと予想はつきましたが、社内にはその方面に詳しい技術者がいません。そこで、パートナー企業を探すことになりました。
―パートナー企業に求める要素は何だったのでしょうか?
「こういうことができれば」という漠然とした構想でしたので、ただソフトウェアを開発できるというだけでは不安でした。そのため、ハードウェアにも強いなど、構想を具体化できる知見をお持ちでないと厳しいのではないかと考えていました。
実際、弊社の顧問から複数のITベンダーを紹介してもらってそれぞれと話をしたのですが、ソフトウェアとハードウェアの双方に強いところはほとんどありませんでした。「ソフトはつくれるけれども、要件定義は空研工業さんでお願いします」と言われることが多かったのですが、CCTさんだけは「トータルにご提案できますので、お任せいただいて大丈夫です」と言ってくれたのです。
親身になって考えてくれているのが伝わってきて、とてもうれしく、心強かったことを覚えています。そして、弊社の構想と同じように、ハードウェアにIoTセンサーを搭載し一括でモニタリングしている事例も手がけていると聞いたこともご依頼の決め手となりました。
―CCTにご依頼いただいて良かったのはどのようなところでしょうか?
失礼な言い方になってしまうかもしれませんが、想定以上に機械に詳しくて驚きました。当然、機械に関しては弊社のほうが得意だと思っていたのですが、CCTさんにも相当なハイレベルのエンジニアがいらっしゃるので、課題をかなり深堀りしてくれます。そのため、弊社のエンジニアも良い刺激を受けています。ご提案いただく内容の水準も高く、「こうなったらいいけれども、おそらく技術的に難しいだろう」と考えていた課題も、具体的なプランを提示してもらうことができました。実際に、課題だった空調設備の予知保全に関するソリューションも、想定していたよりも付加価値の高い形で実現できる見込みです。
―今後の空研工業さんの戦略にも貢献できそうでしょうか?
もちろんです。どの業界も労働力不足の問題を抱えていますが、なかでもメンテナンス業界は高齢化が進んでいます。空調設備の予知保全ができるIoTソリューションが実現すれば、遠隔で稼働状況を確認できますので、メンテナンス業者さんの業務効率化にも寄与できます。いつ、どれくらいの部品の交換が必要になりそうか予測も立てられますので、ビルや施設を管理するデベロッパーさんにとっても重要な情報提供ができます。
―常に設備を最適な状態に保つことで、空調効率の安定化にもつながるのでは?
そのとおりです。現在、世界レベルでSDGs(※)への取り組みが推進されており、日本はCO2の大幅削減を目標に掲げています。今まではエアコン本体の省エネが注目されてきましたが、空調効率を高める「冷却塔」や「吹出口」などを適切に活用することで、さらに省エネへとつなげることができます。そのうえ、空調設備の予知保全が可能になれば、デベロッパーさんの環境目標達成にも寄与できると考えています。そうしたご提案ができるように、データを収集してエビデンス化することも必要ですので、CCTさんにも引き続きご協力をお願いしたいと考えています。
※SDGs(エスディージーズ):国連で採択された「持続可能な開発目標」。
―ありがとうございます。最後に、今後の展望をお聞かせください。
今後は海外進出を本格的に進めていきたいと考えています。環境問題の解決もそうですが、ビジネス的に考えても「いかに効率的にエネルギーを活用するか」はどこの国でも、業種でも共通のテーマです。現在CCTさんと取り組んでいるIoTソリューションは、海外進出の際にもコスト勝負に陥らずに付加価値で勝負できる武器となりますので、ぜひ今後も密接なお付き合いをお願いしたいですね。