コマニー

石川県小松市に本社を置き、パーティションの専業メーカーとして、オフィスや工場、病院、学校など、さまざまな場所の「間づくり」という価値を提供する、コマニー株式会社。

同社では、中期経営計画の達成に向けたプロジェクト「PJ-CHANGE(プロジェクト チェンジ)」を立ち上げ、「未来のコマニーを支える経営基盤の再構築」「ものづくりを根本から見直す」という考えに基づき、PLMの導入や周辺システムの刷新、業務プロセスの改善など、大胆な改革に取り組んでいます。

プロジェクト立ち上げの背景にはどのような課題があり、改革を前に進めるために、どのような苦労と工夫があったのか。コマニー株式会社設計本部本部長の諸田直行氏と経営推進本部 PJ-CHANGE PgMOの戸室勝太氏、プロジェクトに関わったコアコンセプト・テクノロジー(CCT)製造DX事業本部ソリューション1部の今井啓介部長との鼎談を通じて、コマニーの取り組みを紹介します。

写真右からコマニー株式会社 設計本部 本部長の諸田直行氏、経営推進本部 PJ-CHANGE PgMOの戸室勝太氏、コアコンセプト・テクノロジー 製造DX事業本部 ソリューション1部 部長の今井啓介氏
写真右からコマニー株式会社 設計本部 本部長の諸田直行氏、経営推進本部 PJ-CHANGE PgMOの戸室勝太氏、コアコンセプト・テクノロジー 製造DX事業本部 ソリューション1部 部長の今井啓介氏
諸田 直行 氏
コマニー株式会社 技術統括本部 設計本部 本部長
1996年コマニー入社後、製作設計、設計技術、医療福祉環境事業、製品開発など幅広い領域を経験。現在は設計本部長として全体統括を担う。社内変革プロジェクト「PJ-CHANGE」においてWG5・WG6のリーダーを務め、WG5では2027年稼働予定のPLMによるBOM構築を推進、WG6では3DCADを活用した設計プロセス改革に取り組み、約30年間変わらなかった設計手法の刷新を進めている。
戸室 勝太 氏
コマニー株式会社 経営推進本部 PJ-CHANGE PgMO
2006年コマニー入社。情報システム部にて、製造・設計領域の業務システムの運用管理・開発に従事。その後、中国子会社への基幹システム導入、本社の物流業務内製化プロジェクトに携わり、幅広い領域のシステム導入を経験。2021年には経営企画部門へ異動し、30年に一度の大変革プロジェクト「PJ-CHANGE」のPgMOとして、130名以上のメンバーと共に活動を推進し、2026年1月にPLMやERP・CRM等の複数システムを一斉導入した。
今井 啓介
コアコンセプト・テクノロジー(CCT)製造DX事業本部 ソリューション1部 部長
1999年グローバル展開するITサービス企業に所属して以降、一貫して製造業向けビジネスを担当。2010年よりPLMビジネスに従事。2012年からはAras Innovatorビジネスに参画し、PM、コンサルタント、アーキテクチャ、サポートまで数多くの案件を幅広く担当。2019年、CCTに入社。PLM案件のPM、コンサルタントとして活動し、2026年に部長に就任。

目次

  1. 散在するレガシーシステムと「情報の分断」が現場に与えた負荷
  2. BOM構築に挑む「パートナー選定」と全社を挙げた「推進体制」
  3. 変化を恐れる現場をどう動かすか? 徹底した「発信」の重要性
  4. PLM導入で得た手応えと、コマニーが描く「ものづくりの未来像」

散在するレガシーシステムと「情報の分断」が現場に与えた負荷

――最初に「PJ-CHANGE」の概要や目的について教えてください。

戸室:PJ-CHANGEは、ものづくりだけではなく、販売管理、工務管理、購買管理、設計管理、生産管理、物流管理、施工管理、財務管理、会計など、当社の事業を支える経営基盤そのものを再構築するプロジェクトです。

プロジェクトは、大きく二つのステップに分けて進めています。ステップ1では、ERPやCRMなどのシステム導入のほかに、製品開発に関するデータの流れを整理したうえで、Aras InnovatorというPLMを導入し、業務効率化を実現することを目指しました。現在はこのステップ1が完了した段階です。

続くステップ2では、Step1で立ち上げたフロント側のシステム・機能と連携できるBOMを整備し、現在2Dで行っている設計を3Dへ移行します。さらに、設計から製造までのデータを一気通貫でつなげる仕組みを構築し、ものづくり全体の改革につなげていきたいと考えています。

――プロジェクト立ち上げの背景には、どのような課題があったのでしょうか。

戸室:まず会社全体としては、当社の成長を支えてきたアメーバ経営(※1)を、さらに発展させる必要がありました。

※1 会社組織を「アメーバ」と呼ばれる小集団に細分化し、各部門が独立採算制をとる経営管理手法。

当社は間違いなくアメーバ経営によって平成の時代を生き抜き、成長・発展を遂げてきたのですが、考え方として部門それぞれで業務改善を進めてしまうため、個別最適になりがちでした。部門横断の全体最適を考えた改善が十分に行われず、さまざまなムダが発生していたんです。

ものづくりに関しては、長年にわたって個別最適化されてきた業務プロセスが社内に散在し、情報が分断されていたため、データ活用や生産性向上の妨げになっていました。その課題の解決に向けて、「ものづくりを根本から見直す」という考え方のもと、基幹システムや生産システムなどレガシー化したシステムの刷新、メーカーの肝となるBOMの見直しなど、大規模な改革を進めることになりました。

――例えば現場では、具体的にどのような問題が起きていたのでしょうか。

諸田:私が感じていたのは、「設計として本来すべき仕事ができていない」という課題です。

コマニーの設計業務では、お客様に提出して承認を得るための「施工図設計」と、その施工図の内容をもとに製造現場に仕様や資材などを指示する「製作設計」という、主に二つの設計をしています。

しかし、それぞれの設計の過程で、情報が一元管理できていないために、さまざまな手間がかかっていました。例えば営業担当者がお客様の要望を手書きで書いたものを解読したり、外部委託している作図担当者がわかるように補足を書き加えたり、内容をシステムに入力する際の転記ミスを探したり……といった具合です。

設計は、お客様の要望を具現化することが本来の仕事です。しかし実態としては、設計以外の業務に時間を割かなければならない状況が続き、大きな負担となっていました。設計としても、業務プロセスの改革は、必須の命題だったと思います。

BOM構築に挑む「パートナー選定」と全社を挙げた「推進体制」

コマニー株式会社 設計本部 本部長の諸田直行氏
コマニー株式会社 設計本部 本部長の諸田直行氏

――今回のPLM導入にあたって、CCTに依頼した経緯を教えてください。

戸室:このプロジェクトを支援いただいているコンサルタントの方に、それぞれのソリューションを導入可能なベンダーを調べてもらい、それを通じてCCTさんの存在を知ったことが、最初のきっかけです。

もちろんCCTさんの提案内容が良かったというのも選定の理由ですが、最終的な決め手になったのは、今井啓介さん(製造DX事業本部 ソリューション1部 部長)の存在です。

――今井さんのどのような点に、魅力を感じたのでしょうか。

戸室:豊富な経験と知識です。当社は、品番のある量産品を製造するのではなく、個別受注をしたものを毎回設計して製造につなげています。製品としては同じものでも、使いたい部屋の形状や用途など、お客様ごとに仕様が幅・高さ1mm単位で異なってきます。この、ある種特殊なものづくりをBOMにどう表現するのか、プロジェクトを進める上で非常に悩んでいました。

そんな中、今井さんとお話しした際に、当社と似た業態のメーカーのBOMの再構築を担った経験があると聞き、「この方だ」と。今井さんならば、プロジェクトの推進の大きな力になってくれると感じ、CCTさんにお願いしようと決めました。

――CCTとして最初にこのプロジェクトの話を聞いたときは、どのような印象を持ちましたか。

今井:当社はプロジェクトの中の一部、設計領域の改革をサポートする立場なのですが、最初に全体構想の資料を拝見した時は、「これを全部一気にやるのか」と、正直驚きました。

これだけの規模で改革を断行するとなると、当然ながら関係する部署も非常に多くなります。人によって意見が食い違ったり、時には利害が対立したり。立場や考え方も異なる大勢の意見をまとめながらプロジェクトを進めることは、簡単ではありません。

相当勇気がいる改革だと感じたと同時に、私たちもできる限り、周辺業務とのつながりを理解しながら開発を進めようと思いました。

――コマニー様としては、そこまで大きな改革に踏み切ることに、迷いはなかったのでしょうか。

戸室:大変な取り組みになることはわかっていましたが、個別に手を打っていても根本は変わらない、会社の将来を考えると避けて通れない道だと判断しました。

当時、たくさんの課題の現状を調査しつつ、ステアリングコミッティの会議体のなかで、それらをどう解決していくかについて、経営陣と議論しました。その会議で私が今でも鮮明に覚えているのが、「今、この課題に取り組まないと、この会社は傾いてしまう。今、変わることを選択しよう」という塚本健太社長の言葉です。トップの発言に後押しされる形で「やるなら一気にやろう」という結論となり、そしてその「今、変わる」という強い想いが、そのままPJ-CHANGEというプロジェクト名になりました。

――プロジェクトを進めるにあたって、重視した方針はありますか。

戸室:特にこだわったのは、体制づくりです。

これまでの社内プロジェクトは上層部主導になりがちで、現場が抱える課題や実態が十分に反映されず、期待した成果につながらないケースもありました。

そのためPJ-CHANGEでは、各部門の知見者に加え、実務の中心を担う中堅社員、将来を担う若手社員を意図的に参加させました。現場の業務を知る人、意思決定できる人、未来を考える人……それぞれを各プロジェクトチームの中にうまく散りばめ、全社を挙げて改革を推進していく体制を意識しました。

今井:実務のエースの方が参加したことで、私たちも課題の背景や普段の業務の流れなどを深く理解することができ、非常に開発を進めやすかったですね。

しかも、この経験を未来に引き継いでいく若手の方々、その場で意思決定ができる上長の方がメンバーに参画しているので、非常にバランスの良い体制でした。システムの刷新を進める体制づくりという点で、私たちにとっても学びの多いプロジェクトでした。

諸田:私は社内で人材教育にも携わっているので、その観点でも良い体制だなと感じました。自分たちが日々携わっている業務の課題を洗い出し、その上で、解決策やあるべき姿を考える。現場を巻き込みながら進めたことで、従業員にとっても貴重な経験を得る機会になっていると思います。

戸室:確かに、こうした大規模改革は頻繁に経験できるものではないので、自分たちの業務を見直し、未来の姿を考えて形にしていくのは、とても貴重な経験ですよね。「こういった挑戦をしたい」と考えている従業員は各部署にいますし、私自身も、変革意識を持った仲間と一緒に取り組みたいと考え、声をかけたという側面もあります。

自分たちの仕事の価値を考え、それを業務プロセスや仕組みに変えることで、その人自身も成長するでしょうし、それがひいては会社の力になると思います。

変化を恐れる現場をどう動かすか? 徹底した「発信」の重要性

コマニー株式会社 経営推進本部 PJ-CHANGE PgMOの戸室勝太氏
コマニー株式会社 経営推進本部 PJ-CHANGE PgMOの戸室勝太氏

――現在はプロジェクト全体の中で、どの段階にあるのでしょうか。

戸室:立ち上げからおよそ4年が経ちますが、ちょうど前半戦が終わったところです。業務プロセス全体で見ると、フロント側の業務プロセス改善が終わり、それに伴うシステム刷新が完了した状態です。

その中で、PLMは中心的な役割を担っています。フロント側にあるお客様の要望やレイアウト、施工図を管理するツールとして、ステップ1ではPLMを導入しました。

ステップ2では、PLMの重要性がさらに増していきます。ものづくりの要、技術情報の要となるシステムとして、製造、物流、そして最終的にパーティションを設置する工事現場まで、情報をつないでいく役割を期待しています。

加えて、今後は3D CADの活用も進めていく方針です。3D CADの中にものづくりの情報を保持し、そのデータをPLMが取得して、ものづくり側へ流していく。PLMは、まさに「扇の要」のように、社内に散在している情報を一つにつなぐ役割を担う予定です。

――これまでの段階で、プロジェクトマネージャーとして苦労したことはありますか。

戸室:新システムのエンドユーザーでもある従業員一人ひとりの納得なく、無理やり改革を進めても、うまくはいきません。いかに改革の必要性を伝えて、みんなで同じ方向を向くようにするのか、いろいろと試行錯誤しました。

やはり人間は、変化が怖いんですよね。日々の業務で慣れ親しんだシステムが変わるのは、ナイフとフォークで毎日食事するアメリカ人が、いきなり「お箸を使いなさい」と言われるようなものだと思います。

「なんで?」という不安を払拭するために、毎月開催される従業員総会で、プロジェクトの目的や進捗状況を発信したり、社長からメッセージを出してもらったりと、さまざまな啓蒙活動にも取り組みました。「変化するんだ」「みんなで変わるんだ」と言い続けることで、少しずつ理解が広がっていったと感じています。

今井:業務システムが変わることは、私たちSIerにとっても大変なことです。毎日使っているもの、自分の業務に直接関わるものが変わるとなれば、私も最初は「えっ?」となりますね。

ただ、私自身もその大変さを実感しているからこそ、なるべく今のシステムの利便性を損なわないように、新システムに移行しても皆さんが快適に業務を進められるように、といった点を意識しながら、システム移行を進めました。

PLM導入で得た手応えと、コマニーが描く「ものづくりの未来像」

コアコンセプト・テクノロジー 製造DX事業本部 ソリューション1部 部長の今井啓介氏
コアコンセプト・テクノロジー 製造DX事業本部 ソリューション1部 部長の今井啓介氏

――現在はまだステップ1を終えた段階ですが、現時点で感じている効果はありますか。

戸室:ステップ1を終えてまだ4カ月ほどなので、具体的な効果が数字で出てくるのはもう少し先だと思います。初期稼働が終わり、ようやく慣れ始めたところで、稼働後に出てきた課題を一つひとつ潰している状態です。

ただ、従業員が変化に強くなったと感じています。立ち上げたシステムの運用を、設計部門などの各部門に引き渡す中で、「自分の業務は今のやり方でいいのか」「もっと良くできないか」という視点が備わってきました。具体的なアイデアも出始めていますし、これからさらに膨らんでいくのではないかと思います。変化を前向きに受け止めるマインドが醸成されてきたというのは、うれしい効果の一つですね。

諸田:設計領域も全体の刷新はこれからになりますが、少なくとも現段階でCRM(※2)とPLMの連携が実現しました。例えば、営業担当者はお客様の要望を作図に反映するために依頼書を作るのですが、この連携によって、転記ミスを探す時間は大きく削減できています。

※2 Customer Relationship Management:顧客情報管理システム。

新システムへ移行した後も、大きな支障なく業務を進めることができており、さらにはこれまでのシステム以上に検索性が良くなってスピードが上がりました。担当者からも「非常に助かる」という声が出ていて、ステップ2に向けて良い状況になっていると感じています。

――今後のプロジェクトの計画や、コマニー様として目指すものづくりの姿について教えてください。

諸田:私は、情報をしっかりとつないだものづくりを実現したいと考えています。設計に関しては3D CADを活用しながら、それを踏まえたBOMやPLMをどう実現していくかが重要になります。そこが実現できれば、お客様の要望を具現化するという、設計本来の仕事ができるようになるはずです。

戸室:プロジェクトとしては、まずは、社内に散在している古い仕組みや、レガシー化しているシステムを一気呵成に変えていき、抜本的な業務プロセス改革を形にしていきたいと考えています。

それによって生産性と品質を飛躍的に向上させることができれば、諸田さんが言うように、各部門の従業員が本来の業務に集中し、価値を生み出すことに時間を使えるようになる。自分たちが本来やるべきこと、やりたいと思っていることに注力できるんです。一人ひとりが、働くことに幸せを感じられる、そんなコマニーをプロジェクトによって作っていきたいと思っています。

コマニー

【関連リンク】
コマニー株式会社 https://www.comany.co.jp/
株式会社コアコンセプト・テクノロジー https://www.cct-inc.co.jp/

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