目次
WEBサービスやアプリサービスに触れるとき、又は、お買い物など日常のサービスに触れるとき、ユーザーに対してカラーバランスはどのように作用しているのでしょうか。
サービスに対する期待感や信頼感は、実際にサービスに触れる前に目に飛び込んで来る配色によって沸き起こる部分もあります。
色の印象の力は、場合によっては、サービスを選ぶ際のポイントにすらなり得ます。例えば「今日は大切な接待があるから、相応しい飲食店を選ぼう」と考えたとき、仮に提供される料理が同じ物だとしても、レインボーカラーの看板を掲げる飲食店と、シックで高級感のある色使いの看板の飲食店ならば、貴方ならどちらを選びますか?
ここでは、UI/UXデザイン視点を中心に、カラーバランスがサービス、ビジネスにどのような影響力を持つのかを見ていきたいと思います。
UI/UXにおけるカラーバランスの基本とその重要性について
UI/UXデザインにおいて、カラーバランスは非常に重要な要素です。
色の印象というのは想像以上にユーザーの意識に働きかけ、WEBサービスやアプリサービスへの期待値を大きく左右する力を持っています。
例えば、「淡く明るい色=優しそう」、「暖色とブラウン系の色の組みあわせ=美味しそう」、「白を基調としてダーク系と寒色系の差し色の組みあわせ=高級でお洒落」、「ビビッドな暖色系の組みあわせ=安くてお得そう」など、カラーバランスだけで連想させることも可能です。
また、UI/UXデザインにおけるカラーバランスは、ユーザーの行動を促し、目的の達成をサポートする役割も担っています。
例えば「文字が青くなっている。リンクになっているのかな?」だとか「真っ赤なポップアップが表示された!何か注意が必要なのかもしれない!」だとか「このボタンはグレーだからタップ出来ないのかな?」など、色の力によってWEBサービスやアプリサービス内のユーザーの行動を誘導する力を持っています。
具体的に色の組みあわせのポイントについても触れてみます。基本的には、メインカラー、サブカラー、アクセントカラーの3色を中心に配色を考えるのが良いでしょう。メインカラーは、サービスの雰囲気や世界観を表現する色で、全体の75%程度を占めます。サブカラーは、メインカラーを引き立てる色で、25%程度を占めます。アクセントカラーは、ユーザーの注意を引き付ける色で、5%程度に留めるのがカラーバランスの黄金比率だと言われています。
配色を決める際に心掛けるべき事があります。それは、サービスの目的やターゲットユーザー、提供する商品やサービスの特性を考慮し、明確なメッセージを込めるということです。
例えば、ディスカウントストアのWEBサービスやアプリサービスであれば、心躍るビビッドな暖色系の配色が適しているかもしれません。一方、高級で特別な商品を扱うショップのWEBサービスやアプリサービスであれば、シックで落ち着いた色使いが効果的でしょう。
ユーザーがサービスに何を求めるかを把握し、その気持ちを盛り上げる力がカラーバランスの世界にはあります。WEBサービスやアプリサービスの入り口に立ったとき、文字情報よりも先に目に飛び込み、ユーザーの脳で処理されるのは色情報です。ユーザーの求める世界観をカラーバランスにより演出することは、最良のUXの実現への入り口とも言えます。
カラーバランスを考える際、そのWEBサービスやアプリサービスにおける文字の可読性を意識する事も重要です。特に現代では、各種サービスを利用するデバイスの大半はスマートフォンです。その限られた画面サイズの中で、いかに情報を伝えるかは重要な意味を持っています。
可読性を意識したカラーバランスについて、もう少し具体的に見ていきます。なによりも、ユーザーが情報取得する際に苦労を強いることがないように設計します。
その為に意識するべきは、テキストと背景のコントラストを最適化し、ユーザーが快適に文字情報を読み取れるようにするという事です。一般的には白と黒の組みあわせがコントラストも高く最も可読性が高いと言われています。
ただし、白地に黒文字といった組みあわせは、一部のユーザーにとってまぶしすぎるという感想を持たれることもあります。その為、WEBサービスやアプリサービスではダークモードの検討も意義があります。
UI/UXデザインにおいて、ユニバーサルデザインの考え方は非常に重要です。カラーバランスの検討には、その観点からの考えも必要です。色覚に問題を抱えるユーザーにとって、区別しにくい色の組み合わせは避けるべきです。一般的に避けるべきとして考えられる赤と緑の組み合わせがありますが、その組みあわせは、色覚に問題を抱えるユーザーにとっては、通常の色覚を持つユーザーよりも更に識別が難しいことがあります。
出来る限りそのようなカラーバランスは避けることが望ましいでしょう。
UI/UXデザインにおけるカラーバランスの基本と重要性について触れてきました。
メインカラー、サブカラー、アクセントカラーの3色を中心に、サービスの目的やターゲットユーザーに合わせて配色を決定することを基本としながら、可読性を含めたユニバーサルデザインの見地からも、WEBサービスやアプリサービスのUI/UXデザインにとってカラーバランスは非常に重要な要素である事がご理解いただけたかと思います。
カラーバランス以外のUI/UXについて詳しく知りたい方は、こちらの記事もおすすめです。
関連記事:スマートフォンデザインの作成方法。UX/UIのポイントを現役Webデザイナーが解説
ユーザーを想うカラーバランスとその実践技術
UI/UXデザインにおけるカラーバランスを考える際、色彩心理学の知見を活用することはとても意味のある試みです。
色には人の感情や行動に影響を与える力があり、適切なカラーバランスを採用する事によって、ユーザーの行動を自然に誘導することができます。これは、全ての指示を文字情報だけで伝えるよりも、ユーザーの認知的負担を軽減し、スムーズなUXを実現する非常に有効な手段と言えます。
例えば、赤は情熱や興奮、緊急性を喚起する色として知られています。この特性を活かし、重要なアクションボタンやセールの告知などに使用することで、ユーザーの注意を引き付け、ボタンタップ等の行動を促すことができます。
一方、青は信頼性や安心感を与える色とされており、金融サービスやヘルスケア関連のアプリケーションでよく使われます。青を基調とすることで、ユーザーに安全で信頼できるサービスであるという印象を与え、提供するWEBサービスやアプリサービスへの警戒心を和らげることが期待できます。
また、カラーバランスはその組み合わせによっても、ユーザーの行動に影響を与えることができます。例えば、黄色と黒の組み合わせは注意喚起の効果が高く、警告やエラーメッセージに適しています。一方、グリーンと白の組み合わせは清潔感と安心感を与えるため、環境に配慮した商品やオーガニック食品のサイトなどで効果的です。
さらに、CTA(コールトゥアクション)ボタンのデザインにおいては、色彩心理学を踏まえたカラーバランスが重要な役割を果たします。CTAボタンは、ユーザーに特定のアクションを促すための重要な要素であり、その色選びは慎重に行う必要があります。一般的に、CTAボタンには目立つ色を使用し、周囲の色と十分なコントラストを確保することが大切です。赤やオレンジなどの暖色系は行動を促す効果が高いとされ、「今すぐ購入」や「無料で試す」といった即時性のあるアクションに適しています。
一方、青や緑などの寒色系は、「詳細を見る」や「もっと読む」といった情報収集を促すアクションに適しているでしょう。
ただし、色彩心理学はあくまでも一般的な傾向を示すものであり、絶対的なルールではありません。文化や個人差によって色の受け止め方は異なるため、ターゲットとするユーザー層の特性を考慮し、デザインに反映させることが大切です。また、色だけでなく、形状やレイアウト、テキストなどの他の要素とも調和させ、総合的にユーザーにとって最適なデザインを追求する必要があります。
カラーバランスはWEBサービスやアプリサービスにとって重要な要素ではありますが、その議論の前提には「どのようなユーザーを想定しているか」というペルソナをしっかりと設定しておくことが大切です。
想定するユーザーにとって、どのようなカラーバランスがどのような意味を持つかを考える事が、サービスのカラーバランスを考える第一歩となるでしょう。
ペルソナの重要性については、こちらの記事もおすすめです。
関連記事:システム・アプリ開発におけるペルソナ設定の重要性とは?
優れたカラーバランスがビジネスに与える影響とは
UI/UXデザインにおいて優れたカラーバランスを実現することは、ビジネスに大きな影響を与えます。特に、テーマカラー(シグネチャーカラー)を厳格に定義し、一貫して使用することは、ブランドの認知度向上に非常に効果的です。
身近な例を見てみましょう。
【例その1/コカコーラ社】
飲料メーカーのコカ・コーラ社は、赤を基調としたテーマカラーを長年にわたって使用しています。この長く使い続けるということも、ブランドの一貫性を保ち世間へ自社の存在をすり込むという事にメリットがありますが、選んだ色そのものにも確かなメリットが存在します。
- 視認性と可読性
赤と白の組み合わせは、非常に高いコントラストを生み出します。これにより、ロゴやデザイン要素が遠くからでもはっきりと認識されやすくなり、視認性が向上します。特に、赤は注意を引く色であり、白との組み合わせでテキストやロゴが際立ちます。
- 感情的な影響
赤はエネルギー、興奮、情熱を象徴する色であり、消費者の注意を引きやすい力を持ちます。一方、白は純粋さ、シンプルさ、清潔感を表現します。この組み合わせにより、コカコーラのブランドは活力と信頼性の両方を伝えることができます。
- シンプルさと効果的なデザイン
シンプルなカラーパレットは視覚的に潔さを感じ、デザインが洗練されて見えます。そのように色から感じ取る印象というのは、デザイン要素としても非常に有効に機能し、ブランドメッセージをクリアに伝えることができます。
- ユーザーエクスペリエンスへの貢献
UI/UXの観点から見ると、赤と白の組み合わせはユーザーインターフェースで重要な要素を強調するのに適しています。例えば、CTAボタンや重要な情報を赤で示し、背景や補助的な情報を白で提供することで、ユーザーが直感的に情報を認識しやすくなります。
【例その2/ファミリーマート】
コンビニチェーンのファミリーマートは、緑と青と白を組み合わせた配色を、長く店舗デザインやロゴに取り入れています。店舗ロゴが存在しなくとも、緑と白と青のカラーが重なっていたら、自然とファミリーマートを連想する方も多いのではないでしょうか。
これは、ファミリーマートのカラーバランスとビジネスの関係が成功していることを意味しています。
ファミリーマートのカラーバランスには、他にも以下のようなメリットが存在します。
1.視覚的な調和とインパクト:
緑、青、白の組み合わせは、視覚的に調和が取れており、自然で安心感を与えるカラーです。緑は自然や安心感を象徴し、青は信頼性や冷静さを表します。白は清潔さやシンプルさを強調します。また、この配色は、消費者にリラックスした印象を与え、店舗環境においても居心地の良さを感じさせます。
2.高い視認性と可読性
緑と青、白のコントラストは程よく、看板や店内サイン、パッケージなどで高い視認性を保ちます。特に青と白のコントラストは可読性が高く、情報が消費者に正確に伝わります。
3.社会へのメッセージ
ファミリーマートは地域社会に根付いたブランドであり、緑は自然との共生や環境保護を連想させます。これにより、地域社会に対する親しみやすさや信頼感を高めています。
【例その3/吉野家】
牛丼チェーンの吉野家は、オレンジと黒の組みあわせを看板や店内装飾に用いています。やはり吉野家も、このカラーバランスは市民権を得ており、オレンジと黒の組みあわせを見かけると、吉野家のロゴが無くとも吉野家を連想する人は多いはずです。
吉野家のカラーバランスにも、もちろんメリットが存在します。
1.感情に働きかけるカラーバランス
オレンジは温かさ、親しみやすさ、活力を象徴し、消費者に対してポジティブな感情を引き出します。これは、吉野家の「迅速でおいしい食事を提供する」というブランドイメージと一致しています。
黒は高級感や信頼性を示し、品質への信頼感を高めます。この組み合わせにより、吉野家のブランドは消費者に対して親しみやすく、かつ信頼できる印象を与えています。
2.日本の心に通じるカラーバランス
吉野家は日本発祥のブランドです。オレンジの暖かさと黒の力強さは、日本の伝統的な「和」の美意識にも通じます。これにより、国内外で親しまれるブランドとしての地位を築いています。
これらの企業は、テーマカラーを厳格に管理し一貫性を保つことで、消費者の認知度を飛躍的に高めることに成功しました。今や、これらの色を見ただけで、多くの人がブランドを連想するようになっています。
しかし、単にコーポレートカラーを決めればよいというわけではありません。色彩心理学の知見を活用し、ブランドのメッセージや価値観に合致した色を選択することが重要です。
例えば、青は信頼性や安心感を与える色として知られています。金融機関や保険会社などが青を基調とするのは、この色が持つ心理的効果を狙ってのことでしょう。
一方、赤は情熱や興奮を喚起する色です。ファストフード店や、スポーツ用品ブランドが赤を多用するのは、活力やエネルギーを連想させるためと考えられます。
このように、色彩心理学を踏まえたカラーバランスはブランドの認知度を高め、信頼性向上にも寄与します。適切な色の選択と使用は、ブランドのパーソナリティを視覚的に表現し、消費者にメッセージを届けることになるのです。カラーバランスを意識する事で、ブランドに対する信頼や好感度を高め、長期的な関係構築に役立てることができます。
逆に、色の使い方が統一されていなかったり、ブランドイメージと合わない色を使用したりすると、混乱を招き、信頼を損ねる可能性があるので注意が必要です。
優れたカラーバランスは、ブランド認知度の向上、信頼性の構築、ビジネス成果の改善など、多方面でプラスの影響をもたらし、市場での競争力強化の一助となり得ます。
そしてなにより、ブランドとカラーの関係性を正しく成立させることができれば、そのブランドは長くユーザーに愛されるものとなるでしょう。
UI/UXデザインの視点で語るならば、カラーバランスをビジネスの成功に結びつけるためには、色彩心理学の知見を活用しながら、戦略的な色の選択と管理を行う力が求められます。カラーバランスの重要性を理解し、適切に活用することで、競争力のあるブランドを作り上げることができるでしょう。
まとめ
UI/UXデザインにおけるカラーバランスの重要さについて解説して参りました。
色彩心理学を上手に取り入れながら、サービスのターゲットユーザーに対して快適な使用感や満足感を届けることが出来ます。
色の力は、長い歴史の中で育まれたものです。言い方を変えれば先入観とも言えます。
つまり、カラーバランスを意識するということは「ユーザーの先入観を利用して、サービス提供側の思惑に乗せる」ということにもなります。
WEBサービスやアプリサービスでは、ユーザーに情報を伝え正しく使用してもらうために、文字や形や仕組みももちろん重要です。
しかし、サービスの入り口に誘導し、興味を持ってもらう為に。また、使用中の違和感を排除し、快適な操作に誘導する為に、カラーバランスの意識は非常に有効です。
色の持つ力は、UI/UXデザインにとって最も原始的で根源的な武器になり得るのです。
ユーザーの最適な行動を促すカラーバランスを意識したUI/UXを実現するWEBサービス・アプリサービスのご依頼、ご相談がございましたら、是非GeNEEまでご連絡いただけたらと思います。お客様のニーズや将来的な方針等を具体的にヒアリングした上で最適なソリューションのご提案をさせていただきます。こちらの問い合わせフォームからお気軽にお問い合わせください。
【注目コンテンツ】
・DX・ESGの具体的な取り組みを紹介!専門家インタビュー
・DX人材は社内にあり!リコーに学ぶ技術者リスキリングの重要性
・サービタイゼーションによる付加価値の創造と競争力の強化