少子高齢化を始めとする社会情勢の変化により、製造業では人手不足が進んでいます。特に足りないと言われているのはデジタル技術に精通したIT人材であり、製造業がDXを推進する上での大きな課題となっています。
本コラムでは、製造業で深刻化しているIT人材不足の現状について触れた上で、企業が組成するITチームのあり方やポイントについて解説いたします。
目次
製造業における人材不足の深刻な実態
製造業にはいま、デジタル技術の活用による生産性や品質向上が求められています。「2023年版ものづくり白書」によると、ものづくりの工程・活動においてデジタル技術を活用している企業は67.2%となっており、「生産性の向上」「開発・リードタイムの削減」「作業負担の軽減や作業効率の改善」「在庫管理の効率化」「高品質のものの製造」「仕事の再現率向上」といった導入効果を得ています。
その一方で、デジタル技術を活用していく上での課題として「デジタル技術導入にかかるノウハウの不足」や「デジタル技術の活用にあたって先導的役割を果たすことのできる人材の不足」などを上げている企業が非常に多く、IT人材不足に悩んでいる様子がうかがえます。
近年著しい技術革新により、現在ではIoT・AI・5Gといった製造業で役立つデジタル技術が多数存在しています。しかし、IT人材不足に陥っている日本企業では、そういったデジタル技術をうまく活用しきれず、国際的な競争に敗れてしまう恐れがあるのです。
ほかにも、パーソル総合研究所が公開している「労働市場の未来推計 2030」によると、2030年の国内労働人口は、需要が7,073万人に対して供給が6,429万人となり、644万人分の人材が不足すると予測されています。将来的に労働人口の減少が明白であれば、人材不足の問題を解決するための対策を打たなければなりません。
さらに、製造業の若年就業者が減少しているのは、人材を育成・指導する立場の人材の減少にも問題があると考えられます。前述した厚生労働省による「2022年版ものづくり白書」では、人材育成に関する問題として「指導する人材が不足している」ことを挙げた企業が製造業の6割以上を占めていました。
製造業で高齢就業者が増えているのは、技能継承を目的に指導を担当する人材として退職者を再雇用していることが推測されます。再雇用してまで退職者の力を借りなければ成り立たなくなっていることから、技能人材の確保が製造業の課題の一つと考えられるでしょう。
製造業の就業者の割合は低下傾向
経済産業省が行った2017年12月の調査によると、製造業の実に94%以上の企業が人手不足に陥っていることが判明しました。
直近のデータによると、日本における全産業の就業者数は、2019年、2020年と減少したものの2021年は約6,713万人、2022年が約6,723万人と増加に転じています。しかし製造業の就業者数は、2019~2021年にかけて減少し、2021年が約1,045万人、2022年が約1,044万人と横ばいで推移しています。
また全産業に占める製造業の就業者の割合は低下傾向です。新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けた2020年以降においても、その傾向に変化は見られず、直近の2022年では15.5%となっています(下図参照)。
就業者における若年層割合は低下傾向
「2023年版ものづくり白書」には、製造業就業者数の減少に加え、製造業の若者離れを示唆するデータが掲載されています。2002年からの約20年間において、製造業の就業者数が約158万人減少するなか、若年就業者(34歳以下)数は約129万人減少と大幅減が目立つ傾向です。
総務省の「労働力調査」(2023年3月、下図)によると、製造業の若年就業者数は、2002~2012年ごろまで減少基調が続いています。しかしそれ以降は、ほぼ横ばいで推移しており直近の2022年は約255万人です。
また若年就業者の割合は、2002年には製造業・非製造業が30%超だったが、2022年には25%程度の低水準となっています。
就業者における高齢者割合は増加傾向
一方、製造業における高齢就業者数は2002年以降、リーマンショックなどにより一時的に減少した時期を除いて増加傾向で推移していました。しかし2018年以降は、ほぼ横ばいとなり直近の2022年には約90万人となっています。
なお2002年の製造業における65歳以上就業者の割合は、4.7%でしたが直近の2022年は8.6%へと上昇しています。非製造業と比べると、非製造業では上昇傾向です。しかし製造業の場合、この数年は横ばいで推移しているとの違いから2022年には両者の差が5.9ポイントまで広がってきています。
生産現場全般の求人倍率が高い
上述したように現在の製造業は、慢性的な人手不足に悩まされています。経済産業省・厚生労働省・文部科学省が毎年共同で発行している「2023年版ものづくり白書」によれば、製造業の就業者は約20年間で約158万人減少している状況です。
人手不足は、多くの業界で進んでいる問題ですが、全産業に占める製造業の就業者割合も約20年間で3.5ポイント低下しているため、製造業の人手不足は他産業と比べてもより顕著に進んでいると考えられます。
データをより詳細に見ていくと、厚生労働省が公表している2023年1月時点の職種別有効求人倍率では、生産現場全般の職種を意味する「生産工程の職業」は2.0倍と高い水準です。特に「機械整備・修理の職業」は4.38倍、「金属材料製造等」は3.32倍と求人倍率が高くなっており、人手不足の深刻さがわかるでしょう。
入職率に比べて離職率が高い
国内の人員不足の要因は、少子高齢化や離職率の上昇などが挙げられますが、製造業や建設業では特にその影響が顕著です。工場や施設で人材の募集をかけても、必要な人材を確保できないケースが目立ちます。それでは、拠点の新規立ち上げや増産などの目途も立ちません。
では、一体なぜ製造業や建設業は慢性的に人材不足となっているのでしょうか。その原因を探る前に、まずは製造業・建設業の「入職超過率」で人材不足の現状を確認しておきましょう。
厚生労働省「令和4年雇用動向調査」の「産業別入職超過率」によると建設業の場合、令和3年では0.4ポイントでしたが、令和4年では-2.4ポイントと入職超過が離職超過に転じています。ちなみに入職超過率とは、入職率から離職率を引いたもので、プラスは入職超過、マイナスは離職超過です。
また製造業の場合、令和3年の-1.5ポイントに対して令和4年は−2.4ポイントと離職超過が進んでいます。
3Kのイメージが払しょくできていない
製造業が人手不足に陥っている理由には、労働力人口の減少に加え、「製造業は残業が多い」といった負のイメージを持たれやすい業界特有の問題があります。製造業は、そもそも3K(「きつい」「汚い」「危険」)と呼ばれるマイナスイメージがあり嫌遠されやすいため、ほかの業種に人材が流れやすい傾向です。
実際、製造業の現場では24時間稼働の工場も多く、シフトによっては「きつい」と感じる人もいるでしょう。また「油や化学薬品による臭いがきつい」「作業服が汚れやすい」といったことも嫌遠されやすいポイントです。
一般的に製造業の現場には、KYT(危険予知訓練)と呼ばれる危険な現象とその要因に対する感受性を高め、解決する能力を向上させるための訓練があります。実際には、このようなKYTを実践・徹底するなど工場によって安全対策の違いがあるにも関わらず、マイナスのイメージが先行することで人材が集まりにくくなっている側面もあるのです。
前述したように製造業は、3Kという負のイメージを持たれやすい傾向があります。しかし、オートメーション化が進んでいる工場では、単純作業だったり危険を伴う作業だったりは機械が担うようになっている傾向です。
人手不足の放置によって考えられる4つの悪影響
製造業の人手不足は、放置すると、回復するどころかビジネスにマイナスとなる大きな影響を与えます。
人材が成長せずに会社の競争力が低下する
人手不足が深刻化すると、従来であれば新人に任せていたような仕事も中堅・ベテランの従業員が担当しなければなりません。また、その従業員が担当していた仕事は、ほかの誰かが担当するか、その従業員が過重な負担を背負いながら本来の作業もこなす必要に迫られます。
どちらにせよ、熟練人材の酷使によって生産性低下や労務環境の悪化、さらには経験豊富な従業員が新しいビジネスにチャレンジできなくなるといった問題にまで発展しかねません。熟練人材に頼った解決は、その人材が退職すればすぐに破たんしてしまいます。
その結果、会社の競争力に悪影響を与え、人材獲得がさらに困難になる可能性もあることを覚えておきたいものです。
既存従業員の業務過多からミスが増えて顧客満足度を下げる
労働環境の不満や長時間労働による疲労から作業ミスが増加する可能性もあります。従業員のミスが増えてくると、製品の品質への影響が考えられるでしょう。品質を落としてしまえば、たちまち顧客満足度を下げてしまいます。
労働環境の悪化により離職率が増える
顧客だけではなく、劣悪な労働環境に対して従業員が不満を持ち、次々と離職するかもしれません。その結果、離職率が上がり、企業の評判も悪くなれば、新規採用も見込めなくなります。また人手不足は既存従業員の長時間労働につながり、長時間労働をせざるを得なくなれば身体ともに支障をきたすでしょう。
生産ラインストップによる倒産
負の連鎖により、最終的に生産ラインを維持できない状態に至る可能性もあります。生産ラインを維持できなければ、事業の継続は不可能です。小規模な企業であれば倒産に追い込まれることもあり得るでしょう。
これら3つの弊害は連鎖反応を起こしやすく、どの要因であっても見過ごさないほうがよいといえます。
製造業の人材不足を解消する4つの対策
製造業の人材不足を改善するには、以下の3つのポイントを見直すことが大切です。
- 労働環境の見直し
- 人材確保の範囲を見直し
- 生産システムの見直し
- 企業イメージの見直し
1.離職防止に向けた労働環境の見直し
製造業の労働環境を見直すには、「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律略(働き方改革関連法)」を基準に検討する必要があります。働き方改革関連法は、長期間労働の規制や雇用形態に関係なく待遇を確保するなど、8つの労働関連法を改正した法律です。
まずは、現在働いている従業員の離職防止のために、従業員からヒアリングするなどの方法で、労働環境の現状を把握しましょう。会社規定の労働条件もさることながら、経営層の盲点となる人間関係の問題や人事考課による仕事の評価が適正でないことも考えられます。
従業員の働きやすさは、離職防止に直結します。現場の声が届かない労働環境のままでは、意気揚々と入社した新規採用者も先輩従業員のネガティブな雰囲気に染まる可能性もあるでしょう。社内の労働環境を整えるには、既存従業員の抱えている問題点を聞き取り、メンタルケアや福利厚生の見直しなども取り入れることが大切です。
ほかに労働環境を見直す方法としては、技能者の育成をプログラム化して人材育成の効率化を図ることが挙げられます。人材育成の効率化を実現するためには、まずは既存業務の定型化が十分か確認することが大切です。「この作業はこの人でなければできない」という属人的な部分を見直さなければ、若年技術者を育てる育成プログラムの作成はできません。
また、若手技術者を育成するにはスキルアップの可視化も必要です。「現在の自分のスキルがどの程度なのか」を段階的にチェックできると、モチベーションが上がり離職防止の効果を期待できるでしょう。
2.採用範囲の拡大に向けた人材確保の見直し
人材確保の方法を見直すことも、人材不足を解消するための手段の一つです。少子高齢化により労働人口が減少傾向であれば、採用範囲を拡大してみてはいかがでしょうか。厚生労働省が発表した「2022年版ものづくり白書」によると、2021年の製造業における女性就業者数は、製造業に従事する労働者732万人中313万人で、20年前より90万人減少しています。
人材難を課題とする製造業の中では、男性を対象に雇用することが常態化している企業も少なくありません。しかし、働き方改革が進む中、子育て中の女性でも働きやすい環境が整えることで、応募者を集めることができるでしょう。勤務シフトなどを見直して多様な働き方ができる環境を整えて、女性の雇用を促進することも一つの方法です。
また、採用範囲の拡大のためには、日本人労働者だけではなく、外国人労働者の雇用を検討してもよいでしょう。外国人技能実習機構への手続きが発生しますが、技能実習制度を受けた外国人労働者を雇用することも労働力の確保につながります。技能実習制度では、機械・金属関係、食品製造、繊維・衣服関係など幅広い分野の製造業が対象となっているので、多くの企業が外国人労働者を受け入れられるでしょう。
労働人口の若年層となる15歳~34歳の働き手が減少していることから、熟練技能者の再雇用が即戦力の確保のために有効な方法です。ただし、技能人材育成の問題を抱えていて技能者の数も少なくなっているのであれば、経験の浅いシニア層の雇用も検討が必要です。その際は、既存システムを見直して、業務に必要な技術を習得しやすくすることが求められます。
・女性労働者の確保
製造業における女性就業者数の推移を示す下図を見ると、2012年から2018年までは増加基調にありましたが、2019年からは減少に転じ、2022年は約312万人となってしまいました。
また産業別の女性就業者の割合は、全産業の女性就業者の割合が2002年の41.0%から2022年の45.0%へと上昇傾向です。製造業の女性就業者の割合は、2009年ころから30%前後で横ばいに推移しており、2022年は29.9%となっています。
現在の日本社会では、育休・産休後の職場復帰を難しいと感じる女性も少なくありません。そのため、柔軟に働くことができる環境を整えたうえで女性の積極採用を進めていけば、女性の職場進出に一定の効果が期待できるでしょう。
・外国人労働者の確保
少子高齢化によって国内の労働力自体が将来的に減っていくことを考えれば、外国人採用に注力することも検討の価値ある選択肢の一つです。製造業における外国人労働者数は、2014年以降増加傾向で推移しており、2019年には約48万3,000人と、2008年に比べて約30万人増加しています。
ただ新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響を受けた2021年には約46万6,000人と前年比で減少しました。しかし直近の2022年には、約48万5,000人と再び高水準を示しています。なお外国人労働者の内訳は、以下のとおりです。
- 技能実習生:約16万8,000人
- 特定技能を含む専門的・技術的分野の在留資格を持つ外国人:約10万7,000人
製造業の雇用者の中で外国人労働者が占める割合は、直近の2022年が2008年から3.0ポイント上昇して4.8%と、外国人労働者が多くなっていることがうかがえます。
・シニア人材の再雇用
製造業において能力開発や人材育成について問題があるとした事業所の割合は、近年一貫して7割超です。2021年度調査では84.8%と2008年度の調査以降で最も高くなっています。また製造業は、全産業と比較しても一貫して高い傾向です。
人材育成については、実務経験が豊富なシニア世代を再雇用すれば特に不足しがちな指導者としての役割を担ってもらうことができます。実際、指導者としてシニア世代を再雇用する事業者はい傾向です。
技能継承のために「退職者の中から必要な者を選抜して雇用延長、嘱託による再雇用を行い、指導者として活用している」と答えた事業所は53.9%となっています。
3.生産システムの見直し
労働環境や採用範囲の見直しは、生産システムの見直しがなければ成り立ちません。製造業における技能人材育成の課題も、人ではなくシステムの見直しにより解決の糸口が見えてきます。地域やタイミングによっては、AI(人工知能)やIoT(モノのインターネット)の導入に補助金が活用できる場合もあります。
例えば、公益財団法人滋賀県産業支援プラザでは、2022年に「製造現場へのAI・IoT導入促進補助金」の募集(2022年6月24日受付終了)をしていました。補助金対象企業には、AIやIoTの導入のためにかかった経費の半分(上限150万円)が補助される制度です。補助金制度には、事業地域や申請期間などが定められているので、補助金制度の利用を希望する場合は、管轄地域の最新情報を収集することをおすすめします。
生産システムの見直しは、業務効率化や労働生産性の向上につながるだけではありません。以下のようなメリットも期待できます。
- 既存生産システムに反映できない属人化された業務の解消
- 技能育成にかかるコストの削減
システムの見直しは、自動化された生産ラインにより省人化を実現します。人手不足の課題を抱える製造業では、生産ラインの人数を削減することにより、本来の適正人員構成を見直せることは大きなメリットといえるでしょう。
4.メディア戦略を活用した企業イメージの見直し
製造業の人手不足を解消するには、企業自体のイメージアップも重要なポイントです。情報の入手が容易な現代では、就職希望者がインターネットを活用して企業情報や企業の評判を事前に調べられます。
その行動をふまえて、自社のホームページでは積極的に採用活動をアピールしましょう。若い世代の中では、製造業に対して3Kのイメージが浸透しているかもしれません。そのネガティブなイメージを変えるためには、メディアの活用も有効です。
- テレビCMに広告を出稿
- 企業を紹介するウェブメディアの企画に掲載
- ウェブ広告を出稿
- 自社オウンドメディアを運営
- SNSアカウントを使った情報発信
これらのメディア戦略は、企業をイメージアップするために有効な取り組みです。広告出稿の費用対効果を数値化するのは難しいですが、企業のイメージアップのためのPR活動として、無理のない予算を組み、長期的に取り組むとよいでしょう。
製造業におけるITチームビルディングの3パターン
貴重なIT人材を採用できたとしても、その人材を最大限に活用できなければ意味がありません。よって、製造業の企業がIT人材を用いたDX推進や経営改善に取り組む際にまずすべきことは、企業の目的を認識したうえでDXを推進できる「ITチーム」の組成です。DXによって目指す姿を明確にした上で、ITチームの責任者を社内から選定し、その責任者が主体となってチームを組成していく必要があります。
では、IT人材が不足している状況下において、製造業のITチームビルディングはどのような形が考えられるのでしょうか。ここでは、3つのパターンを紹介します。
【パターン1】自社のIT人材のみでチームを組む
1つ目のパターンは、自社で確保しているIT人材のみでチームを組むというものです。自社のIT人材でチームを組むことには、自社の業務や課題に精通している、コントロールがしやすい、といったメリットがあります。
そのためにはまず、自社の従業員としてIT人材を確保しなければなりません。企業がIT人材を確保する方法として考えられるのは、次の2つです。
- 新卒および中途採用でIT人材を受け入れる
- 既存の従業員をIT人材として育成する
IT人材を受け入れる場合は、事前にIT担当部門を立ち上げ受け入れ体制の整備が必要となります。その上で、IT人材の待遇を厚くするなどして優秀な人材を集める工夫をしなければなりません。
IT人材を育成する場合も、自社内では指導できる人材が不足しているため、外部のセミナーや教育プログラムを活用する必要があるでしょう。デジタル技術を扱うスキルはすぐに身につかないため、中長期的な目線で育成していかなくてはなりません。
【パターン2】外部のベンダーに100%委託する
2つ目のパターンは、外部のベンダーに100%委託するというものです。日本ではベンダー側にIT人材が集中しており、製造業に向けたサービスを展開している企業も多数存在します。自社でIT人材を確保できない場合は、そういったベンダーの力を借りてDXを推進するのが現実的な選択肢といえるでしょう。
ただし、ベンダーに100%委託してしまうことには次のような課題もあります。
- 自社の目指す姿や要望に合致しない形で進んでしまう恐れがある
- 自社にノウハウが蓄積されず、ブラックボックス化してしまう
- セキュリティ的に情報漏洩が起きるリスクが生じるケースもある
こういったリスクを避けるためには、自社の人材も積極的に参画してベンダーと密接にコミュニケーションをとったり、自社でもIT人材を育成してノウハウを蓄積していったりする必要があるでしょう。
【パターン3】社内外のIT人材で混成チームを組む
3つ目のパターンは、自社の人材と外部のIT人材で混成チームを組むというものです。昨今では、「自社でIT人材を確保するのは難しいが、ベンダーに丸投げするのはリスクが高い」といった判断からこのパターンを選択する企業が増えており、自社の人材が主体となってマネジメントをしながら、外部のベンダーを活用してDXを進めています。
このパターンでは、必ずしも自社の人材がITに精通している必要はありません。しかし、どういった技術が有効なのか、何をどこまで実現できる技術なのか、といった知見を学んでベンダーに寄り添う姿勢が重要です。また、ベンダー側にも単に要望に対する実現手段を回答するだけではなく、自社の目指す姿や経営課題を理解して提案をするといったように、目線を広げてもらう必要があります。
このように、社内外の人材でチームを組むことには従来とは異なる難しさがありますが、IT人材不足が深刻化する状況下において効果的な選択肢の一つになっていくと考えられます。
製造業におけるITチームビルディングのポイント
製造業がITチームビルディングを行う上でまず重要なことは、「自社の誰を責任者に据えるか」です。DXという、難しいけれども将来的な価値が高いテーマに対して真摯に向き合い、チームを経営していける人材が求められます。そういった観点で考えると、責任者は必ずしもITスキルの高い人である必要はなく、むしろビジネスリーダーとしての特性を重視すべきです。
また、責任者がどういうチームを作りたいかを考え、それに則って必要な人材を取り込んでいくことも重要です。方針が定まったら上記で紹介したように自社の人材のみのチームにするのか、または外部のベンダーのみで完結させるのかといった組み立て方はもちろん有効です。最終的には人材の「所属」にはこだわらず、目的に合致した人材を柔軟に選定するようにしましょう。
なお、IT人材不足が深刻化している状況下において、自社のIT人材のみでチームを組むのは難しくなっています。しかし外部のベンダーに100%委託してしまうと、自社の知見やIT人材が育たないデメリットのほか、自社の目的を達成できなくなるおそれもあります。このような課題を解消するためにも、社内外のIT人材で柔軟にチームを組成してDXに取り組んでいくのがおすすめといえるでしょう。
まとめ|IT人材を確保してDXを推進したい製造業の方へ
今回は、製造業で深刻化しているIT人材不足の現状を紹介した上で、ITチームビルディングのあり方やポイントについて解説しました。製造業がDXを推進するためには、IT人材不足という壁を乗り越える必要があります。自社でIT人材の確保に取り組みつつ、外部の人材も積極的に取り入れてITチームを組成することを検討しましょう。
【注目コンテンツ】
・DX・ESGの具体的な取り組みを紹介!専門家インタビュー
・DX人材は社内にあり!リコーに学ぶ技術者リスキリングの重要性
・サービタイゼーションによる付加価値の創造と競争力の強化