DXツールを選ぶポイントとは?事例から学ぶコツや注意点
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DXの推進にはツールの導入が欠かせません。業務の効率化はもちろん、DXツールはさまざまな経営課題を解決に導いてくれます。ただし、ツールの導入にはコストや労力がかかるため、導入環境や目的を踏まえて自社に合ったものを選ぶ必要があります。

目次

  1. 代表的なDXツールを紹介
  2. DX推進にツールが必要な理由
  3. DXツールの考え方とは?単なるIT化やデジタル化との違い
  4. DXツールを選ぶ3つのポイント
  5. DXツールの導入で注意したいこと
  6. DXツールの導入前にはビジョンを明確にしよう

代表的なDXツールを紹介

業務効率化やコスト削減を実現するには、どのようなDXツールを導入すれば良いのでしょうか。ここからは経営課題や目的に分けて、代表的なDXツールをまとめました。

テレワークの推進につながる「オンライン会議システム」や「ビジネスチャット」

分かりやすいDXツールとしては、遠隔地でも顔を合わせてミーティングができる「オンライン会議システム」や、メールの代用として使われる「ビジネスチャット」があります。近年ではテレワークが注目されている影響で、これらのDXツールを活用する企業が増えました。

中でも、さまざまなコミュニケーション機能(ファイルやスケジュール共有、ビデオ通話など)を併せもつDXツールは、「コラボレーションツール」と呼ばれています。

<オンライン会議システムやビジネスチャットの活用例>
・文字起こし機能で議事録を作成しながら、社内のミーティングを行う
・他社とのコミュニケーションツールとして活用する
・ファイル共有やデータ等の納品作業をビジネスチャットで行う

これらのDXツールは、従業員の働き方改革や移動負担の軽減につながります。一方で、情報漏えいやコミュニケーション障害(タイムラグや通信障害など)のリスクもあるため、導入範囲は慎重に判断しましょう。

代表的なオンライン会議システムには「Zoom」「Microsoft Teams」があります。どちらも無料で利用できますが、会議時間やサービス内容に限りがあるため、ビジネスで本格的に活用する場合は有料版の導入を検討しましょう。

【ZOOMの料金と主な機能】

プラン 月額料金 主な機能
ベーシック 無料 40分までのミーティング
100名までの参加
プロ 1,770円/名 30時間までのミーティング
5GBのストレージ
ビジネス 2,499円/名 300名までの参加
上限なしのホワイトボード
ビジネスプラス 2,865円/名 地域内無制限の電話
翻訳された字幕
エンタープライズ 問い合わせ 1,000名までの参加
無制限のクラウドストレージ

【Microsoft Teamsの料金と主な機能】

プラン 月額料金 主な機能
Microsoft Teams 無料 60分までのミーティング
100名までの参加
Microsoft Teams Essentials 599円/名 300名までの参加
10GBまでのストレージ
Microsoft 365 Business Basic 899円/名 Web版とモバイル版のOffice製品
Microsoft 365 Business Standard 1,874円/名 デスクトップ版のOffice製品
ウェビナー開催・出席者登録・レポート機能

代表的なビジネスチャットには「Chatwork」「Slack」があります。ビジネスチャットを利用すれば、リモートワーク下でも円滑なコミュニケーションが可能です。無料で利用可能ですが、上位機能は有料プランに登録しないと使用できないことがあります。

【Chatworkの料金と主な機能】

プラン 月額料金 主な機能
フリー 無料 チャット参加数の制限なし
メッセージ保存数の制限なし
ビジネス 700円/名 ユーザー数の制限なし
メッセージ閲覧の制限なし
エンタープライズ 1,200円/名 チャットログのエクスポート
高度なセキュリティ機能

【Slackの料金と主な機能】

プラン 月額料金 主な機能
フリー 無料 90日間のメッセージ確認
1対1のミーティング
プロ 925円/名
(年払いの月額換算)
メッセージ閲覧の制限なし
最大50人までのハドルミーティング
ビジネスプラス 1,600円/名
(年払いの月額換算)
サービス品質保証契約
全メッセージのデータエクスポート
Enterprise Grid 問い合わせ 組み込みの従業員ディレクトリ
サービス利用規約のカスタム

事務処理や意思決定のスピードアップを図れる「ワークフローシステム」ペーパーレス化を促進する「電子決裁システム」

ワークフローシステムは、主に事務処理を電子化するためのDXツールです。業務内容をシステム上で定義すると、状況をモニタリングしながら書類作成などが自動的に行われます。

<ワークフローシステムの活用例>
・注文内容に応じて伝票や請求書を自動作成する
・出張報告や休日申請などをネットワーク上でやり取り(申請や承認)する
・稟議書を電子化し、進捗状況や内容を常にモニタリングする

ワークフローシステムの導入メリットは、単純な作業や意思決定のスピードアップを図れる点です。また、各書類をデータで管理する形になるため、ペーパーレス化も実現できるでしょう。

ただし、中には定義化が難しい業務もあるので、導入前には業務プロセスや社内ルール、既存システムの見直しが必要です。

電子決裁システムは、稟議書や契約書などの作成・保存・管理までを一元化できるツールです。書類作成はもちろん、捺印や承認作業、送付などもオンライン環境で行えるため、ペーパーレス化を推進する効果が期待できます。

<電子決裁システムの活用例>
・稟議書を社内外に共有し、確認が終わったら電子署名をする
・契約書のデータを取引先に送付し、電子署名によって承認してもらう
・リマインドの日時を設定し、契約書の確認忘れや合意漏れを防ぐ

電子決裁システムは契約・承認までのスピードアップにもつながりますが、多くの添付資料が必要な書類や、紙での提出が求められる書類(会計関係など)には適しません。また、共有範囲を誤ると、契約内容などが漏えいするリスクもあるため、扱い方を十分に理解しておく必要があります。

代表的なワークフローシステム・電子決裁システムには「ジョブカンワークフロー」「コラボフロー」があります。どちらもクリック操作で処理や管理が完了するため、直感的に作業できます。連携サービスも提供しているため、社内で導入済みのシステムとも連携可能です。

【ジョブカンワークフローの料金と主な機能】

プラン 月額料金 主な機能
ジョブカンワークフロー 300円/名 申請書の作成・申請・承認
申請書の電子化
ジョブカン経費精算 400円/名 ICカード読み取り
自動仕訳
経費精算・ワークフローセット 600円/名 ジョブカンワークフロー・ジョブカン経費精算
両方のサービス

【コラボフローの料金と主な機能】

プラン 料金 主な機能
スタンダードプラン 月額:500円/名
年額:5,880円/名
申請書の作成・申請・承認
ワークフローの作成
プレミアムプラン 月額:800円/名
年額:9,400円/名
帳票出力
英語対応

事務作業を自動化かつ高速化する「RPA」

RPA(Robotic Process Automation)は、主にパソコン上での業務プロセスを自動化できるツールです。データの入力や転記などを高速で行えるため、事務作業の軽減に役立ちます。

<RPAの活用例>
・顧客データなどを複数のシステムに入力する
・登録済みのデータを別のシステムに転記する
・システム内のデータを参照してレポートを作成する

RPAの導入メリットとしては、業務効率化による人材不足の解消や、コア事業への注力が挙げられます。運用までに時間はかかりますが、単純作業から解放された従業員のモチベーションが上がる可能性もあります。

代表的なRPAには「WinActor」「RoboTANGO」があります。1つのライセンスで複数のPCにインストールできるツールもあれば、PC1台につき料金が請求されるツールもあります。

【WinActorの料金と主な機能】

プラン 年額料金 主な機能
ノードロック
ライセンス
(フル機能版)
90万8,000円/台 シナリオ編集・保存・読込・実行
ブレイクポイント・監視ルール・プロパティの画面表示
ノードロック
ライセンス
(実行版)
24万8,000円/台 シナリオ読込・実行
フローティング
ライセンス
問い合わせ 複数のPCにインストール可能

【RoboTANGOの料金と主な機能】

プラン 月額料金 主な機能
基本プラン 5万円+初期費用10万円 RPA作成フォロー
定型作業の自動化
複数のPCにインストール可能
リモレクライトプラン 8万円+初期費用15万円 基本プランのサービス
毎月のオンラインレクチャー
複数のPCにインストール可能

顧客データの記録・管理を一元化できる「CRM」過去の実績をもとに営業活動を分析できる「SFA」

CRM(Customer Relationship Management)は、企業と顧客のやり取りをデータとして記録・管理できるツールです。顧客情報の管理を一元化できるため、ニーズに合わせた素早い対応が可能になります。

<CRMの活用例>
・登録した顧客データをもとに経営分析をする
・対応履歴を確認しながら、ひとり一人の顧客に合わせたサービスを提供する
・ニーズの変化をいち早く察知し、商品やサービスに反映させる

CRMの登録データは簡単に社内共有ができるため、経験が少ない人材も活用しやすくなります。ただし、高度な分析には十分なデータが必要であり、効果が表れるまでに時間がかかることもあります。

SFA(Sales Force Automation)は、営業活動におけるデータを収集・管理するツールです。基本的な顧客情報に加えて、案件の進捗状況や商談内容も記録できるため、過去の実績をもとに顧客へのアプローチを分析できます。

<SFAの活用例>
・営業活動の費用対効果を分析する
・営業活動の中身を見える化し、不安要素や課題を洗い出す
・長く訪問していない顧客を見つけて営業機会を増やす

売上アップに貢献するツールですが、SFAの導入では入力項目に注意する必要があります。入力作業に時間がかかり過ぎると、かえって営業効率が下がってしまう可能性もあるので、必要最低限の項目数に留めましょう。

代表的なCRM・SFAには「Sales Cloud」「kintone」があります。基本的な機能が搭載されたツールは、数千円から利用可能です。「Sales Cloud」の上位プランは高価ですが、AIを活用した管理や予測が利用できます。

【Sales Cloudの料金と主な機能】

プラン 月額料金 主な機能
Starter 3,000円/名 取引先・商談の管理
Professional 9,600円/名 売上予測管理
Enterprise 1万9,800円/名 営業のプロセス管理
Unlimited 3万9,600円/名 予測AIの活用
Einstein 1 Sales 6万円/名 生成AIを含んだEinstein Copilot

【kintoneの料金と主な機能】

プラン 月額料金 主な機能
ライトコース 780円/名 データの蓄積・一覧・検索
日報・案件管理・タスク管理
スタンダードコース 1,500円/名 外部サービスとの連携
プラグイン・拡張機能の利用

マーケティング全体の改善に役立つ「MA」

マーケティング全体を改善したい場合は、「MA(Marketing Automation)」の導入を検討してみましょう。MAには顧客データの登録・分析機能に加えて、簡単な業務の自動化や顧客をスコアリングする機能も備わっています。

<MAの活用例>
・顧客の行動ややり取りなどの情報をデータ化する
・メルマガやSNSでの情報発信を自動化する
・スコアリング(関心度など)によって見込み顧客を探す

MAでは優先度の高い見込み顧客を探し、各顧客に合わせたチャネルで情報発信ができます。ただし、そのためには膨大なデータや分析が必要になるので、効果が表れるまでにはある程度の時間を要します。

代表的なツールには「SATORI」「ferret One MA」があります。初期費用がかかるうえ、効果が出るまで月額料金を払い続けなければならないため、料金の支払い能力を考えてツールを選びましょう。

【SATORIの料金と主な機能】

料金 主な機能
初期費用:30万円
月額費用:14万8,000円
フォーム作成
セグメント
パーソナライズ
商談管理

【ferret One MAの料金と主な機能】

料金 主な機能
初期費用:10万円
月額費用:10万円~
(プランによって異なる)
Webサイト編集
連携サービスのチャット通知
商談予約フォーム
AIアシスタント機能

高度な経営分析や意思決定に役立つ「BI」

BI(Business Intelligence)は、営業や人事などの経営全体に関するデータを収集・分析できるツールです。ツールによっては高度な分析機能や予測機能が備わっているため、BIは経営分析や意思決定に役立ちます。

<BIの活用例>
・分析がしやすいように、重要な経営データをグラフ化する
・顧客のニーズに合わせてデータの収集や抽出を行う
・分析したデータをレポートや報告書として出力する

導入のメリットが大きい部門としては、業績報告や決算情報の処理が必要になる経理が挙げられます。また、適材適所な配置が求められる人事部門や、効率的なアプローチが求められる営業部門・マーケティング部門でも導入効果を期待できるでしょう。

なお、自社サーバーやレンタル代が不要なBIもありますが、機能性やセキュリティ性が十分ではないサービスもあるので注意してください。

代表的なBIには「Power BI」「MotionBoard Cloud」があります。BIを選ぶ際には、自社で利用しているデータやレポートへの対応可否を確認するとよいでしょう。例えば「MotionBoard Cloud」では、製造業で多く利用される管理図やヒストグラム、回帰分析などが活用できます。

【Power BIの料金と主な機能】

プラン 月額料金 主な機能
Microsoft Fabric
(無料アカウント)
無料 ビジュアル分析
レポート作成
Power BI Pro 1,499円/名 レポート・ダッシュボードの公開
コンテンツの共同作業
Power BI Premium 2,998円/名 AIの活用
100TBのストレージ
Microsoft Fabric 74万8,875円/SKU(※) 組織単位での利用
※最低料金

【MotionBoard Cloudの料金と主な機能】

プラン 月額料金 主な機能
Entry 1万5,000円/10名 集計表
データストレージ
Standard 3万円~/10名 ダッシュボード表現
Professional 6万円~/10名 データベースとの接続
loT 9万円~/10名 リアルタイムのAPI連携

ERP

ERPとは、販売・生産・会計など企業の基幹業務を一元管理するシステムです。これまで別々に管理されていたデータを一元管理できるようになるため、業務改善や生産性の向上が実現し、イノベーションを起こしやすい環境の構築が可能です。

<ERPの活用例>
・販売・在庫・会計などのデータを一元管理する
・蓄積データによる客観的な経営判断をする
・データ収集・解析を完全に自動化する

データを一元管理すれば、高度な解析が可能になるため、より正確な経営判断を下せるようになります。またデータ収集や解析を自動化する仕組みを作ることができれば、従業員の負担なくデータを活用できるようになるでしょう。

ただしデータの管理や業務プロセスを導入したERPに合わせることが必要です。これにより、業務が非効率になる場合もあるため、自社に適したシステムかどうかを導入前に確認しておきましょう。

代表的なERPには「ZAC」「mcframe」があります。ERPは、データの管理や経営判断に活用するため、使いやすく見やすいシステムを選ぶことが必要です。業界特有のデータ管理や解析が必要な場合は、実行の可否をあらかじめ確認しておきましょう。

業界に特化したERPを導入すれば、業界で多用される管理・解析ツールが標準搭載されていることもあります。例えば「mcframe」は、製造業に特化したERPであり、品質管理や生産計画などものづくりに役立つ機能が利用できます。

ERPの料金は、規模や機能、業界によって大きく異なり、初期費用を例に挙げても0円から始められるものから数百~数千万円かかる製品などさまざまです。また毎月の運用費用に加えて保守費用もかかります。保守費用に年間数百万円ほどかかる場合もあるため、注意が必要です。

関連記事:デジタルは日本の製造業を変革し続けられるか
ビジネスエンジニアリング代表 羽田雅一氏が登場

名刺管理ツール

名刺管理ツールは、社員が受け取った名刺をデータ化し、会社全体で活用できるようにするシステムです。名刺の入力を省力化し、顧客の情報を社内へ迅速に共有できます。顧客の情報をデータ化できるため、効率的な引き継ぎや連携が可能です。

<名刺管理ツールの活用例>
・OCRによるデータ化で入力作業を最小限にする
・社内で顧客のデータを共有し、連携を容易にする
・名刺管理ツールを顧客のアドレス帳として利用する

名刺管理ツールは、顧客の情報を容易に共有できる便利なシステムですが、個人情報を扱うため慎重な管理が求められます。最悪の場合、顧客の個人情報が漏えいする事態にもつながるため、強固なセキュリティ体制を取るようにしましょう。

代表的な名刺管理ツールは「Wantedly people」「Sansan」などです。名刺管理ツールの料金形態は、月額制が多い傾向ですが、「Wantedly people」のように無料で利用できるツールもあります。ただし高度な管理機能やオプションサービスは、有料ツールにしかない場合もあるため、必要な機能に応じてツールを選択するようにしましょう。

<有料の名刺管理ツール「Sansan」で利用できる機能>
・名刺のタグ付け・グルーピング
・顧客との接点情報の集約・管理
・メール署名の取り込み
・オンライン会議で活用できるデジタル名刺の発行
・メール・電話・面会などの接触記録
・顧客の企業データダウンロード
・組織改編・人事異動の通知
・取引のリスクチェック
・外部システム連携

※Sansanの初期費用・月額費用は問い合わせ

関連記事:Salesforceと連携できるおすすめの名刺管理ツール8選

DX推進にツールが必要な理由

そもそも、DX(デジタルトランスフォーメーション)とは何を指すのでしょうか。経済産業省が2020年11月9日に策定した「デジタルガバナンス・コード2.0」によると、DXは以下のように定義されています。

企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること。

(引用:経済産業省「デジタルガバナンス・コード2.0」)
DX

DXはビジネス全体の変革と競争力の向上が目的であり、その推進には「データ」と「デジタル技術」が用いられます。実際にどのようなものが活用されているのか、いくつか例を見てみましょう。

データの例デジタル技術の例
・ニーズを分析するための顧客データ
・市場分析に用いる他社データ
・開発計画を立てるための製品データ
・業務解析や画像処理などに使うAI技術
・情報収集や共有などに用いるIoT
・情報インフラの役割を担うクラウド

あらゆる観点からビジネスを変革するには、事業や競合、市場などに関する膨大なデータが必要です。また、収集したデータを最大限活用するために、AIやIoTといったデジタル技術も欠かせません。

これらの役割を担う存在として、DX推進では効率的かつ高精度に作業を進めるツールが必要になります。

DXツールの考え方とは?単なるIT化やデジタル化との違い

DXの推進では、現在抱えている課題や将来のビジョンを踏まえて、費用対効果の高いツールを選ぶことが重要です。方向性を間違えないように、「IT化」や「デジタル化」との違いも確認しておきましょう。

主な違いDXIT化デジタル化
意味 データやデジタル技術で、ビジネス全体を変革すること 情報技術で業務を効率化すること アナログな業務をデジタルへ移行させること
目的 組織や業務などの変革、競争力の向上 業務プロセスの効率化 業務プロセスの効率化
範囲 社内、社外 主に社内 主に社内

IT化とデジタル化は、主に社内の業務プロセスを効率化する目的で行われます。例としては、情報共有や会議にチャットツールを導入する施策(IT化)や、紙の資料からデータに移行するペーパーレス化(デジタル化)が挙げられます。

一方で、DXではビジネスモデルや会社全体を変革するために、社外に向けても施策を打ち出します。同業他社と協力してデータや販路を共有するなど、業界構造を変えるために複数社で取り組む例も少なくありません。

つまり、IT化やデジタル化はDXの手段であり、DXを推進するにはさらに視野を広げる必要があります。

無料eBook

  • 製造業DXの教科書
    図版と事例でわかる|製造業DXの教科書

    世界市場での競争の激化や労働人口の減少などが進む今、日本の製造業においてDX(デジタル・トランスフォーメーション)の推進は不可欠です。 このeBookでは、製造業のDXの全体像について詳しく解説します。 DXに必要な技術を製造プロセスごとに紹介するほか、具体的な活用事例、製造業DXの今後の展望まで幅広く理解できる内容になっています。


DXツールを選ぶ3つのポイント

一つの種類だけを見ても、DXツールにはさまざまなものがあります。費用対効果の高いツールを選ぶには、以下のポイントを意識することが重要です。

1.経営課題を解決できるか

DXツールの選ぶ際には、「経営課題を解決できること」が前提になります。いくら高性能なツールを選んでも、目的を達成できないと導入メリットはありません。

そのため、まずは以下の流れで経営課題を明確にすることから始めましょう。

<経営課題を明確にする流れ>
1.明確な経営目標を立てる
2.業務プロセスを見える化する
3.現状での課題を抽出する
4.どのようなデータやシステムがあるか確認する

自社の経営課題が分かったら、次はその課題を解決するためのツールを調査します。なお、高度なシステムの実装が難しいこともあるため、「技術的に実現できるか」も確認しながら計画を立てましょう。

2.導入のハードルやコスト

DXツールには技術的なハードルの他、コスト面の問題もあります。多くの費用や労力がかかると、新たな経営課題に直面するリスクがあるため、導入前には実現難易度のチェックも必要です。

<実現難易度のチェック項目>
・初期コストや維持コストが大きすぎないか
・どれくらいの売上アップやコスト削減を見込めるか
・利用できるデータが不足していないか
・必要なシステムが構築されているか
・高精度なツールではなくても一定の効果を見込めるか
・業務プロセスの大幅な変更は必要ないか
・ステークホルダーへの影響は大きくないか

また、定量的・短期的な効果が見えづらいツールの場合は、従業員のモチベーションが下がることも考えられます。そのため、「いつまでに効果が表れるのか」についても、構想段階で明確にしておきましょう。

3.現場の担当者が使いやすいか

導入したDXツールを使うのは、あくまで現場の担当者です。長期的には負担が減る場合であっても、いきなり業務プロセスが変わると従業員はストレスを抱えます。

そのため、DXツールを選ぶ前には現場へのヒアリングを徹底し、従業員が求めているものを明確にしましょう。上層部と現場の意思を統一させることが、DXの成功につながります。

DXツールの導入で注意したいこと

経営課題だけに目を向けてDXツールを導入すると、ユーザーや従業員に不利益が生じることもあります。周りから反発されるリスクを抑えるために、導入時には以下の注意点を意識しましょう。

既存システムとの連携や拡張性

DXツールは万能ではないため、既存システムと連携できないことがあります。この場合は、既存システムに合うツールを開発するか、導入予定のツールに合わせて業務プロセスを見直さなければなりません。

いずれの方法も大きなコストがかかるため、導入したいDXツールを見つけたら「既存システムと連携できるか」「どの業務まで拡張できるか」を確認しましょう。

複雑な機能やUIはかえって扱いづらい

高性能なツールはDXの範囲を広げられますが、機能やUIが複雑化し過ぎると、以下のような弊害が生じるかもしれません。

<複雑なDXツールによる弊害>
・使わない機能が多く、導入コストや維持コストが無駄になっている
・操作が難しく、一定のスキルがある従業員しか扱えない
・売上はアップしたものの、業務自体の負担は重くなった

中でも製品として販売されているDXツールは、企業によって使用感が変わります。対象範囲を無理に広げる必要はないため、まずは自社の従業員でも扱えるものを探し、もし見つからない場合は社内で構築することを考えましょう。

DXツールはアップデートや見直しが必要

DXツールの導入後にプロセスやルールが変わった場合は、アップデートや見直しが必要です。アップデートなどを外注すると、その都度コストがかかったり時間を要したりする可能性があるので、基本的には社内でのメンテナンスを考えましょう。

DX人材は獲得競争が激化しているため、ツール選びと同時並行で採用活動や人材育成にも取り組むことが重要です。

DXツールの導入前にはビジョンを明確にしよう

DXツールは、経営課題の解決のために導入するものです。高度なツールを導入しても、期待した効果が表れないとメリットはありません。

現場の声にも耳を傾けながら、まずは導入のビジョンを明確にすることから始めましょう。

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