【ものづくりワールド東京 2024】レポート2 製造業の“いま”が見える、日本最大級の製造業のビジネスイベント

日本最大級、出展社数は2,100社に及び、3日間の来場者数は、69,717名に及んだ「ものづくりワールド 2024 東京」が、2024年6月19日(水)~21日(金)、東京ビッグサイトで開催されました。

今回は、レポート第2弾をお届けします。

ものづくりワールド東京2024

目次

  1. 10のテーマに分かれて、ものづくりに関する展示が行われた
  2. 注目企業その1 マブチモーター株式会社【機械要素技術展】
  3. 注目企業その2 双葉電子工業株式会社【機械要素技術展】
  4. 注目企業その3 日本電子株式会社【次世代3Dプリンタ展】
  5. スマートファクトリーの最適解は協働ロボットの活用か

10のテーマに分かれて、ものづくりに関する展示が行われた

各ブースでも活気あるプレゼンテーション、商談が行われ、通路では行き交う人がすれ違うのに困るようなシーンも見受けられました。今回は、「機械要素技術展」「次世代3Dプリンタ展」を中心に紹介します。

<今回の展示10テーマ>

『設計・製造ソリューション展』CAD、CAE、ERP、生産管理システムなどの製造業向けITソリューションなど
『機械要素技術展』モーター、ベアリングなどの機械部品や切削、プレスなどの加工技術
『ヘルスケア・医療機器 開発展』医療機器、ヘルスケア機器の開発、製造技術や部品、計測器など
『工場設備・備品展』工場向けの省エネ製品、物流機器、メンテナンス製品、安全用品など
『ものづくりAI/IoT展』製造業向けIoTプラットフォーム、AIRソリューション、通信機器など
『次世代3Dプリンタ展』AM、3Dプリンタ、材料、受託造形サービスなど
『計測・検査・センサ展』製造業向け計測器、検査機器、試験機、計量器、センサ、カメラなど
『製造業DX展』製造業の業務デジタル化、DXを推進するIT製品、サービスなど
『ものづくりODM/EMS展』開発・製造ODM、EMSなどを得意とするアウトソーシングソリューション
『製造業サイバーセキュリティ展』製造業のセキュリティ対策を推進するIT製品、ソリューションなど

注目企業その1 マブチモーター株式会社【機械要素技術展】

マブチモーター株式会社は、かつては玩具用の「水中モーター」などで知られた、日本を代表する「小型直流モーター専業メーカー」です。創立以来、小型直流モーターとその周辺領域に特化し、小型・軽量・高効率の製品を市場に供給し続けています。

これまで、玩具や家電など、時代の要請に応じて主力の用途市場を転換してきており、その主力事業は、自動車電装機器分野とライフ・インダストリー機器分野で、現在は「Mobility(EV、AGV・AMR、パーソナルモビリティ)」「Machinery(ロボット、産業設備)」「Medical(医療機器)」の「3つのM領域」における成長を目指しています。今回、これらの分野で活用される小型・軽量・高効率のモーターとそれらを活用した機器が展示されていました。

「3つのM領域」について解説したパネル展示
「3つのM領域」について解説したパネル展示

現在の主力市場である自動車電装機器用の小型モーターでは、世界シェア1位となっています。具体的には、ドアミラー、ドアロック、エアコンダンパー、パワーウインドウ、パワーシート、パーキングブレーキなど、自動車に搭載されている電装品は数多くあり、そのほとんどはモーターで駆動しているのです。

例えば、ドアミラー1つとってもスペースは限られていることがわかります。そこに鏡面や格納用で合計3つのモーターが搭載されます。減速機なども入ることを考えれば、どれだけ小型であることが重要なのかが理解できるでしょう。

現在注力している、「Mobility」の分野では、例えば工場や倉庫で活躍する自動搬送車、自律移動ロボットに搭載されるモーター、「Machinery」では、工場で活躍する協調ロボット、「Medical」の分野では、人工呼吸器や睡眠時無呼吸症候群治療機、歯科医療用機器などで同社のモーターが活躍しています。

マブチモーター株式会社 ライフ・インダストリー事業部 第一営業部の井伊氏
マブチモーター株式会社 ライフ・インダストリー事業部 第一営業部の井伊氏

お話を伺った同社ライフ・インダストリー事業部 第一営業部の井伊氏は、今回の展示について次のようにコメントしました。

「多くのお客様は、小型で軽量、高効率なモーターを探されていますが、その価値は実際に使っていただくとご理解いただけると思います。WebマーケティングやECサイトを通じてお客様とのオンラインでの接点を増やしていますが、実機に触れていただく機会として、今回の展示を企画しました。モーターをただ見ていただくのではなく、どのように使えるのかということを、実物を見てご理解いただければと思っています」

ブースでは、同社のモーターで動く機械が展示され、その動く姿が確認できるようになっており、多くの方の注目を集めていました。

「Mobility」の分野では、車椅子や介護用品での活用も進む
「Mobility」の分野では、車椅子や介護用品での活用も進む

「3つのM領域」の各領域では、マブチモーターの商品の特長がそれぞれに活かされているそうです。医療機器では低振動・静音のモーターが求められ、移動体では人や荷物などの重量物を運ぶため高トルクであることはもちろんのこと、バッテリーや制御機器を搭載するスペースを大きく取れるようにモーターはできるだけ小さくしたいという要望があります。

「かつての玩具や家電から、自動車、そして3つのM領域へと、主力事業は変わっても、当社の製品が持つ小型・軽量・高出力等の強みは活かせると考えています」と井伊氏。さらに、「多様なニーズにお応えするため、社内の研究開発だけでなくM&Aや外部提携なども活用し、時代に応じた製品を提供していきたいと考えています」(マブチモーター 井伊氏)と語ってくれました。

同社の各種モーターの実機も数多く展示されていた
同社の各種モーターの実機も数多く展示されていた

今回の展示会では特に、ブースの中央に展示したオリジナルのアーム型ロボットが目を引いたようです。「展示したロボットを製品として販売することはありませんが、ロボットの駆動に使用したモーターはすべて当社のもので、どのようにご使用いただけるかをアピールできたと思っています」(マブチモーター 井伊氏)とのことでした。

注目企業その2 双葉電子工業株式会社【機械要素技術展】

双葉電子工業株式会社は、真空管の製造・販売会社として1948年に創業、1960年代にはホビーラジコン機器の開発・製造を始めました。そこを起点として、現在では、コマンド方式サーボ、ドローン用サーボ、各種DCモータを使用したサーボ製品のほか、産業用無線機器、有機ELディスプレイやタッチセンサー、金型用器材やプレート製品なども製造しています。

今回の展示品は、産業用サーボが中心となっていました。減速機、モータ、エンコーダ、モータドライバ、センサなど、モータとその制御に必要な周辺機器を一つに収めたオールインワンモータモジュールです。他にもCFRP製プレート(フェルカーボ)、産業用無線機器も展示されていました。

同社ロボティクスソリューション事業センター 生産・開発部 サーボ開発課サーボ開発係 係長の工藤翔太朗氏は「産業用サーボとフェルカーボ、無線機器は異なる事業部の製品ですが、FA関連のお客様には一緒に見ていただきたいと考え共同出展することにしました。」と話します。

「最近広く普及し始めているドローン業界で使用される弊社の産業用サーボの需要が高まっていると感じています。また、小型で高トルクのサーボが世の中にあまりない現状から、FA業界でも徐々に注目をいただいている状況から大きなチャンスと捉えています。その展開先の拡大が今回の出展における一番の目的です。」と工藤氏は話します。

カットモデルで小型サーボの内部の構成部品を説明
カットモデルで小型サーボの内部の構成部品を説明

同社の産業用サーボの場合、小型で高トルク、動作を制御するモータドライバや減速機まで一体化されているため、面倒な設計工程もなく、限られたスペースにも設置できることが特長です。ブースで展示製品を見て、オールインワンであることに驚かれる来場者も珍しくなかったそうです。

2023年の「ものづくりワールド 2023 東京」にも出展したそうですが、その際には「知名度が足りていない」ことを実感したと言います。しかし、今年は「産業用サーボを見にこられるお客様、弊社のブースを狙って来場いただけたお客様がいらっしゃいました。昨年よりも認知度は上昇しています」(双葉電子工業 工藤氏)と手ごたえを感じているようでした。

小型のサーボの多様な使い道をデモ機で展示
小型のサーボの多様な使い道をデモ機で展示

お客様からの声としては、「人手不足の解消のためには、自動化が必須」と、製造業共通の課題に解決策の一つとして、産業用サーボの活用を意識されている方が多かったそうです。また展示されている製品を見て「これくらい小型なのであれば、(自社工場の)この部分で使えそうだ」などと活用シーンを具体的にイメージされていた来場者もいらっしゃったと話します。

左側はドアの開閉サーボの動きをデモ機で説明している
左側はドアの開閉サーボの動きをデモ機で説明している

展示会後の商談も順調で、多くの具体的な引き合いが来ている状況だと話します。昨年の出展は認知度を向上させる「フェイズ1」、今回の出展はPLC制御のデモ機などを加え具体的な用途の訴求を行う「フェイズ2」だと捉えているとのこと。「ここまで順調にフェイズを進めることができたので、来年以降は定期的に情報提供をし、定着させていく『フェイズ3』に移行できそうです」(双葉電子工業 工藤氏)と期待していました。

注目企業その3 日本電子株式会社【次世代3Dプリンタ展】

日本電子株式会社(JEOL)は、1946年、電子顕微鏡の開発、製造からスタート。以来、最先端の理科学・計測機器、産業機器そして医用機器の開発を行ってきた老舗メーカーです。特に電子顕微鏡の分野では、まさに第一人者として世界的に著名な企業です。

今回の展示は「電子ビーム金属3Dプリンター JAM-5200EBM」です。一般的に普及している3Dプリンターは樹脂成形が主流です。その中で「金属3Dプリンター」の需要も高まっているのですが、こちらも主流は「レーザー」を用いたもの。レーザーで金属粉末を溶融して造形していくのですが、レーザーではタングステンやモリブデンなどの高融点金属や純銅は、レーザーの出力や吸収率の問題で溶融が困難という課題がありました。

同社の「電子ビーム金属3Dプリンター」は、レーザーよりも熱エネルギーへの変換効率が高く、はるかに高いエネルギーを持つ電子ビームを使用することで、純銅やタングステンなどの造形を可能にしています。

電子ビーム金属3Dプリンターの特長
電子ビーム金属3Dプリンターの特長

他にもチタン合金やニッケル基合金にも電子ビーム方式は適しており、「これらの素材は、強度が高く耐熱性があるため、航空機器や宇宙開発機器等に高い需要があります」と語るのは、同社企画Gの横山博之氏。今回に展示については「弊社は電子顕微鏡のジャンルでは高い認知度をいただいていますが、3Dプリンターではまだまだだと考えています。加えて、3Dプリンターの中でも、電子ビームを使ったものの認知度が高くはありません。今回の出展はその課題を解決していく第一歩です」と話してくれました。

JAM-5200EBMで試験的に作られた「クリスマスツリー」
JAM-5200EBMで試験的に作られた「クリスマスツリー」

横山氏は「そもそも金属3Dプリンターの世界では、日本は世界レベルでは周回遅れだと感じています。弊社も含めてもっと力をつけていくと同時に、積極的に情報発信をしていかなければならないと考えています。ブースに来ていただいた方とのお話でも、レーザーと電子ビームの違いから説明する必要があります。もっと情報発信をして、電子ビーム方式の特長を広める必要があると痛感しました」(日本電子 横山氏)と話します。

展示されていた金属3D造形物の特徴としては、切削加工では不可能な形状の加工が実現できること、自由度が高いことだと言います。一方、表面の粗さ、精巧さでは切削加工に一歩譲るのが現状。しかし、二次加工を行うことでほとんどの課題は解決できると言います。

さまざまなサンプル造形品が展示され、電子ビーム金属3Dプリンターの可能性が示されていた
さまざまなサンプル造形品が展示され、電子ビーム金属3Dプリンターの可能性が示されていた

今後の展開としては、海外での展示会出展などを積極的に実施していくとのこと。一方で国内での展示会については「まだまだ日本での認知度を高める努力は必要だと考えています。市場でのニーズはあるのですが、認知がされていないだけなのです。今回も、受託造形の依頼は受けており、他にも問い合わせもありました。電子ビーム金属3Dプリンターの実力を理解いただければ、必ずニーズはある。そのためにも、今後の出展を検討していこうと考えています」と横山氏は語ってくれました。

スマートファクトリーの最適解は協働ロボットの活用か

今回の「機械要素技術展」では、協働ロボットに関する技術の展示が多かったように思えました。協働ロボットそのものから協働ロボットに関連するモーター、制御技術、安全技術など、多種多様なソリューションが展示されていました。

1690年代にファクトリーオートメーションの概念が生まれ、2000年頃にはインダストリー4.0としてAIやIoT技術を活用したファクトリーオートメーションの実現、それによる生産性の向上や安全性の確保が目指されていました。

その行きつく先は「無人工場」だったかもしれません。実際に、危険度が高い生産現場では無人化も進められています。その頃は、さまざまな「製造業のための機械技術」は、無人工場を実現する技術に向かっていました。

今回の展示で目立った「協働ロボット」は、「人とロボットがともに工場で働く環境」を実現します。同じ場所で人は人がするべきことを、ロボットはロボットに向いた作業を行っていくという考え方です。これは、「無人工場」を実現する過渡期と言えるでしょう。しかし、「完全な無人工場よりも、人とロボットがともに働く現場のほうが効率が良い」のかもしれません。

協働ロボット関連の展示が目立ったことは、それが「現状の最適解」だと考えられている一つの証左に思えました。例えば、5年後、10年後にどのような展示になっているのか。進化した協働ロボットなのか、その先にある無人工場対応ロボットなのか、この目で確かめたい気持ちになりました。

【ものづくりワールド東京 2024】レポート1
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