【ものづくりワールド東京 2024】全体レポート1 製造業に関わるあらゆる技術、サービスが一同に

2024年6月19日(水)~21日(金)までの3日間、東京ビッグサイトにおいて、「ものづくりワールド2024 東京」が開催されました。今回、出展社数はビジネスイベントとしては日本最大級の2,100社に及び、来場者数は3日間で6万9,717名と大盛況でした。

今回は2回に分けてレポートをお届けします。

目次

  1. 10のテーマに分かれて、ものづくりに関する展示が行われた
  2. 7万人弱とコロナ禍前を思わせる活況、海外からの出展も
  3. 注目企業その1 スタンレー電気株式会社【工場設備・備品展】
  4. 注目企業その2 帝人フロンティア株式会社【工場設備・備品展】
  5. 注目企業その3 大同メタル工業株式会社【製造業DX展】
  6. コロナ禍前の熱気が戻った会場の雰囲気

10のテーマに分かれて、ものづくりに関する展示が行われた

「ものづくり」は日本にとって産業の要だと考えられています。一方で、人手不足、技術承継をはじめ、さまざまな課題を内包する業界であるとも言えます。そこへの対策として、DXをはじめ、新たな技術、ソリューションが生まれています。

ものづくりワールド東京2024

今回の「ものづくりワールド2024東京」では、大きく以下の10のテーマに分かれて展示が行われました。

『設計・製造ソリューション展』CAD、CAE、ERP、生産管理システムなどの製造業向けITソリューションなど
『機械要素技術展』モータ、ベアリングなどの機械部品や切削、プレスなどの加工技術
『ヘルスケア・医療機器 開発展』医療機器、ヘルスケア機器の開発、製造技術や部品、計測器など
『工場設備・備品展』工場向けの省エネ製品、物流機器、メンテナンス製品、安全用品など
『ものづくりAI/IoT展』製造業向けIoTプラットフォーム、AIRソリューション、通信機器など
『次世代3Dプリンタ展』AM、3Dプリンタ、材料、受託造形サービスなど
『計測・検査・センサ展』製造業向け計測器、検査機器、試験機、計量器、センサ、カメラなど
『製造業DX展』製造業の業務デジタル化、DXを推進するIT製品、サービスなど
『ものづくりODM/EMS展』開発・製造ODM、EMSなどを得意とするアウトソーシングソリューション
『製造業サイバーセキュリティ展』製造業のセキュリティ対策を推進するIT製品、ソリューションなど

7万人弱とコロナ禍前を思わせる活況、海外からの出展も

今回の展示では、製造業における課題に対する「現在考えられる解決策」が一堂に会したと言えるでしょう。

コロナ禍以降、リアルで開催されるイベントは一時的に大きく縮小しましたが、今回は来場者数が7万人に近くなるなど、コロナ禍以前を思わせる活況ぶりを呈しました。実際に会場内では商談や展示されている製品やサービスへの質問が飛び交い、各ブースで行われているプレゼンテーションもにぎやかなもの。会場内は行き交う人の肩が触れ合うような混雑ぶりでした。

海外からの出展も多く、「中国パビリオン」「台湾パビリオン」「ソウルパビリオン」「ベトナムパビリオン」などの国別のパビリオンにとどまらず、「ソウル経済振興院」「釜山機械工業協同組合」「遼寧省パビリオン」などの地方別、海外の団体別での集中出展も目立ちました。

では、今回特に目についた出展社の一部を紹介します。

注目企業その1 スタンレー電気株式会社【工場設備・備品展】

まず注目したのは、【工場設備・備品展】に出展していたスタンレー電気株式会社です。1920年創業、自動車電球を主とする特殊電球の製造販売から始まり、現在は、自動車用照明や電子機器の分野で高いシェアを誇る、光の価値を追究しているメーカーです。

今回の展示では、長年培ってきた「照明技術」を生かした「LED描画ユニット」「LED投光器」が出展されていました。

「LED描画ユニット」は、工場内での行先表示や各種サイン、危険喚起の表示などをLED照明で実現します。LED照明なので、ポスターや塗装に比べて可変性が高く、内容変更が容易です。工場や倉庫内を移動するAMR(自律走行搬送ロボット)に搭載して進行方向に警告を発することもできます。工場以外でもイベントなどでの順路表示、ホテルなどでの案内にも活用できるとのこと。

LED描画ユニットによる照射例
LED描画ユニットによる照射例

「LED投光器」としては、屋内外で活用される投光器が各種展示、金色での照明を実現する金色投光器、光軸を絞った超狭角投光器などが展示されていました。自動車用照明部品では知名度はあるものの、それ以外の製品について知ってもらいたいとのことで、「ものづくりワールド2024東京」に初出展をしたとのことです。

「もともと、今回出展しているLED描画ユニットにとどまらず、熱が出ない、メンテナンスが楽で消費電力も抑えられるLED照明は工場での活用に向いています」と語るのは、同社サテライト統括本部 電子サテライト本部 戦略企画課の横嶋 藤雄氏。

スタンレー電気株式会社 サテライト統括本部 電子サテライト本部 戦略企画課の横嶋 藤雄氏
スタンレー電気株式会社 サテライト統括本部 電子サテライト本部 戦略企画課の横嶋 藤雄氏

工場以外でも、紫外線を照射するLEDは農業分野で、赤外線を照射するLEDは水産業、また畜産業などでも活用されているそうです。特に、植物、魚類、動物の生育に影響すると注目されているといいます。「緑色の光を当てるとヒラメやカレイの行動が活発になり、結果として餌をよく食べるため生育が早まるという研究成果もあり、養殖施設では導入が検討されています」(スタンレー電気 横嶋氏)。

緑色のLEDは養殖施設で導入が検討されている
緑色のLEDは養殖施設で導入が検討されている

今回の出展においても、赤い照明も緑の照明と同様に畜産において効果が高いという話もあり、サンプル品の納入に至る相談もあったと言います。

照射範囲を極限まで絞った「超狭角LED投光器」では、イベントなどでの演出、ライトアップなどのディスプレイに加え、海外の寺院でのライトアップなどでも引き合いが増えているとのことです。

他にも、一般的なLED照明でも「熱が出にくい」「メンテナンスフリー」「消費電力が抑えられる」ことなどから、工場や倉庫内での照明のLEDへの転換は進んでいます。天井が高い工場や倉庫では、水銀灯や蛍光灯はメンテナンスの負担が大きいという課題がありました。2027年までに蛍光灯の製造が禁じられることもあり、LED照明には大きな注目が集まっているのです。

今回の出展では、来場者から予想を上回る相談を受け、大きく満足しているとのことです。次回以降は規模を拡大した出展も検討するとのことでした。

注目企業その2 帝人フロンティア株式会社【工場設備・備品展】

続いての注目企業は、同じく「工場設備・備品展」に出展していた帝人フロンティア株式会社です。

帝人フロンティアは、綿糸をはじめとする繊維関連商社であった竹村藤兵衛商店を源流とする帝人商事と、総合商社双日の前身である日商岩井の繊維事業、さらに帝人のポリエステル繊維事業の3つの事業体をルーツに2012年に誕生したメーカーと商社の機能を併せ持つ企業です。原材料としての繊維にとどまらず、最終製品までを「つくる力」と顧客と調達先、市場を「つなぐ力」を兼ね備えています。

今回の展示では、主として「水処理関連の製品、ソリューション」を展示していました。工場において「水の管理」は極めて重要です。展示されていた排水処理に関わる繊維担体・ユニット型水処理装置、脱水助剤、生産工程に関わる設備の膜モジュール、液体カートリッジフィルター、浸水撥油フィルターをはじめ、多様な製品、ソリューションが紹介されていました。

液体カートリッジフィルターの展示
液体カートリッジフィルターの展示

「これまで社内でも、工場の水処理と言えば排水処理に注力している面が強かったのですが、今回の展示では、さらに幅を広げて排水だけではない、ものづくりに関わる水処理全てについて提案したいと考えました」と語るのは、同社産資戦略マーケティング部水処理プロジェクトグループの清藤 葉子氏。水処理の幅広さに加えて、空気処理の製品も同時に展示していました。

工場での水の使い方としては、洗浄や冷却が代表的ですが、不純物が入った水での洗浄では問題があるケースも珍しくありません。そこで膜モジュールを使用することで不純物を取り除くことが可能になります。従来は蒸発工程や生物処理工程などを経ることで不純物を取り除くケースが多いのですが、膜モジュールの使用によって工程の簡易化が望めます。

「他にも、食品関連であれば濃縮液を作る際や、イオン系の細かなレベルでの濾過処理など、高度な処理をしたい場合には、膜モジュールが活用されるケースが多いと思います」(帝人フロンティア 清藤氏)

今回の出展では、来場者にメーカーの担当者が多かった印象があると清藤氏は言います。「製造部門だけではなく、より高度な処理を求める研究開発部門の方も多かった印象です。また展示については満遍なく興味を持っていただけた印象で、空調のナノフロントバグフィルターや排水処理関連の製品にも興味を持っていただけたお客様がたくさんいらっしゃいました」と出展の成果には満足されているようです。

「他の展示会を含めて、年間で3~4回程度の出展を実施していますが、今回は10点満点で8点くらいの満足度」と清藤氏。ブースでお話しする中で、お客様の具体的な課題を伺うことができたこと、ターゲットとして想定していたお客さま層とコミュニケーションが取れたことがポイントだったそうです。

今回の「ものづくりワールド2024東京」については、非常に活気を感じ特に初日の来場者数は予想以上だったと言います。「最終日は雨だったにも関わらず、多数の来場者だった」と清藤氏は話しました。今後も積極的に展示会への出展を意識するという同社ですが、「よりお客様のニーズに沿った提案をするために実例を交えた展示を検討していきたい」と今後の展望を語ってくれました。

注目企業その3 大同メタル工業株式会社【製造業DX展】

「製造業DX展」に出展していたのは、1939年の創業以来、自動車分野を中心に船舶、建設機械、一般産業など、あらゆる産業分野における世界で唯一の「総合すべり軸受メーカー」として成長・発展してきた大同メタル工業株式会社。自動車用エンジン軸受において、世界シェア約33.3%(2023年暦年当社推定)、大型船舶用の軸受においても世界で約73.0%(2023年暦年当社推定)のトップシェアを有しています。

今回の出展は「製造業DX展」。軸受メーカーの同社ですが、展示されていたのは「製造業のためのVRクラウドソフト」というSaaSサービス。VRゴーグルを使用し、工場内の実際の映像を用いて、作業手順やインシデントの体験ができるものです。

実際にVRゴーグルを着用し体験する様子
実際にVRゴーグルを着用し体験する様子

その特徴は、簡便さ。一般的にVRコンテンツというと、CG作成する必要があるなど、特殊な技術が求められることがほとんどです。しかし、同社のサービスでは、自社で市販のカメラを使って工場内を撮影し、その画像データをもとにノーコードでVRコンテンツを作っていきます。

例えば、操作手順を教育するコンテンツであれば、実際にその人が作業をする工場の画像が使用されるので、教育効果が高まることが期待できます。また、事故画像を挿入することで、操作ミスによってどのような事故が発生するかを疑似体験できることも大きな特徴です。これに加えて、画像内で次の手順、操作を示しながら、チュートリアルのようにゲーム感覚での教育が可能です。

パソコン画面の映像がVRゴーグルを着用することで臨場感が高まる
パソコン画面の映像がVRゴーグルを着用することで臨場感が高まる

同社 東京支店 3D’sVRソリューションズグループ グループリーダーの中野 健太郎氏は、今回の出展目的について「軸受の世界では知名度を得ていますが、VRのサービスでの認知度はまだまだ低いのが現実です。そこで、製造業の企業が多く出展し、来場者にも製造業関係者が多いこの展示会に出展し、認知度を高めることを期待しました」と語ります。

他の展示会では、主力商品の軸受を展示する傍らでの展示も行っていますが、VR製品を対象とする展示会への単独出展も実施するようになりました。そこで、2023年に開催された「ものづくりワールド2023大阪」にも出展したそうですが、「ブースへの来場者数は大阪のほうが多かった印象ですが、来場いただいたお客様の検討ステージは、今回のほうが高い印象があります」(大同メタル工業 中野氏)と、市場ニーズの高まりを感じるコメントもありました。

事前に出展内容を確認して、狙ってブースを訪れてくれた来場者や、説明後に「今回見たブースの中で一番良かった」というコメントをくださった来場者もいらっしゃったそうです。

大同メタル工業のVRサービスの特徴のである「能動的体験」や「臨場感のある体験」が評価されたという実感がある一方、来場したお客様の中には「社内で説明するのに、画像がないと良さが伝わりにくい」とVRの画面を撮影したがる方がいらっしゃったと言います。そのため、実際に体感しないとその臨場感や簡易さが伝わらないことを課題に感じたそうです。

同社では今回の出展の満足度は高く、「これからの商談で、過去最高の契約数を得たいと考えています」(大同メタル工業 中野氏)とのこと。製造業全体の共通の悩みである恒常的な人手不足、技術承継の課題に対する、一つの解決手段であるVR教育コンテンツだけに、今後も各種イベントに積極的に出展していく考えだそうです。

コロナ禍前の熱気が戻った会場の雰囲気

今回、3社の出展内容、コメントをまとめましたが、それぞれの担当者のコメントで共通していたのが「高い熱量」でした。実際に入場者数もコロナ禍前の2019年と同レベルに戻っており、会場内は熱気にあふれていた印象がありました。出展者もさることながら、来場者も積極的にブース担当者へ質問している姿が数多く見受けられました。

そして、今回コメントをいただいた3社のうち2社は「本業以外の事業での出展」という特徴があります。スタンレー電気は自動車用照明部品のトップメーカー、大同メタル工業は軸受のトップメーカーです。しかし、出展製品、サービスはそれぞれ「工場内で活用するLED描画ユニット」「製造業のためのVRコンテンツ作成クラウドソフト」です。本業での経験値、知見を生かして、他のメーカーにサービスを展開しているケースになります。主力製品の用途転換、自社が工場内で悩んでいることの解決策の提示になるのですが、経験に即して開発されているため、課題の想定、解決策の提示にリアリティが高いという印象を受けました。

工場整備・備品展、製造業DX展では、上記のような「製造業の悩み解決」に訴求する出展が目につきました。

次の記事では、「機械要素技術展」「次世代3Dプリンタ展」を中心に紹介していきます。

【ものづくりワールド東京 2024】レポート2
製造業の“いま”が見える、日本最大級の製造業のビジネスイベント
(※9月18日配信予定)

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