次世代ヘルスケアビジョン

日本社会で急速に進む高齢化。医療や介護を必要とする人が増え続ける一方、サービスを提供する側の生産年齢人口は減っていく状況において、どのような医療DXを進めるべきなのでしょうか。製造業界でもさまざまな企業が高齢社会に対応したものづくりに邁進していますが、医療業界においてDXを進めるにあたっては、一般的な企業のDXと性質が異なることを理解しておかなければなりません。医療機関ごとの単体のDXのほかに、医療の根幹をなす健康保険制度を管理する国のDXがそれぞれ進行しているからです。

「未来医療の夜明け デジタル革命が描く次世代ヘルスケアビジョン」をテーマに、コアコンセプト・テクノロジー(CCT)取締役CTOの田口紀成氏とCCTのアドバイザーでもある東芝 デジタルイノベーションテクノロジーセンター チーフエバンジェリストの福本勲氏の2人が、元厚生事務官で医療機関を対象にコンサルティングを行う合同会社メディカルソリューションパートナー代表の兵藤敏美氏と、医療機関で使われる患者認証のリストバンドなどを製造するサトーヘルスケア株式会社の友澤洋史氏を招いて、ウェビナーを開催しました。

本記事では、その内容を再構成したダイジェストをお届けします。

田口紀成氏(コアコンセプト・テクノロジー)、友澤洋史氏(サトーヘルスケア)、兵藤敏美氏(メディカルソリューションパートナー)、福本勲氏(東芝)
左より田口紀成氏(コアコンセプト・テクノロジー)、友澤洋史氏(サトーヘルスケア)、兵藤敏美氏(メディカルソリューションパートナー)、福本勲氏(東芝)
兵藤 敏美氏
合同会社メディカルソリューションパートナー 代表
海外の大学でComputer Science とEnvironmental Scienceを学び、帰国後、厚生事務官として国立東京医療センターにて医事課、総務課に従事。退官後、複数の医療機関、病院コンサルタントにて医事、用度、総務、経理などを担当し、平成15年、済生会習志野病院に入職。医事課、システム情報課を経て平成26年10月より経営企画室 室長に就任。平成28年9月より事務次長兼経営企画室長を兼務。平成29年11月より事務部長に就任。平成30年4月より支部千葉県済生会の参事兼務。令和4年6月末に事務部長を退任し、様々な部署、様々な外部活動を通して電子カルテを導入したがそれを業務改善、経営改善に役立てられていないケースを数多く散見したため、病院視点でそれら医療機関を支援できる活動をしたいと決意し、7月より合同会社メディカルソリューションパートナーを立ち上げ、病院経営・現場経験者ならではの視点でベンダーへのシステム開発、導入支援、医療機関へのシステム導入、業務改善、経営改善の支援等を行う。
友澤 洋史氏
サトーヘルスケア株式会社 事業企画・開発担当 営業統括部 PH市場開発グループ エキスパート
1998年入社、主には“リストバンド”を利用した三点認証の導入支援に従事。2017年に“スマートホスピタル構想”を標榜する病院との共同研究に参画。2021年に看護師の働き方を支えることで、患者との“直接ケアを創出”するデジタルソリューションの企画構想に着手。2024年に新サービスとしてリリースすべく、開発を進めている。
福本 勲氏
株式会社東芝 デジタルイノベーションテクノロジーセンター チーフエバンジェリスト
アルファコンパス代表

1990年3月、早稲田大学大学院修士課程(機械工学)修了。1990年に東芝に入社後、製造業向けSCM、ERP、CRMなどのソリューション事業立ち上げやマーケティングに携わり、現在はインダストリアルIoT、デジタル事業の企画・マーケティング・エバンジェリスト活動などを担うとともに、オウンドメディア「DiGiTAL CONVENTiON」の編集長を務める。また、企業のデジタル化(DX)の支援と推進を行う株式会社コアコンセプト・テクノロジーのアドバイザーも務めている。主な著書に「デジタル・プラットフォーム解体新書」(共著:近代科学社)、「デジタルファースト・ソサエティ」(共著:日刊工業新聞社)、「製造業DX - EU/ドイツに学ぶ最新デジタル戦略」(近代科学社Digital)がある。主なWebコラム連載に、ビジネス+IT/SeizoTrendの「第4次産業革命のビジネス実務論」がある。その他Webコラムなどの執筆や講演など多数。

田口 紀成氏
株式会社コアコンセプト・テクノロジー 取締役CTO兼マーケティング本部長
2002年、明治大学大学院理工学研究科修了後、株式会社インクス入社。自動車部品製造、金属加工業向けの3D CAD/CAMシステム、自律型エージェントシステムの開発などに従事。2009年にコアコンセプト・テクノロジーの設立メンバーとして参画し、3D CAD/CAM/CAEシステム開発、IoT/AIプラットフォーム「Orizuru(オリヅル)」の企画・開発などDXに関する幅広い開発業務を牽引。2014年より理化学研究所客員研究員を兼務し、有機ELデバイスの製造システムの開発及び金属加工のIoTを研究。2015年に取締役CTOに就任後はモノづくり系ITエンジニアとして先端システムの企画・開発に従事しながら、データでマーケティング&営業活動する組織・環境構築を推進。
*所属及びプロフィールはいずれも2024年1月現在のものです。

目次

  1. なぜ今 DXが求められているか
  2. 看護師が重視する「患者ファースト」と医療DXの実施、職員の定着率との連関 
  3. 看護師の働き方を支えることで、患者の幸せにもつなげる仕組みづくりをIoTで
  4. 医療DXに向けた国のビジョン
  5. これからの医療DX戦略