製造業の職種は何がある?一覧と業種分類、転職者向けQ&A
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製造業は食品から自動車、電子機器まで幅広く、私たちの生活に欠かせない製品を作っています。その分、仕事の種類も多岐にわたるため、転職を成功させるには職種ごとの業務内容や必要なスキルを理解することが不可欠です。

この記事では、製造業の代表的な職種を10種類に分け、それぞれの仕事内容を詳しく解説します。

目次

  1. 製造業(メーカー)の主な職種11選
  2. 製造業は職種と同様に「業種(分類)」も重要
  3. 製造業とは?基本知識と業界の特徴
  4. 製造業の平均給与は?
  5. 製造業で求められるスキル・資格
  6. 【転職希望者向け】製造業の職種に関するQ&A
  7. 製造業では職種・業種による検討が転職先を見つける第一歩

製造業(メーカー)の主な職種11選

それでは、製造業(メーカー)を代表する11の職種を一つずつ見ていきましょう。

1. 商品企画

商品企画は、市場調査やトレンド分析から顧客のニーズを的確に捉え、「次に何が売れるか」を考えて新商品のアイデアを形にする、製造業の起点となる仕事です。まだ世にない製品の構想を練り、未来のヒット商品をゼロから生み出せる、クリエイティブでやりがいのある職種と言えるでしょう。

ただし、競合の動向を分析し、ビジネスとして採算が取れるかを冷静に判断する視点も欠かせません。自由な発想力と、データを元に市場を客観的に分析するスキルをバランス良く備えた人材が求められます。

【求められるスキル】

  • 発想力、企画力: 常識にとらわれず新しいアイデアを生み出し、具体的な商品企画としてまとめ上げる力
  • マーケティング、分析力: 「これが欲しい」という顧客インサイトを見抜き、データに基づいて市場の需要を的確に予測する力。

2. 研究開発

メーカーの競争力の源泉となる、独自の技術や特許を生み出すのが研究開発の仕事です。まだ誰も見たことのない新素材や新技術を探求する「基礎研究」、それを実用化する「応用研究」、そして具体的な製品へと落とし込む「商品開発」の3つのフェーズに分かれ、未来の当たり前を創り出します。

5年、10年といった長期的な視点で物事を探求する、地道で根気のいる仕事ですが、自らの研究成果が世界を変える新製品に繋がる可能性を秘めています。特に理系のバックグラウンドを持つ方にとっては、自身の専門知識を存分に発揮できる花形の職種です。

【求められるスキル】

  • 高度な専門知識: 担当分野(化学、機械、ITなど)における深い知見と学術的な素養。
  • 探求心と忍耐力: すぐに結果が出なくても、仮説と検証を繰り返しながら真理を追い求め続ける力。
  • 論理的思考力: 複雑な事象を体系的に整理し、物事の因果関係を正確に捉える力。

3. 生産技術

生産技術は、「どうすれば、より速く、安く、高品質に製品を作れるか」を追求し、製造ライン全体を設計・改善する、いわば工場の司令塔です。

具体的には、新しい機械やロボットを導入したり、作業員の負担を減らすための治工具を開発したりと、モノづくりの現場を最適化します。近年は工場のDXやスマートファクトリー化が急務となっており、ITやAIの知見を活かして「未来の工場」を創り出せる、非常に将来性の高い職種です。

【求められるスキル】

  • 課題解決力: 生産現場の課題を的確に発見し、「なぜ」を繰り返して根本的な解決策を導き出す力。
  • IT、機械の知識: ロボットやIoT、プログラミングなど、生産効率を向上させるための幅広い技術知識。
  • 現場との調整力: 現場スタッフの意見に耳を傾け、協力しながら改善を進めていくコミュニケーション能力。

4. 生産管理

生産管理は、顧客の求める納期(Delivery)、品質(Quality)、コスト(Cost)のいわゆる「QCD」を最適化するため、生産計画全体を管理する仕事です。原材料の調達から完成品の出荷まで、モノづくりの全工程がスムーズに進むようコントロールします。

急なトラブルや仕様変更にも柔軟に対応し、計画通りに製品を顧客の元へ届けることで、企業の利益と信頼を直接支える、責任と達成感の大きな職種です。

【求められるスキル】

  • 管理、調整能力: 全体の進捗を把握し、人・モノ・金・情報を適切に配分して計画を遂行する力。
  • 分析力: 需要予測や在庫データなど、数値を元にリスクを考慮した最適な生産計画を立てる力。
  • コミュニケーション能力: 立場の異なる多くの関係者と円滑に連携し、協力を引き出す対人スキル。

関連記事:製造業におけるQCDとは? 優先順位や改善方法などについても解説

5. 品質管理

品質管理は、完成した製品が定められた基準を満たしているかを厳しくチェックし、メーカーの信頼性そのものを担保する仕事です。単に不良品を見つけるだけでなく、統計データなどを用いて「なぜ不良品が発生したのか」を分析し、不良品を“作らせない”製造工程を構築することまでがミッションです。

製品の品質は、時として顧客の安全や生命にも関わります。万が一、問題が見過ごされれば、企業の存続を揺るがす事態にもなりかねません。社内のあらゆるプレッシャーから独立し、客観的な視点で品質を守り抜く、非常に大きな責任と誇りを持てる職種です。

【求められるスキル】

  • 責任感と注意力: 小さな異変や違和感も見逃さず、基準に満たないものは決して市場に出さないという強い意志。
  • データ分析・改善提案力: 統計的な品質管理手法(SQC)などを用いてデータを分析し、製造工程への改善を提案する力。
  • 客観的な判断力: 納期などのプレッシャーに流されず、定められた基準に基づき冷静かつ公正に判断する力。

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6. 製造

企画部門のアイデアや設計部門の図面を、実際に手に取れる「製品」という形にする、モノづくりの主役が製造職です。組立、加工、溶接、塗装といった各工程で、生産計画に基づき高品質な製品を安定的に作り上げることが求められます。

ライン作業のイメージが強いかもしれませんが、その本質は日々の「カイゼン」活動や、熟練の技を要する専門性にあります。どうすればもっと速く、正確に作業できるかを追求したり、新たな資格を取得してスキルの幅を広げたりと、現場のプロフェッショナルとして成長していく醍醐味があります。「何を作りたいか」がやりがいに直結するため、企業の製品に愛着を持てるかが重要なポイントです。

【求められるスキル】

  • 正確性と集中力: 決められた手順(標準作業書)通りに、質の高い作業を継続して行う力。
  • 探求心と向上心: 「もっと上手くなりたい」という気持ちを持ち、新しい機械の操作や資格取得に積極的に挑戦する姿勢。
  • チームワーク: ライン全体の目標達成のため、前後の工程のメンバーと連携・協力する協調性。

7. 営業

製造業の営業は、自社製品を販売する「会社の顔」であると同時に、顧客の課題と自社の技術をつなぐ「架け橋」としての役割を担います。単に製品を売り込むのではなく、顧客が抱える問題を深くヒアリングし、自社の製品や技術でどのように貢献できるかを提案するソリューション営業が中心となります。

また、顧客から得た要望や市場の最新トレンドを社内の商品企画・開発部門にフィードバックし、次のヒット商品を生み出すきっかけを作ることも重要なミッションです。会社の売上を創出する最前線でありながら、未来のモノづくりにも貢献できる、ダイナミックな仕事です。

【求められるスキル】

  • 課題発見、提案力: 顧客との対話から潜在的なニーズを掘り起こし、最適な解決策を提示するコンサルティング能力。
  • 関係構築力: 顧客と長期的な信頼関係を築き上げ、良きビジネスパートナーとなる力。
  • 製品への深い理解: 自社の技術や製品の強みを深く理解し、その価値を顧客に分かりやすく説明する能力。

8. 広報・マーケティング

「良いモノを作れば売れる」という時代は終わり、自社の製品や技術の価値を、いかに社会に伝え、共感を得るかが重要になっています。広報・マーケティングは、製品に込められた想いや技術のすごさを届け、会社のファンを創る仕事です。

WebサイトやSNSでの情報発信、メディアとの関係構築、展示会の企画・運営など、その手法は様々。特にBtoB(企業間取引)が中心の製造業では、技術力を的確にブランディングし、顧客からの信頼を獲得することが売上に直結します。まだ見ぬ未来の顧客に向けて、会社の魅力を発信するクリエイティブな職種です。

【求められるスキル】

  • マーケティング戦略立案力: 市場や競合を分析し、誰に・何を・どのように伝えるかという戦略を設計する力。
  • 情報発信、コンテンツ作成能力: プレスリリースやSNS投稿、Web記事など、ターゲットに響くコンテンツを企画・制作する力。
  • データ分析力: 広告効果やサイトのアクセス数などを分析し、施策を改善していく論理的思考。

9. 法務

法務は、契約書の作成・レビューやコンプライアンス体制の構築といった「守りの法務」で会社をリスクから守るだけでなく、法律知識を武器にビジネスの成長を後押しする「攻めの法務」も担う、経営の重要なパートナーです。

例えば、新しい事業を始める際に法的なリスクを洗い出して対策を考えたり、海外企業との提携を有利に進めるための交渉を行ったりと、事業戦略に深く関わります。特に製造業では、競争力の源泉である特許(知的財産)を守り、活用することも極めて重要なミッション。法律の専門家として、事業のアクセルとブレーキを適切に踏み分ける、やりがいの大きな仕事です。

【求められるスキル】

  • 法律知識とリサーチ能力: 関連法規を正確に理解し、未知の分野についても迅速に調査、解釈する力。
  • ビジネスへの理解力: 法的リスクを指摘するだけでなく、「どうすれば事業を実現できるか」を考え代替案を提示する力。
  • 交渉、調整力: 契約交渉や他部門との調整において、自社の利益を守りつつ合意形成を図るコミュニケーション能力。

10. 人事・総務

企業の最も重要な資産である「人」と、その集合体である「組織」の土台を支えるのが人事・総務の仕事です。「人事」は採用・教育・評価といった制度を通じて社員の成長を後押しし、組織全体の活力を生み出す戦略的な役割を担います。

一方、「総務」はオフィス環境の整備や福利厚生の企画、備品管理、株主総会の運営など、社員全員が最高のパフォーマンスを発揮できる環境を整えるプロフェッショナルです。どちらも「縁の下の力持ち」でありながら、会社のカルチャーを醸成し、未来の成長を支える、なくてはならない存在です。

【求められるスキル】

  • 傾聴力と共感力(主に人事): 社員一人ひとりの声に耳を傾け、キャリアの悩みや希望に寄り添う姿勢。
  • 制度設計・企画力(人事・総務): 採用戦略や研修プログラム、働きがいを高める福利厚生などを企画・実行する力。
  • ホスピタリティと調整力(主に総務): 全社員のために働きやすい環境を整え、社内外の様々な要望に柔軟に対応する力。

11.IT・デジタル系

近年、AIやIoTといったデジタル技術の導入が加速し、製造業のあり方は大きく変化しています。それに伴い、新たな価値を創造するIT・デジタル系の職種が注目されています。これらの職種は、製造業のDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進する重要な役割を担っており、技術革新の最前線で活躍することができます。この記事では、製造業の未来を担うIT・デジタル系職種として、「DXエンジニア」「データアナリスト」「ITコンサルタント」の3つを紹介します。

これらの職種は、技術的な専門知識だけでなく、製造業特有の課題やニーズを理解し、それを解決に導く能力が求められます。

<DXエンジニア>
製造業のDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進する専門家です。AIやIoT、クラウド技術などを活用し、生産ラインの自動化、サプライチェーンの最適化、予知保全システムの構築など、デジタル技術を駆使して製造業のビジネスモデルや業務プロセスを変革する役割を担います。単に技術を導入するだけでなく、製造現場の課題を深く理解し、それに最適なソリューションを設計・開発・実装する能力が求められます。

【求められるスキル】

  • AI/機械学習、IoT、クラウドに関する知識:Python、R、Javaなどのプログラミングスキル、データ分析能力、AWSやAzureなどのクラウドプラットフォームの知識。
  • 製造現場の理解:製造プロセス、サプライチェーン、品質管理など、製造業特有の知識、より実践的なDXソリューションを提案する力。
  • 課題解決能力・コミュニケーション能力:現場の担当者と連携し、課題を特定して解決策を導き出すためのコミュニケーションスキル。

<データアナリスト>
製造業で日々生成される膨大なデータを収集・分析し、経営判断や業務改善に役立つインサイト(洞察)を導き出す専門家です。生産ラインの稼働データ、製品の品質データ、顧客の購買データなど、あらゆるデータを解析し、非効率なプロセスの発見や新たなビジネスチャンスの特定に貢献します。高度なデータ分析スキルを駆使することで、企業の競争力向上に直結する重要な役割を担います。

【求められるスキル】

  • 統計学・数学の知識:統計解析、機械学習モデルの構築、データマイニングなど、高度な数学的知識と分析スキル。
  • プログラミング言語・ツール:PythonやRなどのプログラミング言語、SQL、BIツール(Tableau、Power BIなど)を使いこなす能力。
  • ビジネス理解:分析結果をどのようにビジネスに活かすかを理解し、わかりやすく説明する能力。

<ITコンサルタント>
製造業の経営課題をITの力で解決に導く専門家です。DX戦略の立案、ITシステムの導入・刷新、業務プロセスの改善など、企業のIT戦略全体を俯瞰し、最適なソリューションを提案します。単なる技術導入の支援だけでなく、企業の組織文化や業務フローに合わせたコンサルティングを行い、製造業の変革を根本からサポートします。技術的な知識に加え、高いコミュニケーション能力と課題解決能力が求められます。

【求められるスキル】

  • 幅広いIT知識:ERP(統合基幹業務システム)、SCM(サプライチェーン管理)、CRM(顧客関係管理)など、製造業で使われる様々なシステムや技術に関する幅広い知識。
  • 論理的思考力・課題解決能力:顧客の潜在的な課題を見つけ出し、論理的に解決策を構築する能力。
  • 高いコミュニケーション能力:経営層から現場の担当者まで、多様なステークホルダーと円滑にコミュニケーションを取り、プロジェクトを成功に導くスキル。
製造業の職種は何がある?一覧と業種分類、転職者向けQ&A
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製造業は職種と同様に「業種(分類)」も重要

ここまでにご紹介した「職種(どんな仕事をするか)」が縦軸だとすれば、次にご紹介する「業種(何を作っているか)」は、自分に合った企業を探すための重要な横軸です。

同じ営業職でも、扱う製品が自動車部品なのか、食品なのかによって、ビジネスの相手や規模、働き方、そして企業文化は大きく異なります。この「業種」の視点を持つことで、入社後のミスマッチを防ぎ、より満足度の高い転職を実現できます。

製造業の業種を正確に把握するには、総務省の「日本標準産業分類」が基本となります。この分類は2024年6月に改定され、製造業だけでも20以上の大分類に分かれています。

代表的な製造業の分類(日本標準産業分類より抜粋)
09 食料品製造業
16 化学工業
28 電子部品・デバイス・電子回路製造業
31 輸送用機械器具製造業

※番号は産業分類コード

参考:日本標準産業分類(令和5年7月告示)(総務省)

経済産業省が用いる産業3類型の考え方

「日本標準産業分類」は統計法に基づく公式な分類で、非常に細かく定められており、複雑で分かりにくい側面があります。そこで、経済産業省が用いる「産業3類型」という考え方が役立ちます。これは製造業を大きく3つのグループに分けたもので、それぞれの特徴を知ることで、大まかな方向性を掴みやすくなります。

・基礎素材型産業
鉄鋼、化学、繊維、紙パルプなど、あらゆる製品の「もととなる素材」を生産する業種です。私たちの目に直接触れる機会は少ないですが、自動車からスマートフォン、医薬品まで、社会のあらゆるモノづくりを根底から支えています。 BtoBビジネスが中心で、スケールの大きな仕事を通じて社会に貢献したい方に向いています。

・加工組立型産業
自動車、家電、PC、産業機械など、基礎素材型産業が作った素材や部品を組み立て、具体的な機能を持つ「製品」として完成させる業種です。「子どもの頃から好きだった自動車のメーカーで働きたい」「世界を驚かせる新しいガジェットを作りたい」など、自分の興味や憧れを仕事にしやすいのが最大の魅力です。

・生活関連型産業
食品、飲料、化粧品、アパレルなど、私たちの衣食住に直接関わる製品を作る業種です。消費者の反応がダイレクトに分かるBtoCビジネスが多く、自分が手がけた商品を街なかや店頭で目にする機会も多いでしょう。「誰もが知る有名ブランドで働きたい」「自分のアイデアでヒット商品を生み出したい」という方にぴったりの業種です。

製造業とは?基本知識と業界の特徴

ここでは、製造業の基礎知識から、現在のトレンド、働く上でのメリット・デメリットまで、幅広く解説します。業界の全体像を把握することで、ご自身のキャリアプランを考えるヒントにしてください。

製造業の定義と第2次産業としての役割

製造業とは、原材料や部品を加工・組み立て、新しい製品を生産する産業の総称です。具体的には、自動車や家電製品、食品、医薬品など、多岐にわたる製品が製造されています。

経済学では、第2次産業に分類され、農林水産業などの第1次産業から供給される資源を加工し、商業やサービス業といった第3次産業に製品を供給する重要な役割を担っています。

日本のGDP(国内総生産)に占める製造業の割合は大きく、日本の経済成長を牽引してきました。近年は、単にモノを作るだけでなく、製品を通じて新たな価値やサービスを提供する役割も強まっています。

製造業界の現在のトレンド(DX化・脱炭素)

製造業界は今、大きな変革期を迎えています。その中心にあるのが、DX(デジタルトランスフォーメーション)と脱炭素という2つの大きなトレンドです。

DX化では、IoT(モノのインターネット)やAI(人工知能)を活用し、生産ラインの自動化や効率化、予知保全などが行われています。これにより、生産性の向上だけでなく、品質の安定やコスト削減も実現しています。

一方、脱炭素は、地球温暖化対策として、製品の製造過程で排出される温室効果ガスの削減を目指す動きです。再生可能エネルギーの導入、省エネ設備の導入、リサイクル可能な素材への切り替えなど、環境に配慮したモノづくりが重要視されています。

製造業で働くメリット・デメリット

製造業で働くことには、いくつかのメリットとデメリットがあります。

まずメリットとしては、社会貢献性の高さが挙げられます。自分が関わった製品が世の中で使われる喜びを感じられるでしょう。また、専門的な技術や知識を身につけることができ、スキルアップが期待できる点も魅力です。

一方、デメリットとしては、景気変動の影響を受けやすいことが挙げられます。世界経済の動向や需要の変化によって、生産計画が左右されることがあります。また、職種によっては体力的な負担が大きかったり、交代制勤務があったりする場合もあります。しかし、近年では、労働環境の改善やDX化による業務の効率化も進んでいます。

製造業の平均給与は?

製造業で働く上で、給与は重要な関心事の一つでしょう。製造業の給与は、職種や企業規模、個人の勤続年数やスキル・経験によって大きく異なります。ここでは、製造業における給与の実態を、職種別や企業規模別、年齢階級別に詳しく見ていきます。

職種別の平均給与

製造業の年収は、担当する職種によって大きく異なります。一般的に、技術開発や研究、コンサルタントといった専門性の高い職種は、年収が高くなる傾向にあります。たとえば、製品の設計や開発を担う技術系職種は、専門知識が求められるため、年収も高水準です。また、生産ラインの管理や品質保証を行う生産管理・品質管理職も、責任が大きく、年収も安定しています。

一方、生産ラインで直接モノづくりに携わる製造オペレーターや、製品の販売を担う営業職も、それぞれ異なる年収水準です。特に、成果やスキルが年収に直結するインセンティブ制度を設けている企業も増えています。

<職種(大分類)別所定内給与額>
単位:万円

職種(大分類) 男女計
管理的職業従事者 57.16 57.96 50.73
専門的・技術的職業従事者 37.06 41.02 31.50
販売従事者 32.58 36.46 26.00
事務従事者 32.14 38.33 27.73
建設・採掘従事者 31.27 31.43 25.78
輸送・機械運転従事者 29.30 29.48 25.19
生産工程従事者 27.60 29.56 21.27
サービス職業従事者 25.47 27.75 23.79
農林漁業従事者 24.89 25.88 20.91
運搬・清掃・包装等従事者 24.85 26.33 20.39
保安職業従事者 23.03 22.90 24.34
※年間賞与、その他特別給与は含まれていません
出典:厚生労働省「令和6年賃金構造基本統計調査」をもとに編集部作成

企業規模別・年齢階級別の平均給与

製造業の年収は、企業の規模によっても差があります。一般的に、大企業は中小企業に比べて年収が高い傾向にあります。その理由は、大企業は経営基盤が安定しており、大規模なプロジェクトやグローバルな事業を展開していることが多いためです。また、福利厚生が充実していることも、大企業の魅力の一つです。

しかし、中小企業にも魅力はあります。たとえば、社員一人ひとりの裁量が大きく、若いうちから重要な仕事を任せてもらえる機会もあるでしょう。また、特定の分野で高い技術力を持つ「ニッチトップ企業」では、大企業に引けを取らない高年収を得られる可能性もあります。

<企業規模別所定内給与額>
単位:万円

企業規模 男女計
1,000人以上 37.65 39.70 28.77
100〜999人 30.38 32.77 23.97
10〜99人 27.52 29.95 21.83
※年間賞与、その他特別給与は含まれていません
出典:厚生労働省「令和6年賃金構造基本統計調査」をもとに編集部作成

次に年齢階級別のデータを見てみましょう。全ての企業規模で、年収は年齢とともに増加し、55〜59歳でピークを迎える傾向があります。これは、勤続年数の増加に伴う昇進やスキルアップ、役職手当などが反映されるためと考えられます。

ピーク以降の60歳以降では、減少傾向に転じています。これは、定年後の再雇用制度や役職定年制などにより、給与体系が変更されることが主な要因と考えられます。

また、年齢が上がるにつれて企業規模による年収差は拡大する傾向にあります。特に、40代以降ではその差が顕著になり、「1,000人以上」と「10〜99人」の間の年収差は、45〜49歳で約13.9万円、50〜54歳で約13.7万円と最も大きくなっています。これは、大企業では年齢や役職に応じた昇給が手厚い一方、中小企業では昇給カーブが緩やかである可能性を示しています。

<年齢階級別所定内給与額>
単位:万円

年齢階級 1,000人以上 100〜999人 10〜99人
~19歳 20.78 19.12 18.35
20~24歳 23.67 20.96 20.02
25~29歳 28.02 23.87 22.56
30~34歳 32.88 26.57 24.84
35~39歳 36.82 30.08 26.77
40~44歳 41.51 32.40 28.86
45~49歳 43.58 34.16 29.70
50~54歳 44.87 36.06 31.14
55~59歳 48.60 37.37 31.09
60~64歳 33.53 27.58 27.75
65~69歳 25.93 23.86 25.18
70歳~ 21.28 21.34 22.95
※年間賞与、その他特別給与は含まれていません
出典:厚生労働省「令和6年賃金構造基本統計調査」をもとに編集部作成

製造業で求められるスキル・資格

製造業でキャリアを築くためには、どのようなスキルや資格が必要なのでしょうか。単に技術力があるだけではなく、多くの職種で共通して求められるヒューマンスキルも重要です。ここでは、製造業の各職種で有利になるスキルや資格、経験について解説します。

職種共通で重要なスキル

・課題解決能力
・チームワークとコミュニケーション能力
・新しい技術や知識を積極的に学び続ける学習意欲

製造業のどの職種で働くにしても、共通して求められるスキルがいくつかあります。まず、最も重要なのが課題解決能力です。生産ラインのトラブルや製品開発の壁など、日々の業務で発生するさまざまな課題に対し、論理的に考え、解決策を導き出す力が不可欠です。

次に、チームワークとコミュニケーション能力も重要です。製造業は多くの人が関わる仕事であり、円滑な人間関係を築き、情報を正確に共有することが、生産効率や品質向上につながります。また、新しい技術や知識を積極的に学び続ける学習意欲も、急速に変化する業界で活躍するためには欠かせません。

技術系職種で有利な資格

製造業の技術系職種では、特定の資格や専門知識がキャリアアップに直結します。たとえば、機械設計や電気・電子回路に関する知識は、製品開発において非常に重要です。CAD利用技術者試験や情報処理技術者試験など、専門性を証明する資格は、転職や昇進の際に有利に働くことがあります。

また、近年ではAIやIoT、データサイエンスに関する知識を持つ人材が特に重宝されています。統計検定やG検定など、データ分析やAI活用能力を証明する資格も、今後のキャリア形成において大きな武器となるでしょう。

職種・分野 求められるスキル 有利な資格・検定
機械・電気設計 CAD操作、回路設計、材料力学、熱力学の知識 ・機械設計技術者試験
・CAD利用技術者試験
・電気主任技術者
生産技術・製造 設備保全、生産ライン改善、品質管理、ロボット操作 ・機械保全技能士
・QC検定(品質管理検定)
・ロボット活用技術者検定
研究開発 専門分野の深い知識、実験計画、データ分析 ・危険物取扱者
・弁理士(知的財産関連)
・技術士
DX・IT プログラミング、データ分析、AI・IoTの知識 ・G検定、E資格
・基本情報技術者試験
・AWS認定資格

管理系職種で評価される経験

製造業の管理系職種(生産管理、品質管理、購買など)では、専門的な資格よりも、実務経験やマネジメント能力が重視される傾向にあります。

たとえば、生産計画の立案や進捗管理、サプライヤーとの交渉、コスト削減の提案といった経験は、非常に高く評価されます。また、ISO9001(品質マネジメントシステム)やISO14001(環境マネジメントシステム)などの品質・環境マネジメントシステムの運用経験も、企業の信頼性向上に貢献するため、評価されるポイントです。

加えて、他部署との調整や部下の指導経験といったリーダーシップも、キャリアアップには不可欠な要素です。

職種・分野 求められるスキル 有利な資格・経験
生産管理 生産計画、工程管理、在庫管理、コスト分析 ・生産管理オペレーション
・中小企業診断士
・ISO 9001(品質マネジメントシステム)の運用経験
品質管理 品質検査、統計的品質管理、改善活動(PDCA) ・QC検定(品質管理検定)
・ISO 9001監査員資格
購買・資材調達 サプライヤー選定、価格交渉、契約管理 ・調達プロフェッショナル認定資格(CPP)
・貿易実務検定
営業・マーケティング 製品知識、顧客対応、市場分析、提案力 ・販売士
・TOEICなど語学力(海外取引)
・マーケティング検定

【転職希望者向け】製造業の職種に関するQ&A

最後に、転職希望者が知っておきたい、製造業の職種に関するよくあるQ&Aを見ていきましょう。

そもそも製造業は転職先としておすすめの業界?

製造業は転職先としておすすめの業界です。深刻な人手不足を背景に、製造業は現在「売り手市場」が続いており、多くの企業が積極的に中途採用を行っています。

さらに、脱炭素社会を目指すGX(グリーントランスフォーメーション)や、半導体などの国内生産回帰を目指す経済安全保障の流れは、日本の製造業にとって大きな追い風です。日本の基幹産業として、今後も高い将来性が期待できるでしょう。

年収はどの程度期待できる?

国税庁の「民間給与実態統計調査結果(令和5年度)」によれば、製造業の年間平均給与は533万2,000円でした。同調査による全業種の年間平均給与は459万5,000円であり、製造業は年収の高い傾向にある業界だといえます。

また、近年の製造業では、スマートファクトリー化やDX推進に欠かせないIT人材の必要性が増しています。ITスキルを持つ転職希望者向けに年収1,000万円前後の求人を出す企業も登場しており、高収入を目指したいデジタル人材の転職先としてもおすすめです。

参考:民間給与実態統計調査結果(国税庁)

製造業では職種・業種による検討が転職先を見つける第一歩

この記事では、製造業の職種一覧と業種分類、転職希望者向けのよくあるQ&Aなどをご紹介しました。

日本最大の業界である製造業には、多くの人にとって転職先候補となる求人が多く、職種と業種から数を絞り込んでいくことが大切です。職種ごとの業務内容と必要スキルを押さえ、自分の力を生かせる仕事をぜひ探してみてください。

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